永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 5  反発するエゴ

第12節 『クルゥというスピリット』








「はぁ、はぁ…………見つ、けた……」

広大な砂漠を、神剣の加護無しで走り続ける事……約二時間……

……砂に足をとられ、コケた回数も数知れず……

道標無しに、ひたすらに真っ直ぐ走り続けた結果 ――

―― アオはクルゥの姉ちゃんを発見した。



それは、奇跡に近い確率だったと思う。



南に南下した俺達は、敵に出会う事無く……ダーツィ大公国の首都・キロノキロ付近で、大地に残された戦闘の傷跡を見つけた。

その傷跡は、点々と……更に南に続くダスカトロン大砂漠の方へと続いている。

ソレを追うように砂漠に入って、10分もしないうちに方向感覚を失った。

どこまで走っても同じ景色……死に絶えた大地……灼熱の太陽……

『冷酷』は、アオに力を貸す事無く、傍観していた。


汗だくになりながら、ふらつきながら……それでも走り続けたアオ……

結果的には、クルゥの姉ちゃんに追いついた ――

―― でも、待っていたのは……明らかに、救いの無い現実だった。



「隊長……此処は私達が――」

クルゥの姉ちゃんの他に、見たことの無い服を纏ったスピリットが5人……アオの存在に気づいて、武器を構える。


「いいの……彼女は私が殺します……だから、ソレを早くコウイン様の元へ――」

「――解りました」

そう言って、クルゥの側に居たスピリット共は此処を離れていく……

広大な砂漠の中……アオとクルゥだけが残された。


「クルゥお姉ちゃん……嘘、だよね? 何かの、間違い……だよね?」

「アオ……さっきのスピリットを見て、今の会話を聞いても……本当に解らないの?」

「っ……それ、は……」

アオだって解ってる……十分すぎるほど解ってる。

ヤツは敵だと……



――でも、それを認めてしまったら――



「アオ、私の本当の名前……教えてあげようか?」

「クォーリン・グリーンスピリット……」

「マロリガン共和国・稲妻部隊の元隊長で、今は副隊長を勤めてるわ――」

クォーリン……はて、何処かで……聞いたことのあるような?



思い出せ、何処かで聞いた名だ…………稲妻部隊、マロリガン……そして、クォーリンという響き――



『……っ、まさか――』

マロリガンの稲妻クォーリン。

大陸全土に認められた……マロリガンの最強を司るスピリット――

そのスピリットが、無慈悲にも槍を構える。



「構えなさい、アオ……」

「ぁ……やだ……なんで、お姉ちゃんと……私が……戦わなきゃ――」

「私はアナタの敵……そして、アナタは私の敵……それ以上の理由は必要無い筈よ?」

「ちが……わた、私は戦わない……! クルゥお姉ちゃんと戦うなんて……でき、ない……」

「……5秒待ちます……それでも戦わないというなら、マナの霧に還りなさい――」

「……ぁ、ぅ……っ……」

放たれる殺気……

その殺気に、構える事無く……アオは一歩……また一歩と後退していく。


「―― 5 ――」

―― どうするんだ、アオ? ――

「し、雫??」


「―― 4 ――」

―― オマエが自分の意思で剣を執り、自分の意思で殺しあうのなら力を貸そう ――

―― けど、戦いを放棄して命を捨てるっていうなら、後は俺がやる……そして、オレはオマエを軽蔑する ――


「―― 3 ――」

―― オマエを壊そうとしてる奴の台詞じゃないって事は解ってるけどな……オマエの命は、様々な奴に生かされてきた――

―― オマエを守る為に傷ついた者達も居れば、命をも犠牲にした者達が居る ――

―― そのお陰で存在している命を自ら破棄するという事はさ、そいつらの行為を無駄にするだけじゃなく、そいつらの想いまで裏切るって事なんだ ――


「―― 2 ――」

―― 他人の命を犠牲にした時点で、自分から破棄してはいけない…… ――

―― ……更なる犠牲を積み重ねようとも……間違ってるって解ってても…… ――

―― 己から破棄するなんて事、死んでも許されない事だ ――


ソイツは、まるで、自分に言い聞かせるように……そう、アオに言い放つ。


「―― 1 ――」

「……それでも……無理、だよ……私、戦えない……」

―― そうかい……じゃ、後はオレが殺ってやるよ ――

「――、っ!? ぁ……やぁ……めぇ……」


「……さようなら、アオ……」

――相手は既に駆け出しており、槍を振り上げていた。

振り下ろされる前に神剣を抜き、振り下ろされた槍を受け止める。



「―― 待たせたな、戦闘開始だ」
「―― !?」

競合い状態のまま、真っ黒なハイロゥが出現し……ベキベキと凍っていく――

クルゥ……いや、クォーリンは、ソレを見て一旦距離を置く為に後退する。



―― やがて、アオの身体は悪魔のようなフルアーマーに包まれた。



「一つ聞かせなさい……アオの自我は無事なんでしょうね?」

「――さあ? アンタが裏切った所為で壊れたかもな?」

「裏切られただけで壊れるような……ヤワな娘じゃないわ……」

「どうかな? ハッキリ言って、コイツの精神はもうボロボロだぜ? ここに来る前に、ヘリオンを殺して、他の奴等とも殺しあってたからな」

「それに加えて、今度はオマエの裏切り……そして、俺達は今、殺しあうんだ……今だって、無様な声を上げて、泣き叫んでる」

クォーリンの表情が、驚きに変わる。


「……ヘリオンを……殺した、ですって??」

「ああ、オレが乗っ取って、バッサリと……そん時のコイツの悲鳴、アンタにも聞かせたかったけどなぁ……」

「………………」

ギリッ……っと、クォーリンが強く歯を噛む音が聞こえた。


「へぇ……アンタ、敵に同情するタイプなんだ……」

「敵とはいえ、一緒に背を預けあって戦った仲ですから」

槍を構えなおすクォーリン……


「アナタを砕いてアオを開放する……それが、アオ達を裏切った……せめてもの償いと……」

「……死んでしまったヘリオンへの、せめてもの手向け――」

そのクォーリンの姿を見た『冷酷』は……鼻で笑っていた。

「なんで、この世界の妖精は、そんなに甘いのかねえ……いや、神剣に飲み込まれてない奴だけかな……甘いのは……」

クォーリンと同じように、俺を構え直す『冷酷』……


「オレだけを砕くって言ってたけど……それ以前に、オレに勝てるのか?」

「当然よ……『私と砂漠で戦う』という意味を解ってないでしょう?」

「お前こそ……『神剣の力を最大限に引き出した妖精(オレ)』と戦うって意味……解って言ってるのか?」


……大気が凍る。

二人は神剣を手に睨みう事、数秒……クォーリンが先に動いた。


ヤツの姿が霞んだ瞬間、高速の突きが両膝めがけて放たれる――

「――っ、ぇ!?」

――しかし、氷の鎧に阻まれ……その突きは、呆気なく不発に終わる。

その動揺した隙を見逃さずに、横一文字に俺を一閃する『冷酷』……それを放たれる寸前で気づいたクォーリンは、一瞬で離脱する。


「オマエの攻撃じゃ、この鎧は壊せない……倒したいんだったら首を狙うんだな、首を……」

「……っ……」

「アオだけは生かしてオレだけを砕く?? 馬鹿な事言うなよ、そんなの不可能だって、一番良く解ってるのはオマエじゃないか?」

「強がりはそこまでよ……確かに、その鎧は頑丈だけど、壊せない程じゃない……」

「強がりを言ってるのはどっちだろうねえ? 無駄だと思うけど……まあ、やりたいなら好きにしたらいい」

「ええ、そうさせてもらいます……」

再びクォーリンの姿が霞み、刃が弾かれる音が砂漠に木霊する。


クォーリンの最大の武器は、稲妻のような俊敏性にある。


黒スピリットに勝るような瞬発力を誇っているのも凄いが――

――何より凄いのが、その速度を保ったままの方向転換を可能とする脚力。


まさに稲妻の様な……いや、稲妻の動きそのものと言ってもいい。

霞む様な速度でジグザグに迫って、一撃離脱を主とする攻撃……

ハッキリ言おう、コイツの攻撃を迎撃するなんて無茶だ。

加えて、此処は足場が確かじゃない砂漠なのに……足をとられる事も無く、平然と駆け回っている。



―― 『私と砂漠で戦う』という意味を解ってないでしょう? ――



合点がいった……つまりはそういう事だったのか……

砂漠というフィールドでも、驚異的速度を……しかも、稲妻の様な変則的な動きを自在に実現できるからこそ、最強と歌われているのだ。

けど、いくらクォーリンが最強だと謳われていても……この勝負は『冷酷』の勝利で終わることは明らかだ。

クォーリンがアオの首を飛ばそうと決意しない限り……『冷酷』の勝利は揺るがない。



「―― そこだ!!」
「づぁ!?」

クォーリンの一撃離脱の攻防が、そろそろ2桁に届く時……『冷酷』の攻撃が初めて当たった。

タイミングを計って、横一文字に振るわれた俺は……驚異的速度で飛び込んできたクォーリンの片膝を深く抉ったのだ。

慣性の法則に習って、倒れこむように地面を滑っていくクォーリン……


「あんだけ仕掛けられたら、目が慣れるってな!!」

クォーリンが起き上がる前に、攻撃を仕掛ける『冷酷』――

―― 『冷酷』が俺を振り上げると同時に、クォーリンの周りに緑の障壁が展開される。

ガインッ!! っと、そんな音と共に弾かれた。



「っち、そうだった……そういえばアンタ、あの『求め』の契約者の馬鹿力を真正面から受け止めたんだよな……」

無論、『冷酷』には……『求め』のような馬鹿力は引き出せない。

俺の時と比べると、格段に力は上がっているんだけど……それでも『求め』には及ばない。

つまり、クォーリンは……障壁を展開させている限り、負けない。

きっと、障壁の中で……どうやって『冷酷』だけを砕くか……作戦を練っているんだろう。



「――じゃあさ、これならどうかな?」

俺の刀身に光が宿る――

警戒を強めたクォーリンは、障壁に更なる力を送り、障壁の防御力を上げている。

『冷酷』は、まるで……居合の太刀でも放つように俺を腰に当て――

「――ぬんっ!」

―― 居合の太刀を模範するように……俺を解き放った。



障壁に接触した途端、カキィィィィィィィィィィィィン……っと、そんな軽い音が響き渡たる。



どういうつもりか……今の攻撃は、障壁を軽く叩いたようなモノだ。

ふざけいてるとしか思えない攻撃……けど、その疑問は直に驚きへと変わった。

――薄れていく音量と連動するように障壁も薄れて……音が聞こえなくなると同時に消滅した。


『「――、は?」』


その光景を見て、呆然となったクォーリンと俺 ――

―― 間髪いれず、上段から滑り落ちる俺。


「!? しまっ――」

慌てて飛び退くが間に合わない。

「―― っ゛!?」

『冷酷』は、クォーリンの右肩口から腰まで、文句無く一閃……即死寸前の戦闘不能になる致命傷を与えた。


「―― は、ぐっ……」

崩れ落ちる身体……槍を杖にして、片膝で……此方を睨んでいる。

「……な、なに……を?」

「なにって……障壁に俺の『氣』を浸透させてやっただけだけど……」

「……シン、トウ??」

「障壁ってのはな、実は半透膜なんだよね……」

「解る? 半透膜って?? 一部の成分は通すけど、他の成分は通さないモノの事……」

解らないと……クォーリンの表情が物語っている。

いや、その話とさっきの居合みたいな技の関係が解らないと……そんな顔だ。


「だからさ、オレの『氣』……っていうかこの身体じゃ『マナ』だけどさ……それを混じりこませて、障壁の成分を拡散させてやっただけ……」

「いま考え付いた技なんだけど……そうだな、名づけるなら『錬気の太刀』ってところか……」

「……いま、考え付いた……ですって??」

「そういう事……弱い奴には弱い奴なりの発想というモノがあるのですよ……」

「ま、己の力を過信しすぎた事を呪うんだな、クォーリン……その傲慢さが、オマエの敗因だ……」



そう言って、『冷酷』は……俺を振り上げる。



「アオ、この光景を焼き付けとけよ……クルゥと呼ばれた姉ちゃんの最後だ――」

『ちょ、止め――』

……ろ、と……言おうとした瞬間だった ――











「――どわあぁぁぁあああぁぁあああ!?」

―― ブゥォン!! っと、何かデッカイ物が側面から、アオの顔スレスレを回転しながら飛んでいった。


『冷酷』の反応が……あとコンマ一秒でも遅かったら、間違いなくアオの脳みそが吹っ飛んでいた事だろう。

尻餅を付ながら、『冷酷』はその物体を目で追う……

ブンブンと、回転しながら……まるでブーメランのような軌道で180度方向を転換して……放物線を描くように……ソレを投げた持ち主の元へと戻って行った。







「大丈夫か、クォーリン……間一髪って所だったな……」

「……こ……コウ、イン……様?」

『……コウイン!?』

また、何処かで聞いたことのある名前……


まあ、外套の中に高嶺の兄ちゃんと同じ浅見ヶ丘の制服を着てる時点で、誰かは予想できるのだけど……


『碧 光陰』……だったか?

高嶺の兄ちゃんの親友、兼クラスメート……

んで、自他共に認めるロリコン野郎とか……


「遅い遅いって思って、隊長自ら迎えに来てやったんだが……派手にやられたな……」

「すみません……」

「謝ることじゃない……ま、長話は……そのこお嬢ちゃんを片付けてからだな……」

ソイツは、殺気を放つことも無く……まるで友人同士が近づく感じで近づいてくる。


「つーか、神剣を投げるなんて……なんて使い方しやがる!?」

「へえ、ハイロゥが真っ黒な癖に元気が良いなぁ……正直、自我が残ってるなんて驚いた……」

関心した顔をするソイツ……けど、その表情も直に変わった。


「……いや、違うか……クォーリンを倒せるのは、『ラキオスの蒼い牙』ぐらいだし……」

「……となると、オマエがアオちゃんか……いや、正確には『雫』かな??」

「なんだ、結構有名なんだ……オレ……」

「ああ、有名だぜ……第4位の神剣で、しかも青スピリットなのに形状は『日本刀』だ……」

「いまは、違う所を見ると……変形機能も備えてると見た……」

「そんなスピリットは、今までに存在しなかったって大将も言ってたし……神剣魔法も特殊だとか?」

「まあ、否定はしない……」

そいつは、5mまで近づいたところで……神剣に手をかける。


「さて、お嬢ちゃん……俺達の目的は、ラキオスの技術がどこまで進んでいるかの調査だった」

「作戦は成功、これ以上の争いは望まない……という訳だから、引いてくれないか?」

「――断る、俺もアンタとは戦う気は無いけど……そのオンナは別だ」

「ソイツはアオのお気に入りみたいでな……裏切られた癖にまだ信じてやがる……」

「オレの目的達成の為には、その女の消滅が必要不可欠なんだわ……だから、手を出してくれるな?」

――交渉決裂だと言わんばかりに、巨大なダブルセイバーを抜く碧の兄ちゃん。


「クォーリン、正直に答えろ……オマエが負けた理由は……このクソ野郎だけを殺す為か?」

「…………はい…………」

嬉しそうな笑みを浮かべながら、ソイツの足元に魔方陣が浮かぶ――


「了解した……オレも、あの神剣の意思だけを殺せるか、やってみるさ……」

「……でも、コウインさま……それは……」

「なに、このクソ野郎だけを殺して、アオちゃんの精神だけを残せたら、今日子を救えるかもしれないからな……その為の予行練習だ」

「ずいぶんと嫌われたもんだな……」

オレを鞘に収め……二刀の剣が魔方陣から出現する。


「なに、コレでも出会えた事に感謝してるんだぜ……お前だけを殺せれば、今日子を助けれる……そして、悠人と戦う理由なんて無くなるからな……」

「なんだ……オマエの彼女、神剣に飲まれたのか?」

「まあな……そういう訳で、本気で行かせて貰う」

膨大なオーラフォトンが、碧の兄ちゃんの神剣に集う――


「――なんじゃそりゃあ!?」


『冷酷』が驚いてる……そりゃそうだ……オレだって驚いてる。

だって、高嶺の兄ちゃんが格下にさえ見えるような力が宿ってるんだもん……アレ……

「――らぁ!!」

「――!?」

鈍重な突きを、間一髪で避ける『冷酷』……けど、剣圧だけで鎧が剥がれた。


「……ば、バケモノめ……」

次々に繰り出される必殺に近いの攻撃を、必死に避けている『冷酷』……

『時』を操る力を持っている『冷酷』だが……それを持ってしても敵わない……っていうか、発動しないのだ。



だって、『時神の力』が反応するのは……明らかに殺されると思った時だけ……



でも、ここで……神剣の常識が仇になった。

―― 神剣の意志だけを殺すなんて、絶対不可能だって事。

出来たとしても、完全に殺すことは無理……せいぜい衰弱させるだけ……


それを『冷酷』が一番知ってるから……『攻撃を受けようが死なない』と解っているから『時神の力』は発動しない。

発動するのは、神剣を砕く一撃が……神剣に向かってきた時だけだろうな……


加えて、碧の兄ちゃんは、『冷酷』だけを殺すと宣言している……まあ、先に述べたとおり『殺せない』のだが……


重要なのは、『アオが殺されるような被害なんて無い』という事を『冷酷自身』が自覚しちゃって、どんな必殺に近い攻撃を受けようが『時神の力』は作用しない。

まさしく、ざまみろ……なのだ。


なにかの間違いで、俺の意思が殺されてしまっても、それはそれでいい……

どんなに辛いこと起ころうとも、アオを裏切ってまで向こうには帰らないって決めた……あの時から、俺の覚悟は決まっている。


もはや、『冷酷』に勝ち目は無いし、逃げ場も無い……

いつの間にか、アオの全身は満身創痍で、死には至らないが……そろそろ動けなくなる程の傷を受けいた。

あと、もう一撃で動けなくなる……そう思った時――







――異変は起こった。











「な、なんだぁ!?」

驚きは、碧の兄ちゃんの声……

大気のマナが……まるで、ラキオス全土に匹敵する潤ったマナが……突如出現し、この砂漠一帯を覆っている。

そのマナは、まるで意思があるかのように……オレの中に雪崩れ込んできた。


『――ギィ、がぁ……』

マナを取り込んでも、何も感じなかった筈なのに……このマナだけは違った。

――いや、そもそも、量が多すぎるんだ。

器の限界を突破してるのに……圧縮してでも器の中に全て収めようと……そんな意思を持ってるように、マナが雪崩れ込んでくる。


「ハ、ハヒ、ギっッ!?」

きっと、表面に居る『冷酷』は……オレが感じている数十倍の苦しみを味わっている。

そんな強烈な激痛を味わっているというのに……ソイツの顔は喜びに満ちていた。


「……これ、ダケノ……マナ、アれば……カエ、れる……?」

歓喜に満ちた、ソイツは……痛みに耐えながら、両腕を精一杯伸ばして……詠唱と思える言葉を紡ぐ――

でも、詠唱を唱えようとした瞬間……ザグン――っと、アオの腹に巨大な神剣が突き刺さった。


「――ぁ、?」

「悪いな、アオちゃん……手段を選んでる場合じゃ無くなった……」

流れていく……『冷酷』を構成するマナとアオを構成するマナが……流れていく――

そして、『冷酷』の想いが……流れてくる……



―― 止めろ……これ以上マナを失ったら……救えなくなる ――

「ぁ……ぅ、ぁ……」



―― ただ……あの時に戻りたかっただけなのに…… ――



―― ヤツの理不尽な行動で、無念を背負って死んだアイツを救うために頑張ってきたのに ――



中に入り込んできたマナは……いつの間にか四散していた。



アオの表情は……絶望へと叩き落された表情を彩っている。







―― やっと、やっとアノ時に戻れる手段を見つけたのに ――



―― また……また……永遠ともいえる希望の無い輪廻の日々が続くのか? ――







「……っち……」

巨大な神剣が引き抜かれる――

アオの身体は、自らの血溜まりに倒れこむ。



「……………………ぅ、ぁ……れ?」

気づけば、俺の五感が復元していた。

腹部からは、焼けるような痛み……

砂の感触……大地の枯れ果てた匂い……

『冷酷』はどうなったのか、まだ把握できないけど……でも、支配権は、間違いなく俺に移った。


「……手ごたえはあったと、思うんだが……」

ええ、有りましたとも……その証拠に、俺がアオの身体を操っている。


「……いや、お見事……アイツは……もう、戦意喪失中……だ……」

「君が……アオちゃん?」

「さあ、な……それよりも……碧の、兄ちゃん……」

それよりも、伝えなければいけない事がある……

あの正体不明の膨大なマナは、一帯何処に消えたのか……決まっている、枯れた大地へと吸い込まれたのだ。







此処で問題……あれだけ膨大なマナが、一気に枯れた大地へと染みこめば……一体、何が起こるでしょうか??







「とりあえず……ニゲロ……」

大地の異変に気づいた碧の兄ちゃんが、即行でクォーリンに指示を飛ばす。


「クォーリン……どの位まで回復した?」

「コウイン様が戦ってる時、自分に癒しの魔法を掛けていましたが……それでも五分です」

「十分だ! 急いで障壁を展開しろ! 早く!!」

一箇所に固まって、3人分は守れる障壁を展開する碧の兄ちゃんとクォーリン――





そして、地面から巻き起こる烈風……



桁が違う大乱の渦……







障壁を張ったソイツ等の抵抗を嘲笑うように……俺達は天高く、吹き飛ばされた。








あとがき



 クルゥさんの正体はクォーリンでした♪
彼女は初めて出てきた時に気づいてた人は何人いるのやら……

 ソレはともかく、光陰登場♪
因果を投げたアレは、スピたんに出てきたスキルの一つ『四カ条・転剣』です。
あの時、嵐が起こってなかったら、光陰に  拉致監禁  保護れていた事は確実でしょうな♪

 次回、5章最終節……長かった……このダーク&シリアスから脱出できると思うと涙が止まりませんとも……えぇ……




NEW ATTACK SKILL
技名:錬気の太刀
ターゲット:敵【防御】 属性:無
対HP効果:500 最大回数:8 行動回数:2
マインドバランス:0〜100 マインド変動:0 効果:100%クリティカル
己の『氣』を『浸透』させて、障壁を消し去るスキル。
障壁がどれだけ頑丈であろうとも、構成しているマナが崩されれば、崩壊するのは必然。

結果、防御を無視したダメージを与えることができる。











<今話で出てきた用語>






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