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3/24 新日本キック協会興行観戦記

お疲れ様です。
高倉です。

さてさて、突然ですが、1970年代生まれの僕にとっては、
K-1やUFCが誕生する1993年以前の「最強の格闘技」は間違いなくムエタイでした。
何故、プロレスでもなく、空手でもなく、ムエタイなのか?
理由は簡単、当時はどのメディアでもムエタイを紹介する時には、
「最強の格闘技」という枕詞が必ず付いていたからです。
そして今回、僕は現在のムエタイを確かめる為に、
ムエタイを追いかけ続ける新日本キックボクシング協会の興行を観戦してきました。

キックボクシングの興行のテーマに「打倒ムエタイ」をかがげる団体は多いのですが、
実際には厚い選手層を誇るムエタイの前に、多くの日本人が散っていきました。
そんな中、昨年、現役ムエタイチャンピオンを破り、
ムエタイ二大スタジアムの一つ・ラジャダムナン・ウェルター級王者になった男がいます。
その名は「武田幸三」。彼の主戦場が新日本キックボクシング協会です。
残念ながら現在は防衛戦で敗れてしまい無冠なのですが、
今年5月には階級を一つのJrミドル級に上げて再び王座に挑みます。
そして今回の興行では、その前哨戦としてこの階級の現役ムエタイランカーと対戦します。

ちなみに、ルールについては「K−1+ヒジ打ちアリ」だと思えば良いでしょう。
また、体重別の設定がかなり細かいレベルで設定されています(5kg刻み)。

では、観戦記です。

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16:45
後楽園ホール到着。当日券4000円を払って会場入り。
本日はエースである武田選手が出場するだけあって、客席は超満員。
…って言うか、「キックでも人気のある団体はこんなに人が入るのか!?」という程だ。
マット界も不況と言われる昨今、この客入りは壮観だ。

17:15
試合開始。前半は3回戦5試合と5回戦2試合。
試合内容等は割愛しますが、判定決着が多かったものの、
好ファイト続きで見ていて飽きませんでした。

ここで、全体的な事で印象に残ったことを2、3ほど。

○客と選手の距離が近い。
先ほどまで戦っていた選手が、平気で客席をウロウロ。
「あ〜あ、負けちゃいましたよ。相手の選手、ヒジだけの選手だったのに…。」
「俺、この間、立嶋選手(元・全日本キックの看板選手)との対戦オファーが来たんですが、
 会長がことわっちゃったんですよ。俺はやってもOKだったんですけど。」
「ファイトマネー、こんだけです。これじゃ治療費にもならないっス。」
「この間のNKホールの興行見た?○○が主催する興行はジャッジがヒドイね。」
なんてやり取りが、あちこちから聞こえる。
おそらく、客席の殆どがキックと何らかの関係のある人なのだろう。

○プロレスと比べると、とにかくヤジがキツい。
これは前項の事を考慮するなら、当たり前の話なのだが。
まあ、よく「プロレス・ファンは暖かい」と言われるが、
このような「純格闘技の会場」に行くとその意味がよ〜く分かる。
客席が選手に近い分だけ、声援にあからさまな「殺気」が篭っているのだ。
ヘタな事を言おうものなら、客同士のファイトが始まりそうな空気。
「キックは『男の世界』だ」という事を痛感する。

○意外と年齢の高い選手が多い。
これが一番意外だった。
「28歳にして、本日プロデビュー」という選手や、
「33歳にして日本チャンピオン」とか「29歳でキャリア7戦」等々…。
思えば、武田選手も「29歳にしてラジャダムナン・ウェルター級王者」。
「立ち技のピークは20代中盤」というイメージが強かった僕は、これにはかなり驚いた。

19:25
10分休憩後、協会代表・伊原会長の挨拶。
この人のは興行の名物にもなっているのだが、
とにかく声がデカい。メチャクチャデカい。そして熱い、無意味に熱いのだ。

「武田は5月にベルトを取ってっ、12月には本場タイに行って防衛戦ですよっ。
 皆さんで行きましょうよ、タイへっ!ねっ!行きましょうっ、是非っ!

 …どうしたんですかっ、皆さんっ!声が小さいですよっ!行くんですよっ、タイへっ!」

…この人のデカい声で言われると、挨拶か恫喝かわからなくなる。
かなり戦々恐々としつつ後半戦を観戦開始。

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第8試合 ウェルター級・5回戦
△北沢 勝 vs 鷹山 真吾△ (判定 1−0)

鷹山は特攻服で入場、髪型はリーゼント、まんまヤンキー。
対する北沢はソンブレロを被って入場。
試合前から鷹山が腕を組んで斜めに見下ろしメンチを切る。
これに対して北沢はガッツポーズで対抗。
北沢はなんと33歳にして同階級の日本チャンピオン。
頑張ってる中年がここにいる。

試合は1Rから両者打ち合う展開。
北沢はコンビネーションで鷹山を攻めるが、鷹山は左右のストレートで対抗。
2Rは主導権を握りられては握り返し、
お互いに持っているコンビネーションの応酬で一進一退の攻防が続く。
3R、自力の差が出始める。鷹山はコンビネーションが左右のストレートしかないのに対して、
北沢には左右の連打の後にヒジやローが混ざっている。
さらにはパンチを避ける技術にも差が出ている。
序所に北沢がペースを握り始めたが、鷹山も少ないコンビネーションながら攻勢にでるシーンも。
4R、打ち合いはさらに激しくなるが、ここで北沢は完全にペースを握る。
接近戦からのパンチやヒジが良く入っている。
5Rになると北沢のパンチやハイキックがクリーンヒットする場面が多かった。
しかし鷹山もなんとか応戦し、ダウンは奪えずに試合は終了。

判定は…え?ドロー?どう見ても北沢じゃないの?
僕の近くに座っていた関係者と思われる人が、
「これでドローじゃ、北沢さんも浮かばれないなぁ…」とボヤいていた。

第9試合 ライト級・5回戦
○石井 宏樹 vs サーイヤン・チューワッタナ● (判定 3−0)

序盤から石井はパンチやローで攻める。一発一発がかなり重そうだ。
対するサーイワンはムエタイ式のしなるミドルとハイで対抗、こちらはスピードが抜群。
1Rは両者比較的穏やかに、しかし気合は十分で打ち合う。まずは様子見だ。
2R、お互いにコンビネーションを絡めるようになってきた。今の所、両者に差はない。
3R、ここで石井がノッて来る。
左右コンビネーションからロー、単発のアッパーなどでペースを掴もうとする。
しかし、サーイワンも左右ミドルで対抗、用意にペースを握らせない。
4R、3Rで見せたコンビネーションを石井はここでも多用。
対するサーイワンは組みついて倒す嫌がらせを何度か見せる。まだまだ互角だ。
5R、石井の左右コンビネーションからローでサーイワンの体制がついに崩れる。
「ここがチャンス」とばかりに左右猛ラッシュで攻勢にでる石井。
しかしサーイワンも距離をとってのミドルでこれに良く応戦。結局ここでゴング。
判定は5Rの印象点を奪った石井に3ポイント。

第10試合 バンタム級・5回戦
○菊地 剛介 vs 風神 和昌● (判定 3−0)

同階級の日本チャンピオン・菊地は、
見た目が野生児、「プロゴルファー・猿」を思わせるルックスだ。
でも年齢は21歳。見た目はどう見ても僕より老けていると思うのだが…。
対する風神は17歳、ロングガウンが特攻服。
う〜ん、キックをやる人はヤンキー上がりが多いのかねぇ?

そんな二人の対戦は1R〜3Rまで、外からの打ち合いになる。
お互いに遠距離から左右からのローやミドルをバシバシと当てていく。
それなりに激しい打ち合いなのだが、お互い外から攻めている為に、
選手には申し訳ないが、観ている側としては熱がこもらない。

4R、ここで試合は至近距離からの打撃戦に発展した。
お互いに左右のコンビネーションを打つ事をやめない。
そして両者にクリーンヒットが連発。思わぬ打ち合いになり会場が沸き返る。
5Rになってもこの打ち合いは続く。まさに一進一退の殴り合い。
しかもラスト1分になってから、この打ち合いがさらに激しさを増したからスゴイ。
お互いダウンしてもおかしくないような激しい打ち合い、そしてクリーンヒットの連続。
思わぬ凄まじい試合になったが、最後に足を縺れさせた風神がスリップダウン。これが結構足にきて
いる。
そして、このスリップが明暗を分けたか、判定は全員50−49の僅差で菊地が3ポイント。
いや〜、良い試合だった。風神も良くがんばったと思う。

第11試合 日本フライ級タイトルマッチ・5回戦
○深津 飛成 vs モンチー エシマ● (3R 2分56秒 KO)

深津は肌が真っ黒。よくもこんなに焼けているものだ。
パンフに載っていた写真を見ると、なかなかモテそうな色男。「明るい性格」が売り出そうな。
ちなみに彼は同階級の日本チャンピオン、去年はムエタイのランカーにも勝利している。
対するモンチー、名前はヘンだが日本人。
28歳でキャリア7戦だから、遅いプロデビューだ。
しかし無敗、これって結構凄いと思う。
そしてこの試合は、モンチーの「7戦6勝無敗」という戦跡を買って組まれた、
と思われるタイトルマッチだったが…。

いざ試合が始まると、両者の実力の差は歴然だった。
1Rから深津はローやミドル、パンチのコンビネーションでモンチーを圧倒。
中でもローキックはもの凄く重そうだ。
リーチで勝っているモンチーも左右連打やローで抵抗するも、
いざ接近戦を挑まれると深津の圧倒的な圧力に押されてしまう。
2Rには中盤はフックで、終盤にもストレートでモンチーはダウン。
3R、応援団にも励まされたモンチーはかなり粘ったのだが、深津との実力差はいかんともしがた
い。
ラウンド終盤に出た左右コンビネーションでダウン、そのままKO。

勝った深津は、遺影を持ちながらマイクを握り、
「実は…、僕のコーチが…、タイで交通事故で亡くなっちゃって…、
 本当は…、泣くつもりはなかったんだけど…」
と声を詰まらせながら喋っていたが、一呼吸置いて、
「え〜、サイフは重く、股間は軽く。
 このあと良いところに連れてってくれるそうなので、
 みんなの分まで遊んできま〜す!」だって。
このマイクって結構大人だよなぁ。グッときちゃいましたねぇ。

第12試合 Jrミドル級国際戦・5回戦
○武田 幸三 vs ビッグベン・ノッパラットファーム● (3R 1分4秒 TKO)

僕の近くに座っていた関係者によると、ビッグベンはかなりの強豪らしい。
実際、ラジャダムナン・ウェルター級5位だというのだから、そうなのだろう。

しかし、いざ試合が始まってみると「アラアラ…」な『超合筋』武田のワンサイドゲーム。
武田は1Rからローを中心とした攻めでビックベンを攻めまくる。
ビックベンはノーガードからのパンチやキックで対抗するも、武田のローを食らうと早くも仰け反
る。
2Rも武田はコンビネーションを織り交ぜつつローで攻めつづけ、ビックベンから2度ダウンを奪
う。
こうなると、武田の勝利は動かない。
3R、何の危なげもなくローキックを織り交ぜたコンビネーションで、
さらに3つのダウンを奪った武田の勝利。
相手が弱いのか、武田が強いのか…。
正直、この試合からは推しはかねるなぁ。こりゃ、また観ないとダメだな。

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雑感:
興行時間は4時間で全12試合と中々ボリュームのある興行でした。
KOこそ少なかったものの、やはりヒジありというのは緊張感が増して面白いです。

K−1・J−MAX等で盛りあがる中量級キック界ですが、
K−1ばかりではなく、打倒ムエタイを目指す人々を見るのも良いのではないでしょうか。

…と言っても、東京近郊でないと見る機会が中々ないでしょうが…。

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以上、長文失礼。


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