永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 4  始まりの戦

第4節 『ラセリオへ』



 






「……あの、またコレですか?」

アウルから木刀を受け取りながら、アオは涙目で答える。


「……仕方が無いだろう、現状での訓練方法はコレしかない」

アオが涙目になるのも解る。

アウルは……鎧の姉ちゃんと同じく、子供相手でも容赦が無い。


隙を見つけたら見つけたで、顔面だろうが容赦なく攻撃するのだ。

気絶したら気絶したで、水をぶっかける等で強制的に起こして訓練を再開する。


正に鬼、鬼教官――

だが、アオの限界を悟ったら即座に訓練を中止し、休憩をとるという事から……限度を知らないという事は無さそうだ。

起きた瞬間に即攻撃を仕掛けるのはどうかと思うけど――


「構えろ……」

「…………はい」

諦めたように、木刀を構えるアオ――



 訓練が始まろうとしていた時……一人の兵士が焦った表情で訓練所に入ってきた。



「アウル様!! 大変です!!」

「どうした……制圧部隊が全滅でもしたのか?」

「いえ、違います……バーンライト王国は、ラセリオ−サモドア間の道を開放し……敵主力スピリット12名がラセリオに進軍中と伝令が!」

「――12だと!? バーンライト王国のスピリットの全スピリットは出払ったのでは無かったのか!?」

「それが情報部の報告よりも、かなり多く戦力を増強していたらしく……」


アウルの顔色が蒼白になっていく……


「不味いぞ、イースペリアから購入した食糧や物資を輸送してる部隊がラセリオを通過する筈だ……交戦予定時刻は!?」

「えっと……伝令が到着した時刻から計算すると、約30分後ですから……ちょうど輸送隊がラセリオに到着する時間です!」

「っち、バーンライト王国の情報部は優秀だな……」

「制圧隊を呼び戻しましょうか?」

「今からでは足の速い伝令兵でも間に合わんさ……伝令が届く頃にはラセリオも、最悪……物資も取られてると想定したほうがいい」


「伝令! 主力の半数をラキオスに呼び戻させろ! 敵がラキオスに来る前に必ず到着するようにな!!」

「――っは!」

兵士は急いで訓練所を飛び出し、アウルはアオに振り返る。


「すまんな、今日の訓練は中止……お前は自主訓練でもしていろ」

そう言って、アウルはアオに背中を向けて歩き出す。


「アウル様、私……ラセリオに――」

「――アオ・ブルースピリット、言いたい事は解るがやめておけ」

アオの言葉を遮るように言葉を紡ぐ……


「……ラセリオに向っているのは12名のベテランと思われるスピリット……」

「ラセリオには数名の防衛スピリットが居るが、訓練は自主訓練しかやらせていない未熟者ばかりだ」

「――っ!」

「お前一人増えたところでどうにもならん……」

「……でも、でも!」

「……敵の狙いは、十中八九の確立で輸送部隊だ……」

「輸送部隊には3名のスピリットが配備されているが……そのスピリットも自主訓練のみの未熟な奴ばかりだ」

「セリア・ブルースピリットとナナルゥ・レッドスピリットはラセリオで殿を勤めるように命令されているだろう」

「そんな……」


アオは悔しそうに俯いている……


そんなアオを背中越しに見ていたアウルは、天井を見上げて……言葉を紡ぐ――


「アオ・ブルースピリット……お前はその二人に伝令を――」

「……俺の名前を使って、ラセリオを破棄し輸送部隊の護衛に当たれとな!!」


「――え?」

「どうせラセリオが落とされるのは早かれ遅かれ確実だ……なら、戦力となるスピリットをラキオスに戻したほうが良い」

「ただし……間に合わなかったり二人が動けないまでに消耗していたら、二人を見捨ててお前だけでも任務を続行しろ!」

「――それが、最大限の譲歩だ」


――だが、アオは……震えながら首を横に振る。


「…………いや、です……」

「……いま、何と言った?」

威圧感と怒りしか感じさせない声……だが、その威圧を振り払ってアオは顔を上げて言葉を紡ぐ――


「――イヤです!! セリアお姉ちゃんやナナルゥお姉ちゃん達を見捨てるなんて……出来ません!!」

アオとアウルの視線がぶつかる。

「……………………」

「……………………」

アオは、身体を震わせながら……懸命にアウルを睨みつけている――







先に折れたのは……アウルの方だった。







「そこまで言うのなら勝手にしろ……」

「アウル様…………」

アウルは、怒りを隠せない表情でアオを睨みつける。


「ただし、絶対にナナルゥ・レッドスピリットとセリア・ブルースピリットを生かして生還しろ、いいな!」

「――あ、はい!!」

「内、一人でも殺されたなんて報告があったら貴様を処刑するように国王に申請してやるからな……覚悟しろ!」

「はい!!」

アウルは訓練所の出口に向って歩き出し…………







「………死ぬなよ……」







そんな言葉を残して、出て行った。



「……はい……行って来ます」

そうして、俺たちはラセリオに続く道へと駆け出した。















「……はぁ、はぁ……」

『……アオ、森にもバーンライトのスピリットが潜んでいるかもしれないから注意しろよ』

「……っ、うん……」


100mを5秒で駆けているアオ……

神剣の加護……つまり、俺がアオに力を与えているという事……

もしくは、アオが俺の力を強制的に引き出しているか……


――どっちでもいい……

俺が力になっているのなら、それは喜ばしいことだ。


一時間ぐらい経った時、ある反応を見つけた……

これは――







『……輸送部隊らしき反応見っけ♪』

「――本当!?」

『……でも、襲撃されてるっぽい――急げ!!』

「うん!」

 現場に近づくほど、詳細が確認できた。


敵と思われる数は3つ……黒、黒、赤――

護衛と思われるラキオスのスピリットは2人、緑と青だ……


輸送隊の馬車は無残に横転している。

馬は首から上が無くなっており……輸送をしていた兵士も、馬車から投げ出されたように地面に転がっている。

―――たぶん、鎧についた土の汚れからして……走ってる最中に馬を殺され、馬車から投げ出されたのだろう。


だが、気を失っているだけ……生きている事は間違いない――

『アオ、急げ!!』

「うん……ぁ、見えた!!」







「…………これで終わり……」

赤スピリットは神剣を地面に突き刺して、両手を馬車の方角へ向けている。


「やらせるか!! アイス・バニ――!?」

「――甘い!!」

敵の黒のスピリットがラキオスの青スピリットに向って居合を放ち、マナの霧に変えた。



『アオ!!』

「――うん!」

俺を抜き、全力疾走のまま詠唱中の赤スピリットに近づく――


「……!? おい、後ろ――」

「インフェ――え?」

こちらに振り返る前に俺の切っ先が脳天に突き刺さり、赤スピリットは間も経たずにマナの霧に消えた。


「――っく、貴様ぁ!!」

黒く染まったハイロゥを展開させ、信じられない速度でアオの懐に飛び込む黒いスピリット――


「――ぁ!」

「――間に合って……ウィンド・ウィスパー!!」

風の障壁がアオを中心に展開される。

――だが、ソレだけでは止められないと……なぜか、確信できた。


『右手に『氣』を集中させろ! 速く!!』

「――っ、ヤァ!!」

アオが俺の指示通りに右手に氣を収束させた瞬間――

――相手のスピリット神剣の刃が抜かれたと同時に、磁石で反発されたかのように黒スピリットは吹っ飛んだ。



「なにぃ!? っく――!」

ウイング・ハイロゥを羽ばたかせ、崩した姿勢を安定させるスピリット――

そのスピリットは着地した瞬間、投擲された槍に心臓を貫かれてマナの霧へと変化した。


「……え? え??」

『アオ、混乱してないで今の技を覚えておけ――さっきのが『遠当て』だ……』


よくあるだろう……アニメとかのラスボス戦とかで、ラスボスを中心に意味不明の風が放出されて主人公グループが吹っ飛ぶ光景が――


あれも、『遠当て』の一種である。

『遠当て』の原理は、自分と相手の気を磁石のように反発させる事で相手を吹っ飛ばす事だ。


相手が氣を感じる事が出来れば、その威力は大きくなる。

実際に初心者でも少し修練を積んで、コツさえ掴んでしまえば誰でもできるのだ。


アオの場合は習って2日3日しか経っていないが……いろんな意味で初心者とは言えない。



「……とおあて?」

『初見、もしくは牽制の場合に効果がある……2回目からは相手も注意してくるからあまり頼るなよ』

「……どういう意味?」

『見切られやすいんだよ、ただ吹っ飛ばすだけの技だから――あ!?』


緑スピリットの姉ちゃんがアオの目の前に移動しており、アオに切り込んできた黒スピリットの攻撃を槍で弾いた。


「ぼけっとしないで、まだ敵はまだ居るのよ!!」

「え、あ、はい!」

……とは言っても、残りは一人――



――さて、あいつのマナはどんな味なのか?――



『五月蝿い……』

「――え?」

『……なんでもない……』

「……雫……………うん、わかった――」


戦闘をするたび、はっきりと聞こえるようになった声――

――認めたくないけど……今、はっきりと解った。







――あれは、俺だ。







心の何処かで……スピリットを食べるのを楽しみにしている俺が居る。

――正直言って、思考が狂い始めてきたと断定できる。

今はまだいい……狂ってる思考と正常な思考を識別できるから……


でも、もし……狂った思考も、正常な思考も識別できなくなったら――


――それが怖くてたまらない。







「……これでも喰らえ! カオス・インパクト!!」

黒の魔方陣が展開され、闇のマナがアオの足元に集まる――


『アオ!』
「危ない!!」
「――え?」


名も知らない誰かがアオを突き飛ばす――

―― 地面から現れた闇の津波は、緑の姉ちゃんを飲み込んだ。


「あ……ぁ……」

『――! 上だ!!』
「っ!?」

「――消えろぉ!!」

上空から切り込んできたスピリットの太刀を受け止める。


「く……!!」

「ぅぅ……く……」

……ガチガチと力比べになっている――


だが、今の俺達では……押し返す事では不可能だ。


ガクッ……っと、地面に膝をつくアオ――

黒いスピリットは、邪悪にも似た笑みで更に力を込める――



――瞬間、アオの頬を掠る様に背後から槍が飛んできて……目の前のスピリットの眉間を貫いた。



「あなたが……消えなさい……」

絶命し、マナの霧に還る黒スピリット……

槍を投げた緑スピリットの姉ちゃんもまた……哀しそうな顔でマナの霧に還った……







「……あ、ぁ……」

アオを中心にマナの霧が漂っている。

『……アオ』

「……私の、所為だよね……あのお姉ちゃんが死んだの……私の――」

『………………』

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

アオは、その場にへたり込み……両手で顔を覆いながら謝っている……


ボロボロと涙を零しながら……ただひたすらに謝っていた。



だけど、今はそれどころじゃない……早くラセリオに向わなければ、アオは更に泣く事になる――



『いつまでウジウジ泣いてるつもりだ?』

「だって……だって――」

『確かにお前の所為かもな……けどさ、お前言ったよな?』

『悪い事をして、それを気がついて、ごめんなさいって思えたら、それで良いんだって――確かに言ったよな?』

「……うん」

『あの姉ちゃんには酷い言い方だけどさ、次から気をつければ良いだろ……誰も死なないように――』

「……うん……」

アオは、涙を拭って立ち上がる――


『……この戦いが終わったら、あの姉ちゃんの墓を作ってあげような……』

「うん……」

『行こう、アオ……セリアの姉ちゃんやナナルゥの姉ちゃんの墓を立てることになったら洒落になんねえからな』

「……解ってる」







アオは、横転した馬車を背に走り出した。








あとがき



 今思えば、永遠のアセリア中で一番の山場はラセリオ防衛戦では無いかと思う私。
リモドアを占領した時に現れる増援が1ターンに1マスづつ進めばセリアかナナルゥのどっちかが死亡していると思う今日この頃……

 補足として、緑の姉ちゃんとは名無しスピリット……いわゆる雑魚スピです。
なぜバーンライトスピリットと交戦していたかというと、森に潜んでいた隠密行動の部隊と遭遇したから♪

輸送の荷物ほったらかしですが、運ちゃんの兵士が何とかしてくれる筈です……たぶん……



 次回はラセリオ防衛線。

影に潜んでいた『何か』が動き出す――



NEW
DEFENCE SKILL
技名:遠当てT
ターゲット:変動【敵】 属性:無
対HP効果:− 最大回数:2 行動回数:1
マインドバランス:0〜100 マインド変動:+5 効果:ノーダメージ
気功術の一種……敵を吹き飛ばす事により敵の攻撃を防げる。
しかし、ただ吹き飛ばす『だけ』なので、当然2回目からは相手も予測する……よって、2回目からの効果は望めない。

LVが上がる事により、最大回数が増加する。


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