「share with your life 」

1.
乃梨子はリリアン女学園を卒業と同時に車の免許を取っていた。
去年、リリアン女子大に進学したお姉さまの志摩子さんと旅行に行く為にだ。
進学することにした乃梨子は、リリアン女子大には進まなかった。
受けたかった学部がリリアンにはなく、乃梨子は何と花寺大学を受験した。
祐巳さまの弟さんである祐麒さんも他大に行かずそのまま花寺大学を受けていた。
身近に花寺大学を受けている人だし、親しみやすく聞きやすかった。
乃梨子は、学力的には何の問題もなく現役で合格し花寺大学の学生となった。

何故乃梨子が花寺大学に進んだかと云うと、
実は祐麒さん以外にもアドバイスを受けていた人が居たのだった。
その人の名は、藤堂賢心 ( けんしん ) 氏。
志摩子さんの父であり、小寓寺の住職でもある。そして花寺大の OB でもあった。
元々仏像鑑賞が趣味の乃梨子が花寺の仏教学科に進むのは必然だった。
でも 2 ・ 3 年次に習うコースが尤も重要だった。それは……宗学コース。
寺院の跡取り達が自寺の宗派を継ぐ為に選択するコースである。
ちなみに小寓寺は、浄土宗の寺である。よって乃梨子は「浄土学」を選択した。
何故かというと小寓寺に嫁入りして住職の後を継ぐという漠然とした夢なのだ。
藤堂家には賢文 ( まさふみ ) さんという歳の離れた志摩子さんの実兄がいる。
今は実家から離れた所のお寺にある幼稚園で保父さんをしているらしい。
高校在学中に一度だけ賢文さんに会っている乃梨子であった。
この人が「後を継ぐぜ、親父」なんて云えば乃梨子の夢が砕け散る。
心の中では賢文さんに戻って来てほしくないのだ。

実は、花寺大学は5年前迄は高等部と同様に ( 総合大学としては珍しく )男子校だった。

大学は経営的には安定していたが、昨今の教育界の動向に鑑み、
4年前に試験的に、転入者を含め女子学生の受け入れを行ってみた。
花寺大学の社会的な評価がかなり高い事もあって、多数の女子生徒が入学した。
その結果を受けて、花寺大学は3年前から共学校として生まれ変わった。
乃梨子が入学した頃は、男女の生徒数が逆転する程となっていた。
花寺学院とリリアン女学園は隣接している。
道路を挟んだ所に志摩子さんがいると思うと乃梨子の顔は綻んだりもした。

高校時代、乃梨子と志摩子は電車で色々な地域の仏像や教会巡りをした。
ある日、乃梨子は志摩子さんから、志摩子さんのお姉さまの佐藤聖さまのお話を聞いた。
高校在学中に免許を取得していた聖さまは、祐巳さまを誘ってドライブに
出かけていたと志摩子さんは楽しそうに懐かしそうに話していた。
でも、乃梨子は志摩子さんの表情の中に微かな嫉妬にも似た憧憬が浮かぶのを見逃さなかった。

大学入学後、乃梨子はサークルには入らずアルバイトをしてお金を貯めた。
志摩子さんとの卒業旅行には車で出掛けると決めていたし、
菫子さんと大学に入ったら下宿代を払う約束をしていたから……。
毎日、大学の授業が終わるとすぐバイト先に直行した。
運転技術が鈍ると嫌だからという理由でM駅前のレンタカー屋さんをバイト先に選んだ。
1年生の時は、カウンターで受付業務のみだったが
( 免許所持1年未満は車を動かせないから )
大学2年生になったら実際に車を動かしたりメンテもした。
志摩子さんとの旅行の時、自分も利用出来るから一石二鳥だよね。

バイトに慣れた2年の夏休み、所長さんに断って5日間の休みを貰った。
乃梨子は志摩子さんを誘って千葉県の乃梨子の実家近くの仏像・教会巡りをするのだ。
車での初お出掛けとなったし、しかも1泊2日の旅。
助手席の志摩子さんを横目で眺めながらこの後の楽しみを思い馳せた。
そして久々に実家に里帰りをする事にもした。
勿論、旅行の計画をした時に志摩子さんの了承を取ったし、実家の両親にも連絡している。
乃梨子には両親の他に妹の友梨子がいる。友梨子は乃梨子の後を追うようにリリアン女学園に入った。
さすがに菫子さんのマンションに2人も下宿は出来ないので、( 第一、申し訳ない )友梨子は寮生活を送っている。
友梨子は志摩子さんに逢いたいと常々云っていたので、時期を合わせて里帰りしているはずだ。

今回の里帰りは、乃梨子にとって只の里帰りではない。
電話では、志摩子さんの人となりを両親に伝えてはいたのだが、
実際に恋人同然の志摩子さんを乃梨子が初めて家族に紹介するのだ。
今すぐという訳ではないが、いづれ志摩子さんと結婚を考えているんだし
両親や妹には祝福して欲しいと思うのは可笑しいのだろうか ?
この事を乃梨子は、志摩子さんにも事前に伝えていた。
少し緊張した表情になった志摩子さんだったが乃梨子の手を取り笑顔を見せた。

そんなことをぼんやりと考えながら、実家のマンションへ続く
緩やかな坂道を車で上っていると、妹の友梨子が坂をゆっくりと歩いているのを見かけた。
車に乗せても良かったのだが、マンションの直前だったのでそのまま追い越した。
車を来客用の駐車スペースに止め、お互いの荷物やお土産を出していたら
マンションのエントランスに向かっていた友梨子が、二人に気付いて小走りに近づいてくる。
志摩子さんは近づいてくるのが友梨子だと見当がついたらしく、乃梨子に物言いたげな視線を投げかけた。
乃梨子は取り敢えずここで、友梨子を志摩子さんに紹介することにした。

「友梨子、こちらが高等部時代に私のお姉さまになって頂いた藤堂志摩子さんよ」

「初めまして、志摩子さま。私は二条乃梨子の実妹の友梨子と申します。
今はリリアン女子大文学部文学科一年に在籍して寮生活をしています」

何とか 2 人を紹介出来て乃梨子は内心ほっとした。そのまま 3 人揃って両親の待つ部屋へと向かった。
友梨子と志摩子さんは初対面だし、乃梨子は三人に共通の話題を探しあぐねて、
三人ともエレベーターの中では言葉を交わさなかった。
でも友梨子は何だか少し頬を赤らめて志摩子さんにちらちら賛嘆の眼差しを送っているし、
志摩子さんはそんな友梨子と目が会うと、優しい微笑みで答えている。
言葉は交わしていなくても、二人がお互いに悪い印象を持っていないのが解るので、
乃梨子にとってこの沈黙は返って心地良かったりした。

6 階でエレベーターを降り、実家である 602 号室のインターホンを押して玄関が開くのを待った。
もちろん娘達は鍵を持っているが、やはり親に開けてほしいと思う2人だったりする。
( 間違いなく ) 両親が玄関へと駆け寄る気配がする。
錠を開ける音がしてドアが大きく開かれると、懐かしい両親の姿と声が乃梨子たちを迎えた。

「「お帰りなさい」」

「「ただいま。あー久々の我が家だ ! 」」
乃梨子と友梨子が同時に云った。

「ごきげんよう、お邪魔致します」
志摩子さんが微かにはにかみながら口にした。

「あ、よ、よくいらっしゃいました。さあどうぞ」
志摩子さんの美貌に気圧されていたのか、母は一瞬遅れて慌て気味に挨拶をした。
そして、玄関先に並べてあったスリッパを志摩子さんに勧めると、
靴を脱ごうとしていた乃梨子に「とても綺麗な人ね……」とこっそり囁いた。

3 人は両親と共にリビングに入った。
まず、両親と初対面である志摩子さんを、改めて乃梨子が紹介した。

「こちらは藤堂志摩子さん。リリアン女学園で私のお姉さま…
スール制度は話した事があるよね、スールだったんだよ。今も仲良くしてもらってるの」

「初めまして、小父さま、小母さま。藤堂志摩子と申します。乃梨子さんには色々とお世話になっております」

「ご丁寧な挨拶をありがとう。乃梨子こそ藤堂さんには色々とお世話になっているようで、そちらもお礼を申し上げます」

「藤堂さんのお話は、乃梨子が高等部に在学している頃から色々とお聞きしています。これからも宜しくお願いしますね」

『なにか今凄い事云ってなかったか? ウチの親』と思った乃梨子だったが何とか形式通りの挨拶が
済んでほっとした所だったので、深く突っ込むことなくそのままお茶タイムとなった。

乃梨子は、持って来ていたお土産を母に渡した。
お土産は菫子さん御用達、「メープルパーラーの厚焼きクッキー」。

「フルーツゼリーセレクション」という選択肢もあったが、洋酒が相当に効かせてあるので却下した。
車で帰る身としてはお酒は×でしょ。

楽しかったお茶タイムも終わり、夕飯迄の間友梨子と乃梨子は其々の部屋で休むことにした。
久々の里帰りをした友梨子は、自分の部屋に入るなり寝てしまったみたいだ。
乃梨子は、志摩子さんの手を取り自分の部屋へと招いた。
乃梨子の部屋は、ベッドと本棚が残ってる 6 畳の洋間だ。
中学生卒業まで使っていた学習机は古くなったから先日始末したと母が先程教えてくれた。
学習机の代わりに昔居間で使っていたガラストップのテーブルがあったので
紅茶のおかわりと厚焼きクッキーをそのテーブルに置いた。

2 人きりになってやっと緊張が解けた乃梨子たちは少しぼーっとした様子でテーブルの紅茶に手を伸ばした。
志摩子さんは乃梨子の両親とは初対面だったし、乃梨子は自分の肉親とはいえ、
重大な目的を隠していたから緊張しないではいられなかった。

乃梨子は紅茶をすすりながら『学習机がない分広くなってるから客用布団を敷けるよね。
志摩子さんには客間じゃなくて、この部屋で一緒に寝てもらおう』などとぼんやり考えていた。
しかし志摩子さんを視界に入れると同時に、志摩子さんに話しておかないといけない大切な事があるのを思い出した。

「ねぇ、志摩子さん……」
少し緊張した乃梨子の声を聞いて、志摩子さんが訝しげな表情を向ける。

「私、今日皆の前で報告したい事あるんだけれど。
志摩子さんと私のこれからの事…関係というか…」と乃梨子が小さな声で囁いた。

「もちろん、志摩子さんのご両親にもお話しないといけないけど…まずは、ウチの親を説得したい。
志摩子さんの事が大切だから…その志摩子さんが私にとってどんなに大切かって事を…」しどろもどろになっていく。

乃梨子の説明を黙って聞いていた志摩子さんは、その表情を若干の驚きから徐々に上気した微笑みへと変えていった。
志摩子さんは乃梨子がなぜ今回実家に招待したか確信してくれたようだった。

しばらくすると、母が乃梨子の部屋のドアをノックした。

「乃梨子、志摩子さん夕飯出来たわよ」

乃梨子はドアを開けながら母に答えた。

「うん。すぐ行く。友梨子を起した方がいいかな?」

「ええ、ドアをノックしたけど返事がなかったのよ。友梨ちゃんを起こしてあげてね」

やれやれ仕方ない。半年振りの帰郷なんだしと呟きながら乃梨子は友梨子の部屋の前に立った。

さて、寝起きの悪い友梨子を今回はどう起こそうかと考えていたら、志摩子さんも部屋から出て乃梨子の横に来ていた。
さて、友梨子を起こしますかと乃梨子は、友梨子の部屋をやや手荒くノックした。

「友梨子、おーい起きろ。今日は友梨子の好物の炊き込みご飯だってさ」

「…………………」

ドアの向こうは相変わらず沈黙が支配している。乃梨子は切り札を繰り出す事にした。

「起きないと友梨子の分も食べちゃうよ。いいのかな ? 」
乃梨子の悪戯めいた台詞が終わらないうちに、ドタ、バタンッと派手な音がした。

「う、うーーーん、おはよう、お姉ちゃん。私の分残しといて」

友梨子が慌てて部屋から出てきた。少しだけ寝る積もりが熟睡していたらしい。
友梨子の様子を見て乃梨子は満足げに頷いた。

特に貧乏だったという訳でも、 2 人がことさら食い意地がはっていたという訳でもないのだが、
友梨子と乃梨子は子供の頃に熾烈なご飯の争奪戦を演じていた事があり、
この科白を乃梨子に云われると、友梨子はパブロフの犬みたく条件反射で起きるのだ。

乃梨子はそのままリビングに直行しようとする友梨子の襟首を摘まんで、
『まずは顔洗ってからね』と言い聞かせ、久しぶりに姉らしい所を示した。
ふと気付くと、志摩子さんが乃梨子たちのやり取りを楽しそうに微笑みながら眺めていた。
2 人はそのまま、友梨子は洗面所で顔を洗ってリビングに戻った。

5 人揃った所でダイニングテーブルに着き、手を合わせて食べ始めた。
今日のメニューは、炊き込みご飯、筑前煮 、きゅうりとわかめの酢の物、
アサリの潮汁、乃梨子がリクエストした『銀杏入り』の茶碗蒸しだった。

実家にいる頃は乃梨子と友梨子は交替で夕食の支度を手伝っていた。
今日もお茶の時間に 2 人( それに志摩子さんも )は支度を手伝うと母に言ったのだが、
『もう下拵えは済んでるし、 3 人とも疲れてるでしょう。
部屋で休んでいなさいな。お手伝いはまた明日にでもお願いするわ』と断られた。
実際疲れてもいたし。特に乃梨子はこの後話す事を考えると
その前に一休みしたかったので、ありがたく母に甘える事にしたのだ。
志摩子さんは、完璧な作法と如才ない態度で完璧なおもてなされをして見せた。
もっとも後で聞いたら、『大好きな和食の献立( しかも銀杏入り茶碗蒸し付き )で大喜びしたからよ。なんて言っていたけど』
和やかな食事の時間も終わり、お茶の時間となった。乃梨子は姿勢を正し父と母に話しがあると伝えた。

乃梨子は、気持ちを落ち着ける為に深呼吸をした。
横にいた志摩子さんに微笑み、手を軽く握りしめた。そしてゆっくりとした口調で話し始めた。

志摩子さんをお父さんたちに紹介したのには理由( わけ )があるの。
驚かないでね。志摩子さんと私は恋人同士で、私達は今、結婚を前提としてお付き合いしています。
すぐにではないけれど、私が大学を卒業したら志摩子さんと結婚するつもり。

それに続けて、乃梨子は心の中で呟いた。
だから大学もリリアンに行かず、花寺を選んだんだ。小寓寺継ぐ為に…なんて志摩子さんにも云ってないけどね…。
一人物思いに浸りそうになった乃梨子だったが、みんなの注目が集まったままなのに気がついて、慌てて話を続けた。

まだ、志摩子さんのご両親には 2 人の事は話していません。まず自分の親を説得してからと思っていたから。
突然こんな事云いだしたらお父さんやお母さんが混乱するのは解っているけれど。
でもいい加減な気持ちじゃないの。今はまだ法律では認められていないけれど、でも、それでも……。

最後の方は早口になってしまったが、言わなければいけない事をすべて言った…と乃梨子は思った。

乃梨子が話し終わると、やや重苦しい沈黙が流れた。
黙って話を聞いていた父は腕組みをして、誰を見るでもなく、でも真剣な表情でテーブル付近を見つめている。
母と友梨子はやはり驚きを隠せないのか、乃梨子と志摩子に交互に視線を送っていた。
長いような、それでいて短いような沈黙が過ぎていき、父は漸く口を開いた。

乃梨子の気持ちは解ったけれど、世間はそんなに甘くないぞ。
好奇の目で 2 人を見る訳だし。そういうのには、どういう風に立ち向かうんだ。

確かに、お父さんの言う通りだと思う。甘くないって事は解っている積もり。
でも私には……志摩子さんを守り抜く覚悟がある。
誠心誠意、私たちの事を解って貰える様に、みんなを説得します。

父にそう宣言すると、今迄黙っていた志摩子さんも言葉を添えてくれた。
静かだけれど確乎たる決意を込めて、『乃梨子さんと一緒になりたいです』と父母に話してくれた。

また父が考え込みだしたのを見て、母が助け舟を出した。

もう夜も遅いし、お父さんも私もすぐに結論を出すのは難しいと思うわ。
今日が最後という訳ではないのだし、また私たちと話し合ってくれるのでしょう。

だから、二人はそろそろお風呂に入って寝なさい。

母にそう言われ、父も微かに頷いて同意を示してくれたので、乃梨子と志摩子さんは部屋へ戻った。
友梨子にお風呂を勧めたけれど、後でいいと言ってくれたので、志摩子さんからお先にどうぞとお風呂を勧めた。
乃梨子にお風呂の場所を聞いた志摩子は「ではお先に」と告げて着替えを持って脱衣所に向かった。
その間に志摩子さんの寝床を作っておかなくちゃと、乃梨子はドキドキしながら準備を始めた。
敷布団にシーツを敷いてタオルケットと薄手の夏用布団を掛けた。枕カバーも準備 OK !自分のベットもこれで良しと。
30 分程たった頃、志摩子さんが乃梨子の部屋に戻ってきた。タオルを肩にかけて髪の毛を拭いていた。
乃梨子のそばに来て「ドライヤー借りるわね」と告げて、ふわふわの髪の毛を乾かしだした。
志摩子さんから仄かに漂うシャンプーの香りに乃梨子は陶然として意識が遠ざかりそうになった。
いけないいけないと自分にいい聞かせ、私もお風呂に入ってくると志摩子さんに告げ着替えを持って部屋を出た。

残された志摩子は、漸くゆっくりと乃梨子の部屋を見る事が出来た。
乃梨子と一緒の時はどうしても乃梨子に意識を集中してしまうからだ。
乃梨子が中学まで過ごした部屋だと思うと感慨も一入( ひとしお )だった。
本棚に夥しい数の仏像の写真集や解説書があった。それを見た志摩子は少し微笑みを浮べた。
お寺の娘として生まれたのに仏像には余り詳しくないから、乃梨子に習って覚えようかと思ったりした。
少しぼんやりしていた志摩子は、先程の乃梨子の発言を思い出していた。
乃梨子が私と結婚したいとご両親に告げていた。
とてもとても険しい道のはずなのに、乃梨子は私と共に歩むと宣言してくれた。
凄く嬉しかった。こんなにも乃梨子に愛されている。

とその時、首にタオルを巻いた状態で乃梨子が部屋に戻ってきた。
きちんと乾かしていないせいか、髪から滴がポタポタと垂れていた。
志摩子は乃梨子に近づき髪の毛を拭いてあげた。
乃梨子は普段しっかりしているから、こういう時に世話を焼けるのが嬉しい志摩子だったりする。
程なくしてドライヤーを使う音が聞こえてきた。照れてるのか顔を赤くしながら髪の毛を乾かしていた。
やがて髪の毛が乾いたのか、乃梨子がそろそろ寝ようと提案した。

布団とベッドを前にして、「ちなみに志摩子さんはどっちで寝ます ? 」と

乃梨子に訊ねられたので、うーーんと迷ってしまった。
普段家では布団で寝ている志摩子だから、偶にはベットで眠るのも悪くないと考え、乃梨子にこう答えた。

「乃梨子さえ良ければベットで寝てみたいわ」それを聞いた乃梨子は嬉しそうに、

「実は私も偶には布団で寝たいと思っていたから交渉成立だね……志摩子さん」と言ってくれた。

「お風呂上りで身体が冷えないうちに寝ましょう」と乃梨子に告げて2人は床に着いた。

……しっかりと手を繋いだままの状態で。


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