永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 7  胡蝶の夢

第8節 『決意』








「……ふう」

雑巾を片手に部屋を見渡す。


2年程度の付き合いで、いつも散らかっている俺の部屋……

……けど、今はもう……その面影すら感じさせない程、綺麗サッパリに何も無くなっていた。



入居後すぐにリサイクルショップで発掘したオンボロのTV ――

その年の夏に、清水の舞台から飛び降りる勢いで買った全自動洗濯機 ――

そして、最近……といっても、半年近く経っているが、それでも新品を思わせる小さくて安い冷蔵庫 ――



―― でも、今は……本当に、何も無い……全部廃品回収に出したからな。



そんな部屋を見渡して、自分の中に芽生えてきた感覚に少し戸惑う。

この時点で、この世界を離れるという実感がリアルに湧いてきから……



この世界で過ごした22年間……

つまらない日々でもあれば、怠惰な日々でもあり……でもそれは、有り得ないくらい平和な日々であった。



戦争と関わりの無い日常が、どんなに素晴らしい日常なのか……

日本が終戦後、二度と戦争をしないという宣言が……どれほど有りがたい言葉なのか……

……今の俺なら……泣きたいぐらいに、その意味が解る。



離れたくない……この世界で、平和な日常を甘受し続けたい……肉体的に痛い思いはしたくない……あんな世界に戻りたい筈は無い。

戻ったら最後……戦場に出て、いつ殺し、いつ殺されるのか解らぬ恐怖に苦しみ続ける日々が待っている。



……そんな事は百も承知で戻ると決めたというのに……震えが止まってくれない。



頭に浮かぶのは、『失望』の影……相打ち覚悟のカウンターで、やっと倒せた化け物……

考えれば考える程怖くなるのだ。


神剣の位は1〜10まである。

9位と8位とか、6位と5位とかの1位の差は……決して近いモノではなく、かなりの壁があるのだ。

だから、第9位の剣が作り出した影は……きっと他のスピリットなら難なく倒せるような相手なんだろう。


そんな化け物を軽く殺すような化け物集団との戦争に参加しなければならない……


RPGで例えると、ラストダンジョンに挑むメンバーの中にLV1で、しかも脇役の雑魚キャラが混じっているようなものだ。

「……はぁ」

命が幾つあっても足りない……むしろ逆に足を引っ張る気がする。


「いや、前向きに考えろ……そもそも、俺が指揮官だったら――」

―― そんな奴は、そもそも使わない……敵の攻撃を受けない位置に置いて、後はひたすら放置。

だから大丈夫……俺がアッチに行っても、戦争に参加するような事にはならない……筈だ。


そう考えなければ、とてもじゃないが……戻るための準備をしようという気にはなれなかった。







「……もう、こんな時間か……早いな……」

部屋の片付けは昼頃に終わった筈なのだが……時刻は既に20時を指していた。



何もしないで8時間も浪費していた自分に苦笑しつつ、手元に残った退魔道具一式が入ってるスポーツバッグを担いで玄関を開ける ――

―― 今までお世話になりましたと……心の中でそう呟いて……俺は部屋を後にした。











「…………」

自宅から一番近いコンビニ……ご飯の調味料や飲物を買うときに一番お世話になった店である。

もう二度と訪れる事のないコンビニで、俺は軽い夜食と飲物を購入した。



「…………」

購入した夜食と飲物を持参して、小さな公園のベンチにて……一人、夜食をとる。

この公園の木々は確か……全部が桜の木で、春になると近所同士が集まって花見をするらしい。

―― だから、失敗した……一度ぐらい、その近所の人達と混じって、この公園の桜を目に焼き付けておけば良かった。



「…………」

駅前にある映画館まで足を伸ばす。

張られている映画のポスターは、全く知らない作品ばかり……まあ、半年も経てば当然だ。

最後に一作品だけ鑑賞していきたかったが……残念、手持ちがギリギリで足りない。





駅から神社に向かう途中にある私立浅見ヶ丘学園を見上げる。

高嶺兄妹が通っていた学校でもあり、この学校の文化祭はさぞ豪華だという。

特に音楽関係に力を入れており、その関係のお偉いさん方がスカウトにも来るとか来ないとか……


もし、一度でも文化祭に立ち寄り、高嶺の兄ちゃん達と出会いを果たしていたら ――

―― 俺は狂わずに済んだんじゃないか……って、そんな邪推してしまう。


狂ったのは、俺の責任……俺の意思の弱さが原因だ。

ならば、出会いが果たされていようと同じく……きっと此処に足を運び、真逆の事を考えているだろう。


でもまあ……文化祭には出ておけばよかったと、マジで後悔してる自分が居た。



神社に至るまでの長い長い階段を踏みしめるように登っていく。

この階段には明かりというモノが存在しない……頼りに出来るのは月明かりのみだが、今は一時的に雲に隠れてしまっている。


師匠に危ないから電灯付けようよと進言しているのだが ――

『この階段は現像と虚像を朧とする為に作られたモノだから暗いままで良いんじゃ……』

―― とかなんとか、訳の解らない理由で付けようとはしないのだ。


……まあ、俺にはもう関係無いし……どうでもいい事なんだけどさ。



そう思いながら、後ろに振り返る。

辺り一面に広がる町の煌めき……いつもなら流し目で通り過ぎる風景だが、今だけは、目に焼き付ける。

この世界の風物詩を、ことごとく逃してしまったから……だから、この光景だけは忘れないように……


……そんな想いで視ていると……いつの間にか、視界が滲んでいた。


「あ〜、格好わりぃな……くそっ……」

自分の女々しさに、いい加減に腹が立ってくる。

未練を断ち切るつもりで馴染み深い場所や訪れた事の無い場所に行ったというのに……逆に未練が深まっているのにも腹が立つ。


でも、その未練が静まるのも時間の問題だろう。

―― そう、アッチの世界の大地を踏めば……そんな未練は後悔へと変わるだけなのだから。


そう、アオを助けても……この世界に戻るんじゃなかったって嘆く時があるだろう。


―― 人間、いつだって不平不満を漏らし続ける生き物なのだ。


思い通りに事が運ばない時は勿論、思い通りに事が運んでも同じ事……

ああしていれば、もっと巧く事を運べたのに……とか ――

―― なんで思考が正反対の方向へ思考するのか……とかね♪


まあ、そんな事はどうでもいい……


今考えるのは、女々しい自分にどうケリをつけるのか……なんだけど ――

―― 先も述べた通り、時間が解決してくれるだろう。



最終的に、アッチの大地をこの足で踏んだらいいだけの話なんだから。







そう結論を付けて、のったりと階段を登りきる。



……そこに、一つの人影が見えた。

暗くてよく見えないが、ツインテールが特徴的の人影といえば、該当者はヘリオンしかいない。


「”―― ヘリオン、こんな時間に外に出て何してる……っていうか、動いて大丈夫なのか――って、えっ?”」



雲に隠れていた月が顔を出し、その光が境内を照らした瞬間……全てを理解した。

まず、服が違う……ヘリオンはジャージ着てる筈なのに、コイツの服はアッチの世界の戦闘服に似た服……

次に鞘の模様が違う……明らかに『失望』じゃない……



―― 振り返る黒い少女……知らない顔……だけど、その生気の無い瞳は見覚えが有り過ぎた。



「―― っ! 黒スピリット!?」

気づいたと同時にサードガラハムの篭手が宿る。



バッグを無造作に投げながら急いで距離を取って攻撃に備えるが、ソイツは俺を見定めるような目線をしているだけで動く気配がない。

「……??」

けど、それも一時の出来事だった。



「標的……『時神 雫』と、認識……」

「―― は?」

ソイツは、今まで見たスピリットより機械っぽかった……ナナルゥの姉ちゃん以上に機械っぽい……

―― つーか、俺の名前知ってる? ……っていうか、日本語?? 日本語しゃべったぞコイツ!?


「行動、開始――」

……次の瞬間、有無も言わずに黒スピリットはハイロゥを広げて突貫してきた。


「―― なっ!?」

その翼の白さに、不意をつかれた。

だって、自我なんて無いと思わせる程の機械的な口調だったのに、ハイロゥは黒ではなく真っ白なんだから――


―― その反応の遅れは、絶望的なまでの後手……奴は、そのままの勢いで抜刀。



ゴンッ、っと……こめかみを鈍器で殴られたような強い衝撃を感じながら、頭から吹っ飛んでいく自分が居た。

頭から地面に落ち、更にツーバウンド……ゴロゴロと何十回も地面を転がって、やっと停止……

「が……ぁ……」

痛い……頭がすげえ痛いし、立ち上がろうとしても世界がグルグル廻っていて、立ち上がることさえ出来ない――

―― 更に、気持ち悪くて吐きそう……これって、脳震盪? それとも、廻りすぎて気持ち悪いだけ?


そんな事より、早く起き上がらなければ殺される……でも、起き上がっても身体は言う事を聞かず、バランスを崩して地面に倒れる。

その行為を3回……3回繰り返して、やっと頭が冷静になってくれた。


倒れたまま、黒スピリットに視線を向ける。

ソイツは、じっとコチラを観察しているだけだった。

剣を鞘に収め、機械のように……じっと見ているだけ……


……故に、追撃してくる気配は皆無……一体、なんのつもりなのか?

頭に受けた一撃だってそうだ……あれは峰打ち……じゃなきゃ、今俺が生きてる理由がつかない。


時間にして数分経っても、ソイツはただ見守ってるだけだった。

脳震盪が治りかけ、身体が言う事を聞き始めた頃……ボスッ、っと目の前に俺の退魔道具一式が入ってるバッグが飛んできた。

なんという事は無い……あのスピリットが投げて寄越したのだ。


「―― 舐めやがってッ」

急いでバッグを開けて50AEと破魔弾が装填されているマガジンを取り出し、立ち上がりながらソレを50AEに押し込む。

セーフティを外し、銃口をソイツに向けた瞬間に戦闘開始の合図となり……ソイツは、最初と同じように白いハイロゥを広げて突貫してきた。


構わず引き金を引く。

エアガンを撃っているような反動しか感じられない違和感に戸惑いを覚えてる暇など無かった。


ソイツは、重い音と共に撃ちだされた弾丸を苦も無く逆手で持った鞘で弾き、そのままその鞘で喉を目掛けて突きを繰り出してくる。

その攻撃を50AEのトリガーガードを利用して弾き、同時に渾身の右ストレートを顔面に繰り出す。


だが、不発……首を傾げた動作で外側に簡単に避けられ、奴の手は既に剣の柄が握り締められており ――

「―― 星火燎原の太刀」

そんな言葉と共に、爆撃めいた居合いの一撃が脇腹に命中した。


「あ、がぁっ――!?」

内臓をばら撒きながら、吹き飛ばされている自分がいる。

グルグルと、地面を何メートル感覚でバウンドしながら転がって……何かにブツかって静止した。


「……げふっ、ごふっ!」

口から血が吐き出されている……血溜まりがものすごい勢いで地面を染めていく――



だというのに……不思議な事に、痛みなんて全然感じない。

『失望』の影にも腹に斬撃を叩き込まれた時は、洒落にならないほど痛かったのに……全然痛みを感じない。



呼吸して落ち着こうとしても、何かに詰まる感覚があって呼吸が出来ない。

―― でも、苦しいとは……感じない。



これは、かなりヤバイ状況なんじゃ……なかろうか?



「―― 、あ」

紅色の地面は、いつの間にか黒い沼と変色していた。

その沼から黒い手が一本、また一本と現れては俺の身体を掴んで地面に引き込もうとする。


抗える訳がない……身体の感覚が完全に麻痺し、指が一本たりとも動かないのだから……


そして、飲み込まれる……片目は既に闇の地面の中に――

生きている片目も、数秒後には闇に閉ざされて ――

―― そうして、視界と知覚が黒一色に塗りつぶされた。







―― そして、流れてくる。

コロシアムみたいな場所の中心にギロチン台みたいなのが有って、首と両手を固定された少女がいる。

『求め』を握るダレカの姿が近くに有って、ソイツは『求め』を振り下ろすと、ポーンと一撃で首が刎ね飛んだ ――

―― そして、その直後に現れる……間に合わなかったダレカ……

「――、あ」



それは、薄々と感じていた不安だった。



場面が変わる。

糸の切れた人形のように、牢屋みたいな個室で倒れている少女 ――

―― その近くには、間に合わなかったダレカの姿。



言うまでも無い。

少女とはアオの事で……間に合わなかったのは、俺の事だ。



場面が変わる。

見たことも無い機械が設置されている部屋……その部屋の奥には動物を閉じ込めるような鉄格子の箱があった。

その中に、その中心には悶え苦しみ発狂したアオと……それを鉄格子の外から見ている間に合わなかった俺の姿が――

「ぁ、あぁ――」



―― 不安があった。

アオという少女は、この世には居ないんじゃないのか……っていう不安が心の中にあった。



―― 不安があった。

戻っても間に合わないんじゃないのか……と、そんな不安が心の中にあった。



何度も何度も場面が変わる。

そして、同じ少女の様々な結末が流れてくる。

壊れ果てた結末、苦しみ続ける結末、犯され続ける結末、一瞬で即死した結末……



心の中に潜んでいた不安が現実となる、嫌な予感は現実となる。



―― 見ろ、コレがオマエとアイツの結末だ ――

戻ったところで間に合わないのだと、周囲の闇が嘲笑うように宣告している。



心が、折れる。

そんな筈は無い、もう間に合わないなんて事は無い、こんな結末しか無い筈なんて……そんな筈は無い……



……けれど、もしコレが既に過ぎた後の出来事だとしたら ――

―― 俺は、一体……何の為に、ここまで抗ってきたのだろうか?



戻っても、肝心のアイツが居ない世界よりは……コッチの暖かな世界に残った方が圧倒的にいい。



そう考えた時点で、全てが終わった気がした。



いままで、必死に生にしがみついたのは……誰の為だったのか――

身体をズタボロにされながらも、戦争に巻き込まれる恐怖を必死に堪えて前に進もうとしたのは……誰の為だったのか――



そう、アイツが居るから……俺は戻る意思を保てた。

―― でも、肝心のアイツが居ないんじゃ……意味が無い。



闇は寒気を伴い、全身を包んでいく……

……でも、抗う気力なんて……もう何処にも無い。



―― きっと、抗っても……意味は無いのだから ―― 



意識さえ、闇に飲まれる……







……その、瞬間……また、ナニカが流れてきた。







「本当、嫌になっちゃうね……」


そんな、諦めの含んだ声が聞こえてきた。

その声の主は、カリカリと……とても短い鉛筆を手に、窓に広がる光景を描いていた。


その部屋の造りには覚えがある……そう、スピリットの館と呼ばれる部屋と同じ造りだ。

―― 違うのは、この部屋の至る所に景色が描かれた紙が張られていることだけ。

その紙に描かれた背景はどれも同じ……今描いてる絵も、壁に張られている数々の絵も……どれも同じ絵だった。


「足止めだけで良いって言われたけど、きっと一日も持たないよ……絶対……」

「……そんなこと、ない……大丈夫だよ……」

景色を描いている緑スピリットのすぐ隣……ベッドを椅子代わりにして座る、もう一人の少女が居た。


「神剣も持ってないアンタが言っても説得力が無いわよ……アオ……」

景色を描く手を止め、そのスピリットはアオと呼んだ少女へと向き直る。


「それより、自分の心配しなさいよ……戦闘が始まって、真っ先に死ぬのは間違い無くアンタなんだからね」

それは絶対だと、そんな確信を持って……緑スピリットの少女はアオという少女に宣告する。


「そんな事、無いもん……雫が、ちゃんと護って……」

「アンタさ、ソレばっかり口にするけど……力を失った神剣に……いえ、もう壊れてしまった神剣に期待しても意味が無いって、気づいてる?」

「それは……」

「いい加減に現実見なさいよ……明日出発したら生きて帰れないの……アンタだけじゃなく、私達もね……」

「だから……なんで、簡単に諦めちゃって ――」
「――っ、碌な訓練を施されない役立たずの集団が護り龍様になんて勝てるわけ無いでしょっ!!」

今まで、溜まりに溜まった鬱憤を吐き出すように叫ぶ少女――


「…………」
「…………」

数秒の沈黙の後、泣きそうになっているアオに気づいたのか……緑スピリットの少女は自分の行いを悔やむような表情になる。


「ごめん……ちょっと、頭冷やしてくるね……」

「………………」

そんな言葉を残して、緑の少女は去り……アオだけが残される。



「………………」

アオは……悲しそうに、悔しそうに、泣きそうな顔をして……でも、泣くのを堪えていて……そんな沈黙だけがここにあった。


そうして、どのくらいの時間が経ったのか……

アオは、なんとか落ち着きを取り戻し……自分の腰につけていた巾着袋みたいな小さな袋を外して、その袋に向かって語りかける。


「……ねえ、雫……フォールゥちゃんの夢、色んな場所の絵を描くことって……知ってるよね?」

「でね……もしも、色んな場所に行ける時が来たら、私も一緒に……色んな場所に行こうって……言ってくれたの……」

「……すごく、嬉しかった……だから私も、ここに来てからフォールゥちゃんの真似して絵を描き始めたの……知ってる?」


アオが語りかけても、何の答えも無い……

何の答えも無いまま、アオは俺の破片が詰まってるであろう袋に……ただただ語りかける。


「でも、雫が眠っちゃってから……私、すごく弱くなっちゃって……頑張っても頑張っても、どうにもならないんだ……」

「……このままじゃ、皆の足を引っ張って……私の所為で、また皆が死んでいくって……解るの……」

「だからさ……雫……」

「もし目が覚めたら……私じゃなく、フォールゥちゃんに……力を貸してあげて欲しい……」

「フォールゥちゃんだけじゃない……ペスェお姉ちゃんも……ルミアネお姉ちゃんも……」

「別の所で戦争してるネリーちゃんやシアーちゃん、セリアお姉ちゃんやヒミカお姉ちゃん……」


「……私は死んでも良いから……だから、他の皆を、助けて……下さい……」

「もう、嫌なの……仲良くしてくれた人達が、目の前で死んでいくのは……もう、嫌だから――」

「だから、雫……皆を……護って……下さい……」



―― それは、神に祈るような……そんな独り言だった。







そんな事も、あったらしい……

アイツらしい願いに苦笑する……んで、俺がアオに返せる言葉は一つだけ ――



―― 無理、んな滅茶苦茶な願いは叶えられねえわ。



だって、そうだろう?

そもそも俺はオマエ等より強くない……戻っても、護りきれる筈も無いし、逆に足手まといになる。

戦闘でお前達を救うなんて芸当、出来るわけがない。







―― でも、お陰で……完全に心が決まってくれた。



俺は、必ず戻る……必ず、オマエが居る世界に戻ってみせる。

例え戻って、アオが死んでいたとしても関係無い……その時は、アイツの願いを出来る範囲で叶えるだけだ。



役立たずと言われてもいい……そもそも俺は力の面で役に立てる素質など無い。

―― けど、それでも……助けになりたいんだ。



闇に侵食されて冷めていく心に……決意という熱が灯る。



この穏やかな世界に残った方が良いだって?

―― ふざけた願いだ……アイツは、俺よりも何もない状態で頑張ってる。

なら、俺もそれ以上に頑張らないと……アイツに顔向けできないじゃないか。



「サードガラハム、聞いての通りだ……俺は絶対アッチの世界に戻る」

両手に力が籠もる……持っていた50AEが俺の決意を表すように、ギリギリと軋むような音を立てる。


「でも、俺の力だけじゃ……この闇を払えない……だから――」

―― あんたの力を貸してくれ……情けない話、俺程度の力ではどうにも出来ない闇だ。

どんなに頑張っても、それが現実……みっともなく、無様に足掻いても届かないものがある。


―― でも、それじゃあダメなのだ……届かないで終わり……ではなく、頼ってでも届かせて、続かせなければ意味が無い。


「だから、この闇を撃ち払い……あの敵をも消滅させる程の力を貸してくれ ――」



サードガラハムは何も答えない……

その代わり、腕には『失望』の影を屠った時と同じ輝きを宿して応えてくれた。


持っていた50AEも、その輝きと共鳴するように輝きだす。



「―― 行けぇぇっ!!」

迷い無く引き金を引くと同時に、蒼光の奔流が闇を染める ――

―― 次の瞬間、視界一面には月がすっぽりと入りそうな小さな穴が雲に開いていた。



「なっ!?」

その驚愕した声のお陰で、敵がどの方角に居るのかが解った。

既にポンコツと化している身体を無理矢理に叩き起こして、声のした方向へと駆け出す。


距離は約5歩程の間合い離れていた……だが、敵が体勢を立て直し、剣の柄を掴むまでは十分過ぎる ――


―― 残り2歩 ――


敵の射程に踏み込んだ瞬間、即座に居合いが放たれる ――

―― それを、真正面から拳で迎え撃つ。

ガインッ、っという強烈な音を響かせながら居合いを弾き返す。


その衝撃で右手の骨が粉々に砕けた。

構わずに突進し、身体が重なった瞬間に全体重を敵に預け……もつれ合うように二人して地面に倒れこむ。


「ア、ずっ……――!」

敵は体勢を立て直そうと無理矢理に立ち上がろうとするが ――


「……王手(チェック・メイト)だ、化け物……」

―― その直前、銃口を相手のこめかみにゴリッと押し当てる事ができた。







「………………」

敵は俺に命を握られてるという事を理解しているように、ピクリとも動かない。

―― 動いたら、その頭蓋を撃ち抜かれる事が解るのだろう。


「ぜぇ、ぜぇ……いい子だ……さあ、その物騒な刀を遠くに投げ飛ばしてもらおうか……」

指示通りに、無造作に己の神剣を投げるスピリット……遠くでカランという乾いた音が聞こえた。

「ぜぇ、はぁ……はぁ……んじゃ、教えてもらおうか……テメェ、何のつもりで攻撃仕掛けやがった?」


ふと、自分の脇腹が目に入った。

まるで、脇腹に仕込まれていた小型爆弾が爆発したような後……っという表現がしっくりくるような傷跡だった。

―― 道理で寒い筈だ。

痛みは猛烈な寒気として全身を襲っている。


「……試練……」

「……あ?」

「『時神 雫』の真意を見定めるため、試練を課すこと……それが私の任務内容……」

「………………」

その言葉が意味を持って、俺の頭の中に入るまで……数秒の時を要した。


―― つーことは、何か?

俺の真意を見定めるという訳解らん理由で、このヒットマンを放った野郎が居るって事なのか?

何処の電波野郎だよ、こんな無意味で訳解らん指令を出した奴は……


「……まあ、色々とツッコミを入れたいんだが……結果、どうなったのよ?」

「……私は試練を与えるもの……審判は依頼主が決める」

ふざけんな、馬鹿野郎……

……殺し合いで一体何の真意を見定めるつもりなのか、その依頼主に24時間以上問い詰めたい気持ちになる。


「じゃあ、もう……終わりって考えていいの?」

「試練は私を討ち倒して終了となる」

「……それは、王手状態でも終了って認められるのかな?」

「問題無いと思われる」

「そ、よかった……じゃあ、こんな馬鹿げた争いはお終いって事で ――」



身体は限界を軽く突破している。

戦闘終了と解った途端……そのツケを払うように、酸欠になるように頭の中が真っ白になっていく ――

―― ついでに言うと、猛烈に寒い……。


でも、その寒さも次第に気にならなくなってくる。

むしろ心地よいような軽さが全身を包み始める。


「今眠っては、生死に関わります」

―― 知ってるわ、んなもん……つーか、アンタが言うな。


「あと数分で依頼主が到着します……それまで持ちこたえて下さい」

ふ〜ん、依頼主が来るんだ……そりゃそうか、ソイツにはきっと、結果を俺に知らせる義務があるからな。

でも無理……もう限界です♪


―― つーか、会いたくねえ……心底会いたくねえなぁ……出来れば、関わりたくも無かったよ……その依頼主とやらに……

なんせ、命の危険があるのに本人への事前通告が無く、しかも強制参加させた奴だ……

普通に考えても、まともな奴じゃねえ。



そんな事を思いながら、意識はベッドの中に居るように……ゆっくりとゆっくりと眠りに落ちてゆく。



でもまあ……ソイツに文句は山程あるけど ――

―― 久々にアイツの声を聞けたし……しかも、決意が固まってくれたことに関しては……感謝しようと思う。








あとがき



『聖なるかな』と『永遠のアセリア』の共通性が掴めないのは自分だけだろうか?
―― っていうか、技の設定変化有り過ぎなんじゃない?

インパルスブロウとかフューリーとか、全く別の技になってんじゃんっ!?
『ハイロゥによって加速された斬撃』じゃ無かったんかいっ!?

『聖なるかな』の設定を『永遠神剣になっちゃった』に反映させようという企みは5割程崩れ落ちました。

まあ、『永遠のアセリア』の公式設定が語られていたのは助かりましたが――

―― っていうか、ユーフィってファンタズマゴリア出身だったんだね♪ 
あの二人はヨーティア製の蓋を突破して子を産んだのでしょうか? だとしたら、蓋の効果無しという事に……


―― とまあ、お話がズレました。


今回の話は、何も言う事なし……もっと精進しましょう、自分っ!! orz
組み込みたい設定が沢山あるのに、組み込める流れに持っていけない自分の力量が恨めしい……

つーか、雫の秘話を解き明かせるのか……今頃になってメッチャ不安になってきたんですけど……(TT)

<今話で出てきた用語>





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