R18 ♥ プロジェクト企画投稿作品
「 Sleep My Angel」
written by chibi (♀)


初めて祐巳さまを知ったのは入学式の時。


祐巳さまが私を初めて知ったのもその時。


 どうやら、新入生代表の挨拶をしたのを祐巳さま達が見ていたらしい。
祐巳さまが山百合会の中で『紅薔薇のつぼみ』という、ものすごく偉い役職だったとは、私自身その時はまだ知らなかった。
そして、妹の目星もなかった祐巳さまから私を妹にと、突然申し込まれたのが、入学式の翌日の事だった。
休み時間に祐巳さまがわざわざ一年生の教室までやってきて、私を呼び出しものだから、
取り次ぎをしてくれたクラスメート達は『紅薔薇のつぼみが来た』なんて、黄色い声を上げていた。
外部入学の私にとっては、薔薇さまのお姉さま方に興味はないから、黄色い声というよりは、奇声にしか聞こえなった。

 祐巳さまは私の目を見て、 「ごきげんよう、あなたが二条乃梨子さんね。
昨日の入学式の新入生代表の挨拶をしたのを見ててね。 しっかりしてるし、賢そうだから是非私の妹になってくれないかな?」
私は少し悩んで…… 「少し考えさせていただきませんか。姉妹制度について知りませんし詳しくないので」
そう呟いた私をジッと見ていた周りの生徒たちからは、非難や羨望のまなざしが投げ掛けられた。
そんなやりとりをしていたら、休み時間終了5分前になったので、
祐巳さまは 「返事は後日でいいからさ〜ごきげんようまたね」 と言い廊下を小走りで戻って行ってしまった。
もう少し時間があったら、ロザリオを付け取ってしまうところだった。と考えている自分がいた。
さっきも祐巳さまに伝えたけれど、姉妹制度について知らないのだから、自分なりに学んでからでも遅くはないと思う。
それに中学の頃、生徒会の仕事をしていたから、内容はなんとなく分かるつもり。まぁ、大なり小なり違いはあるだろうけど。

 なんてことを考えていたら、あっという間に休憩時間は終わっていた。 そろそろ先生が来る頃だしとそろそろ席に戻らなくては。
そのまま授業を真面目に聞き、昼休みになった。 ここの生活に慣れていない私に色々と教えてくれる、縦ロールが特徴の瞳子さん。
それと私と同じく高校受験組の私よりだいぶ身長の高いのが特徴の可南子さんの2人がミルクホールにお昼を誘いにきてくれた。

「「乃梨子さん、ぐずぐずしていると先程の祐巳さまの事で皆さんに 質問責めに合いますからひとまずミルクホールへ行きませんか ( こと ) ?」」
息の合った一卵性姉妹のように寸分違わぬセリフで2人が言った。

「あ、ありがとう。2人の言う通りだね。このまま此処でお昼食べるとなると質問責めは目にみえるね。急いで飲み物買いに行きますか」

3人揃ってミルクホールへ向かい、私と瞳子さんで烏龍茶と紅茶2本を買い、その間に可南子さんが気を利かせて席を取っていてくれたので、
ただでさえ目立つ私達ではあるけれど、すんなりお弁当を食べ始る事ができた。 瞳子さんが私に休み時間の騒動の件を質問してきた。

「紅薔薇のつぼみの祐巳さまがうちのクラスにいらっしゃってましたがどんな用件でしたの ?」
「入学式の時の新入生代表の挨拶をしていた私を一目みて自分の妹 ( スール ) にと誘いにきてたみたいよ」
とまるで他人事のようなセリフを吐いた私を瞳子さんが呆れ顔で見つめていたりする。

「この際だから高校からの入学組のお2人にリリアン学園の妹 ( スール ) 制度についてお教えしますわ」
 瞳子さんは目を輝かせて話しを続けた。 『スールとは、姉である上級生が妹である下級生を指導するもので、この事を「姉妹の契り」というらしい。
その証明はロザリオの授受をすることによって成立するのだという。 1人のお姉さまに対して、妹になれるのはたった1人きり。
契りを交わしたことで、2人は1番親しい間柄だと周囲から認めてもらえる。 ともなれば、「姉妹になる=結婚する」という風に評されるらしい。』
…と何故か最後の方の“結婚”は小声で赤面してる瞳子さん。 こんな表情 ( 顔 ) も出来るんだと話を聞きながら、ぼーと見つめていた。

「さすが伊達に幼稚舎からリリアンに通っているお嬢様じゃないのね」と乃梨子と可南子は瞳子さんに感心した。
「ところでさ、私は祐巳さまからの申し出があったけれども、お2人さんは薔薇さまでどなたが好きなのか知りたいな」
「お、教えないといけませんか ?」 「教えないとフェアーじゃないしね」と2人からの答えが返ってきた。
「私は、白薔薇さまこと藤堂志摩子さまが好きですわ。妹 ( スール ) にと言われればすぐにでもゴニョゴニョ」と瞳子さん。
「私は、黄薔薇さまのカッコよさに憧れてますし、由乃さまから『バカ』と言われたいから」と可南子さん。貴方、結構ドMね。



 あれから瞳子さんの提案に乗り、今は山百合会の手伝いをしているが、私は未だに決めあぐねていた。
確かにスールになるのも一つの手とも思えるが、友達のままではいけないのだろうか?
学年が違っていても、友達でも、素晴らしい関係が築けるのではないかと…
間違えて入ったリリアンにどうしても馴染めない私から見れば、リリアンは異界でありスール制度にも疑問を持っている。
そんな宙ぶらりの日々が続いていた。


 でも、それを終わりと導く出来事が私に訪れた。


 「実はさ、リコ。私来週1泊2日で友達と旅行に行くのよ〜。此所の所物騒だしいつものように留守番頼めるかしら。
一人で留守番するの寂しいなら誰か呼んでいいからさ」 来週夏休みに突入するという日、突然菫子さんからこんな話が持ち上がる。
菫子さんからお許しが出たんだから、私は祐巳さんを呼ぼう…なんて考えていた。
この機会を逃したら次のチャンスがいつになるか分からないと思ったからこそ私は話に乗る事にした。
明日登校日だし、祐巳さんにお泊り話をどう切りだそうか悩んでいた。 なんといっても相手は百面相全開な祐巳さん。
普通にしていても、誘ってお泊りなんていったら、たちまち他の山百合会の皆様にバレてしまう。
まぁ、そこら辺はかなり労力を要したのだけれど、残念ながら割愛しよう。


 夏休み初日、菫子さんから留守番を頼まれた午後の事、突然玄関にお客さまが来た気配がした。
ピンポーンピンポーン♪ 祐巳さんが来てくれた嬉しさで私は慌ててドアを開けた。

「ごきげんよう、祐巳さん。暑かったでしょ〜来て下さってありがとうございます。
お昼ご飯食べて来てしまいました ?」

玄関先に佇む祐巳さんに訊ねていた。

「まだ、食べてないよ。乃梨子ちゃんと一緒に食べようと思ってたし
宿題済ませたら食べに出掛けてもいいしね」

そうだった、忘れていた。祐巳さんを家に呼ぶことで頭一杯になってて、宿題たんまり出ていたんだった。
何か冷たい飲み物をと言いつつ乃梨子は、コーラをお盆に乗せ、祐巳を自分の部屋へ招き入れた。
勉強道具とお泊りバックを足許に置き、乃梨子が寝ているダブルベッドの端っこにおとなしく座った祐巳。
しばらくの沈黙の後、乃梨子が早口で話し始めた。

「私、祐巳さんの事大好きです。今日だって菫子さんのお泊りの話が出て、
そうしたら誰か呼んでいいって。だから、祐巳さんに逢いたくて呼んだんだもん」

何て可愛いセリフを言ってくれるんだろうと。 祐巳は乃梨子の吐いた甘い囁きに顔を赤くするのだった。

「祐巳さん今キ、キスしてもいいですか ? 」
「うん、いいよ」 というセリフを祐巳さんが口にしたと同時に私から押し倒してキスをした。

 おでこ、瞼、両頬、頤とチュッチュッと啄むようなキスをする。
そして、鼻と鼻を擦り合わせる。いつだったか、ドラマでみた”キス”のようなモノだ。
実際してみると、正直これが普通のキスより、物凄く恥ずかしい。
唇に触れ合う位の距離まで近づいて、返ってキスしているみたいに、ドキドキするね。
今度は頬を擦り合わせてみる。柔らかい祐巳の頬の感触を楽しむように優しく、それでいて熱く。

「ねぇ…乃梨子ちゃん…これは……?」
「ドラマで見たものですけど、バタフライ・キスって言うらしいです。」
真っ赤になりながら祐巳は「普通にキスするよりもなんだか恥ずかしいね」とはにかんだ。

―目で意識して、肌で熱を感じ、吐息の掛かる距離―


『これが今の祐巳さんと私の距離。この距離をどれくらいから望んだだろう。
適うか適わないかわからない、望んではイケないと思いながらも、そんな夢をずっと描いていた。』

祐巳も声にならない吐息で応え、息が落ち着いた頃、
「ねぇ…乃梨子。…焦らさないでキスの続きして」と小声で呟く。

乃梨子も答えるように、軽いキスから口腔を抉るようなキスをして、歯茎、形のいい歯を舐める。
舌と舌もお互い吸い付いて、口の端からツーと涎が垂れる。
これからという所で、祐巳と乃梨子のお腹から盛大に空腹を知らせる音が鳴り響く。
2人はキスするのを止め、ベッドから起き上がり少しだけ乱れた衣服を直した。
私は台所に行き、何か食べる物がないかと物色し始めると、パスタとミートソースの缶が見つかったので祐巳さんに声を掛ける。

「祐巳さん、パスタあるので一緒に食べませんか ?」
「私も作るの手伝うから食べよう、食べよう」
2人並んで洗面所で手を洗い、台所に入り乃梨子が鍋にお湯を沸かし
パスタを茹でて祐巳がミートソースを温めた。 テーブルに座り手を合わせて食べ始めた。

「茹で加減はどうですか ? 祐巳さん」
「うん、丁度いいよ。アルデンテだし」

2人並んで洗面所に行き、乃梨子がお客様用の歯ブラシを祐巳に手渡して其々歯を磨いた。
乃梨子はそのまま食器を洗い布巾で拭いて食器を片付ける。
自室に戻った乃梨子はソファの肘あてを枕にして寝ている祐巳を惚けて見つめる。
緩くはあるけれど冷房が掛かっているからこのままでは祐巳が風邪を引くのでベッドに置いてある
タオルケットを掛けて、 寝顔が可愛くて夜中、光に吸い寄せられる虫のように祐巳の頬に近づいている自分に驚く。
寝込みを狙うなんてフェアーではないとは判っているけれど自分の感情とは裏腹な行動に嫌気が差す。
まるで童話の話ではないけれど……
毒リンゴを食べて眠らされて王子さまのキスで目覚めるお姫さまのシチュエーションを想像して笑ってしまう。
仏像好きの自分がこんなに特定の人を愛しいと思ったことはなかったからか気の迷いと呟いてみる。

 祐巳は気配を感じ、ふと目が覚めた。
目を擦りながら起きると祐巳は、ここが自分の部屋で無いことに気付いた。
霞掛かった頭でゆっくりと状況を整理している途中で、自分を見つめている乃梨子と目が合う。
彼女に『おはよう』とやさしく声をかけられると、自分だけ寝てしまったことを理解して、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

「 もー、ひどぃ! 起してくれたっていいじゃない!」
「ごめんごめん。祐巳さんがついかわいくてさぁ」

 夕方、二人は乃梨子が菫子さんと良く行く近所の和食専門のレストランに行き、
少し早い夕食をとりのんびりと食後の紅茶を飲んでいた。
乃梨子がここを勧めたかったことや、学校であった他愛のない事を話した。
祐巳の満足そうな顔をみるとここに連れてきてよかったと安心した。

 家に帰って、2時間位お互いの宿題を済ませ、先にお風呂に入るよう私は勧められた。
乃梨子ちゃんはどうやら寝室の準備をするらしい。
30 分程して湯上りホカホカで、お風呂から上がり部屋に戻ると、水分補給のイオン系飲料を貰った。
こういった気配りは本当に年下かと疑う程に利く。 ドライヤーで髪の毛を乾かし、乃梨子ちゃんのブラシを借りて梳かす。
パジャマに着替え乃梨子ちゃんの部屋をぼんやりと見ると、自分の部屋のようにぬいぐるみはないけれど、
パソコンや仏像関連の本が本棚を占領していて、本当に仏像が好きなんだなぁと思えて微笑ましくなる。
 乃梨子は湯船に漬かりながら、自分のあこぎな行為に言い訳をしていた。
ベッドは一つしかない、必然的に一緒に寝ることになる。
ほんといえば、来客用の布団があるのだけれど、これは私だけの秘密。

…だって、一緒に寝たいんだから。
―ただ、寝るだけ、一緒に、ただ…それだけ……それだけで、幸せだから。―


翌日の朝、いつも学校に行く時間に起きてしまい、2人並んで洗面所で顔を洗いクセ毛を直し、歯を磨く。
ご飯は祐巳さんの希望の食事。だって、なるべくなら福沢家と同じ物を出したいから。
昼頃、菫子さんが旅行から帰ってきたので、祐巳さんが泊めて頂いたお礼をしたいと自己紹介をする。
菫子さんを大叔母さまと呼ぶべきか名前で呼ぶかで迷ってオロオロして百面相しだす祐巳を眺める。
そんな祐巳さんをみた菫子さんは一目で祐巳の人柄などを見抜いた。
さすが元薔薇(だったっけ?)さまと、安心したのは束の間。

「えっと…祐巳さんだったね?どうだい、来客用の布団だけど、ゆっくり寝れたかい?」
「えっ? …お布団じゃなくて、乃梨子ちゃんと一緒のベッドで寝ました。」
「ああー! 来客用はなかったか。そう…そうだったのかい。私も年かねぇ。ハハハ!」

祐巳さまは董子さんの方を向いているので気が付かないだろうけど、多分、私は真っ青になっている。
談笑している菫子さんを見ていると、『帰ってきたら、全部話してもらうからね。リコちゃん♪』と訴えているのがよく分かった。


私、二条乃梨子。時にして16歳。この日、初めて家出を考えた。



 2人の紹介も終わったので、そのまま祐巳さんを駅まで送る旨を伝える。
白い日傘と麦わら帽子を持って、菫子さんに伝えてマンションを後にした。
日傘を祐巳さんに渡して、私は麦わら帽子を被り駅までの道を恋人のように指を絡ませる。
  甘えるように腕も密着させて乃梨子が話す。

「今度、山百合会の仕事無い時、祐巳さんの家にお泊りしたいなぁ。ダメ?」
「うん。是非是非おいでよ。今回のお泊りのお礼も兼ねてね。それにうちのお母さんの料理美味しいから食べて欲しいな」

私はお家にお呼ばれして、楽しい一日を想像してワクワク。しかし、何故か横で祐巳さんは真っ赤になってうつむいて一言。

「…で、一緒のベッドで…昨日の続きをゴニョゴニョ……ね」

ゆ、ゆ、祐巳さん! まだ日が高いこんなまっ昼間に何を言い出すのかと。
熟れたトマトのように真っ赤になって鼻血を噴き出しそうだよ。

 楽しい時間というのは直ぐに過ぎるもので、いつの間にか駅に着いていた。
祐巳さんは別れ際に『あっ、傘を…』と言ったので、受け取るためにそっと近づく。
すると傘を横にして周りの人に見えないよう私にキスをした。
 さっきの祐巳さんの突然のキスには、人前で恥ずかしかったけれど驚いちゃった ! 
……とそんなことを考えながら駅からマンションまでの道のりをスキップしそうな勢いで帰る。
マンションに着く間際、菫子さんに“祐巳さんお泊り追及”の事をすっかり失念してるのを思い出す。
うな垂れ気味に帰って着て…

「ただいま。 祐巳さんを駅まで送って来たよ」
「で、リコちゃん〜♪ さっきの話の続きを聞かせてもらいたいんだよねぇ」

そうきたか、菫子さん。せっかちな性格してるなぁ。心の準備くらいの時間くれてもバチ当たらないのにね。

「だ、だから祐巳さんと夏休みの宿題をして、( 小声でキスしてと言い ) 菫子さんお勧めの
和食専門のレストランで夕食して一緒のベッドで寝ただけだよ」

「へぇ〜♪  キス したのね。< しっかり聞こえてるとは。さすが地獄耳 >

菫子さんが私の耳を掴んで『誰が地獄耳だって…』と吠え出す。

「あれれっ、確か来客用の布団があったと思うけど、もしかして……」
「はい。使わなかったというより ( 意識的に ) 使う気ゼロですよ」
「ふぅ〜〜ん。人が留守の隙にそんな ( オイシイ というか ) 楽しいことしてたのね」としたり顔でニヤついてる。

「でもさ、リコはあの、祐巳さん…だっけ。あの子のこと好きなんだろ。感じもいいし、優しそうだし。
だったらグズグズしてると誰か妹になりたい一年生の娘に取られちゃうよ。さっさと妹 ( スール ) にしてもらいなよ」


この時、私はこの人の妹になりたいと本当に思った。





 8月の終わり間近の土曜日の午後に、祐巳さんのお言葉に甘えるように私は、福沢家にお泊りに行くことになった。
玄関先でドキドキしながらチャイムを鳴らす。 ピンポーンピンポーン♪
2階から勢いよく降りてくる足音で祐巳さんが出てくる気配がしてドアを開けてくれる。

「ごきげんよう、乃梨子ちゃん。外暑かったでしょ〜来てくれてありがとね」
「いえいえ。お招きいただきとても嬉しいですよ。楽しみだなぁ、祐巳さんの家 ( お部屋♪ )」

「それに、お母さんもこの前のお泊りのお礼が言いたいから、是非連れて来てってうるさくてね」
「そんな、大したことではないのに。お料理上手なお母様にお会いできるなんて光栄だな」

なんて玄関先で挨拶を交わしていたら噂のお母様がリビングから顔をひょこっと出し挨拶してくれる。

「まぁ、あなたが二条乃梨子さんね。祐巳の母です。この間は、祐巳がお世話になってありがとうね」
「いえいえ。此方こそお構いもせずに失礼致しました。」


  祐巳さんのお母様との挨拶も終わってどうしたらいいか呆けていると祐巳が話しに割り込んできた。

「とりあえず、手荷物を私の部屋に置いてもらうから連れて行くね」
「あぁそうよね。今日は泊まりに来てくれてるんだものね」
「すみません、お母様。今日、明日とお世話になります。あっこれ叔母からのお土産のお茶菓子です。皆様で召し上がって下さいませ」
菫子さんから渡されたのはメイプル・パーラーのフルーツセレクションのゼリー。少し洋酒が入ってるけれど夏向けの一品。

「早速夕食後のデザートとしていただくから冷蔵庫にしまっておくわね」とゼリーを受け取るお母様。

祐巳は、乃梨子の手をひき自分の部屋のある2階に連れて行く。

 此処が私の部屋だからさぁさぁどうぞ、入ってね。
どこに座っていいか迷ったけれどセミダブルのベッドの端っこにおとなしく座る。
お互い、しばしの沈黙の後……祐巳が話し始める。

「乃梨子ちゃん、この前の続きでキ、キスしてもいいかな ? 」
「うん、いいですよ」というセリフを私が言う前に祐巳さんは私を押し倒してキスをし始めた。

 この前のお返しとばかりに祐巳さんは私にされたように同じ場所にキスをする。
そして、頬を擦り合わせる”バタフライ・キス”も……
このキスは自分でしておいていうのもなんだけど、やっぱりされるのは相当、恥ずかしい。
前回はキス止まりだったからもう少し先のステップに進みたい。
バタフライ・キスで少し興奮気味になった所で、更に舌と舌を絡ませ、口の端からツーと涎が私の胸元に垂れる。
祐巳さんは、ザラザラの舌の部分で猫のように胸元を舐めてみる。
涼しくなったとはいえ日中の日差しの中を歩いて来たのだから少し汗をかいている。

「ちょっ…まって祐巳さん。私、汗かいてるから…その…汚いから」
「乃梨子は汚なくないよ。それに、乃梨子の汗なら喜んで私舐めるよ」

!? なんて恥ずかしいこと臆面も無く言うのですかこの人は!


 その先に進もうとしたら階下にいるお母さんが、 『祐巳、乃梨子ちゃんお昼ごはん出来たから降りてらっしゃ〜い』
ってさ。良かった。ココで止めておいて。 確かにそういう行為は年頃だから興味はあるけれど、やっぱりねぇ…大事にしたいじゃん。
急いで服装を整えて階段を下りてる時、図書館でアリスや小林君と勉強してきた祐麒が帰ってきて玄関先で鉢合わせ。

「ただいま〜 ! あれ、玄関に見慣れない靴あるけどお客さん来てるの ? 」
祐麒、お帰り。そうそうお客さんが来てるのと初対面の2人は、手短に自己紹介を始める。

「こちらはリリアンの後輩で二条乃梨子さん。」
「で、コレが私の弟の祐麒だから。」って紹介したら、
”コレ”っていう紹介はないぜ、姉貴! って思ってるな。まぁ許せ弟よ。

「初めまして、弟の祐麒です。今期、花寺の生徒会長をさせていただいてます。弟と言っても学年は乃梨子さんと同じだからさ」
「は、初めまして。高校からリリアンに入学した二条乃梨子と申します。今後も山百合会のお手伝いをさせて頂くと思うので、
またお逢いするかもしれません。その時はよろしくお願いします。祐麒さん」

”今後”? 今の、乃梨子ちゃんのセリフって私の妹 ( スール ) になりたいこと ? ……と勝手な想像をする祐巳。
しばし妄想の世界から目覚めた祐巳は、仲良く3 人で洗面所へ行き手を洗って台所のテーブルに着く。
『さぁさ、お昼食べましょう。簡単な物だけど』とお母さんが言う。
出てきたのは『エビピラフ』。 大きめのエビさんがたくさん入ってて美味しそうで、両手を合わせ
『いただきます』の後、はしたないけれど祐麒と共にガツガツと食べる乃梨子。

「2人共よっぽどお腹空いてたのね〜 おかわりあるからドンドン食べてね。
こんなに美味しそうに食べてくれると作った甲斐があるわ」 それ誉め言葉だよね、と
ずうずうしくもお母様の言葉に喜ぶ単純な乃梨子。
さすがにおかわりはしなかったけれど美味しくいただき、『ご馳走様でした』と両手を合わせる。

『乃梨子さん、ゆっくりしていって下さいね』と言いつつ、祐麒は勉強疲れのせいか2階の自室に入ってしまい仮眠を摂る。
 お昼ご飯をいただいたお礼にと、食器を流しに運び洗おうと腕をまくっていると、お母様が
『あらあら、お客様にそんなことさせられないわ。私が洗うからいいのよ』と言われ、まくった腕を元に戻す。
することがなくなり、手持ちぶたさの私を祐巳さんが『食後の紅茶を部屋で飲もうよ』と誘い紅茶の準備をしていた。

暫くするとピーと鳴る薬缶から音を立て、( ボク、今お湯沸したからと主張するように ) お湯が沸く。
カップをお盆に乗せ、ティーサーバーに茶葉を淹れ沸き立てのお湯を注ぎ、火傷しないように2階へ乃梨子と向かう。
テーブルに置かれたカップからは、注がれたオレンジ・ペコのいい香りが立ちのぼり、
乃梨子はのんびりとした時間を祐巳と過ごせる幸福 ( しあわせ ) を噛締める。

 さっきはゆっくりと祐巳さんの部屋を見れなかったからと小さく呟きながらと部屋を見回す。
あまりジロジロ見ないでと赤面する祐巳さんはとても可愛い。
「あっ、某キャラクター ( 耳にリボンの付いてる ) ネコのぬいぐるみがあるんだ。かわいい」
と自分の部屋の殺風景さと比較する。 ふいに祐巳さんが対面に座ってる私の耳元で囁く。

「なんだったら後で私達も、祐麒のように仮眠する ?」と訊かれさっきまでのキスの余韻を思い出す。
「いいえ、別に今は眠くないですし、今寝ちゃうと夜寝れなくなっちゃうし……」と返事をする。

階下にいたお母さんが、上がってきて部屋のドアをノックする。 トントン♪
「祐巳、乃梨子ちゃん、お母さんこれから夕飯の買い物に行くけど、乃梨子ちゃんは苦手な食べ物はあるかしら ?」
「らっきょうが全然食べれないくらいですよ。後は平気ですから」
「じぁ、何出しても大丈夫ってことね。ピーマンダメとかの好き嫌い無くて助かるわ」
「それじゃ、買い物行ってくるわね。乃梨子ちゃん少しのんびりしててね」
と楽しそうな声がドア越しに聞こえてきてお母さんが階段を下りていった。

 台所に祐巳と乃梨子、お母さんの3人がいて、2人で夕飯の支度を手伝う。
夕飯時、昼間会えなかった祐巳の父にも挨拶が済んでなかったからご飯前に自己紹介をする。

「初めまして、リリアンの後輩で二条乃梨子と申します。いつも祐巳さまには、色々と指導していただいてます」
「なかなか、可愛らしい娘さんじゃないか。並んでいると本当の姉妹みたいだぞ」
……なんて言葉も聞こえて、言われた私も恥ずかしいような嬉しいような。

無難に紹介も済んで夕飯となる。今日の献立は、肉じゃが、ホウレン草のお浸し、冷奴、豆腐とじゃが芋の味噌汁と和食づくし。
皆テーブルに着いて両手を合わせ『いただきます』といい、食べ始める。
席順は、お父さんの隣にお母さんが座り対面には、祐巳と乃梨子。正面の席に祐麒が座る形となった。

「お味はどうかしら、乃梨子ちゃん。在り来りな献立でごめんなさいね」
「いえいえ。私、和食大好きですし、千葉の実家でも大好物な献立で。いつもお手伝いしてましたから」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。遠慮せず、ドンドン食べてね」

いつも菫子さんと2人きりの食事だから、ふと私は、千葉の実家に居る時を思い出す。
仕事で忙しい両親の代わりに妹と一緒に料理をしてたから。 ここの家庭の温かさに触れて、ホームシックに掛かったらしい。
ぼんやりと考えごとをしていると箸が止まる。隣でそんな私に気付いた祐巳さんが心配そうに私の顔を覗く。
あと少しで食べ終わる所だったのでまた食べ始め、綺麗に完食する。
『ご馳走さまでした』と告げて食べ終わった食器を流しに持って行く。
食休みをしていると、昼間私が持ってきたメイプル・パーラーのゼリーがお皿に乗って出てくる。
美味しくいただいていると、お母様が『祐巳と乃梨子ちゃん、どっちが先でもいいからお風呂入ってね』と言われる。

「この前、乃梨子ちゃんちで私を先にお風呂勧めてくれたから今回は、乃梨子ちゃんからどうぞ」
と言われ お先にいただきますと伝え、着替えを取りに祐巳の部屋に戻り、お風呂場を教わり私から入った。

 待たせるつもりはないけれど、30 分後、お風呂から出て、着替えとして用意した T シャツとスパッツを着て祐巳の部屋へと戻る。

「お風呂、湯加減どうだった ? ゆっくり出来たかなぁ」
「えぇ〜丁度いい湯加減ですよ。ありがとうございます」

水分補給の○カリを渡され一口飲む。
美味しそうに飲んでいると、 『あっ、私にも頂戴』と祐巳が
横からにゅーと手を伸ばし、飲みかけの○カリを口に含む。

「か、か、間接キスじゃん、コレ」と湯上りなのに更に赤くなる乃梨子。

そんな乃梨子をちらっと見つめ、じゃぁ私もお風呂入ろうと着替えを持って部屋を出る祐巳。
ドライヤーを借り、ブラシは持って来てる自分のミニブラシを使い梳かす。
部屋の主がいないというのは淋しい気がするなぁ……と、のほほんと眺める。
やはり30 分程で祐巳がお風呂から出てくる。ドライヤーで髪の毛を乾かし乃梨子の飲みかけの○カリを飲み干した。

「もう夜も遅いし、そろそろ寝る ? それとも、もう少し起きてる ?」
「もう寝ましょうか。でも一つだけ祐巳さんにしたいことあるから…ダメかな ?」
したいことって何だろう ? 昼間の続きかな、なんて邪な考えをしていたら全然違ってた。

「実は……好きな人が出来たら腕枕して一緒に寝たかったんですよ」
「腕枕か。いいね、それで寝ようか」と私達はベッドに並んで横たわり、乃梨子ちゃんに腕枕され抱き子狸枕の状態に眠る。

 翌朝、最近眠りの浅かった祐巳にしてはぐっすりと眠れた。これも、乃梨子に包まれてたからかな。
下に降りて、洗面所で並んで顔を洗い、歯を磨く。台所から美味しそうな匂いがする。朝ご飯の匂い。
皆揃っての朝ご飯を食べてから帰宅の途に着く旨を祐巳さんのご両親に伝える。

「いつでも、遊びに来なさい」と歓迎してくれるお父さま。
「今度来てくれたら、もっと腕に寄りをかけるから」と微笑んでくれるお母さま。

お二人の優しさにふれると、本当に祐巳さんのご両親だと凄く納得できる。
すると、祐巳さんが駅まで送るよと出掛ける仕度を始めだす。 「それじゃ行ってきます」と2人で駅までの道を腕を組んで歩く。
駅までの道中、夏休み明けの山百合会の手伝いが楽しみとかの話をしていたらあっという間に駅に着く。
まだ離れたくないんだけれども、電車の時間もあるしと、改札を抜ける瞬間に人がいないことを確認して、頬にキスして逃げるように改札を潜る。





なんでも、ごきげんよう。
マリア像に祈りを捧げる、無垢な乙女たちの巣
消えそうな自分を拾い上げてくれた天使



貴女に逢えてよかった。



そして伝えよう私を貴女の…にしてくださいと





夏休みが終了して数日後、乃梨子の胸元にあるロザリオが新聞部スクープされる。

そのことを瞳子と可南子に追及される事になるが、それはまた別のお話。






             Fin


◎あとがきという名の言い訳◎
主催である桜沢 朔さまの「READY×GO !」様と、協賛である柚田実咲さまの「STORY*GARDEN」様の
合同企画でした『マリア様が…み・て・る ? R18 ? プロジェクト』に本作は、投稿させていただいた作品です。
企画投稿 4 本目にして、18 禁モノとは・・・かなり思い切りました、私。作品自体は『中途半端』な R18 となってます。
既にお気付きの方もいらっしゃっているとは思いますが・・・バナーや企画ページ自体が一時消滅してしまいましたからね。
自分のサイトあるんだから置かないでどうするの ? という事でサイトにアップしてみました。
ちなみにこのページの背景色は『石竹色』といいます。色コードは、#e5abbe です。
このあとがきや細かい箇所は、加筆修正致しましたのでご了承下さいませ。
楽しんでいただけると管理人は、小躍りします。では、また別の作品でお会いしませう。
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