2002.7/7 シュートボクシングS-CUP 観戦記


(注:久々の観戦記はメチャ長です)

お疲れ様です。
高倉です。

今回はSBの勝負興行、S-CUPを観戦して来ました。

S-CUPとは、立ち技の頂点を決めるべくSBが開催したトーナメントです。
過去、1995年と1997年に開催され、ファンの間で好評を博しました。
そして今回、日本キック中量級ブームに乗って、約5年ぶりにS-CUPが復活します。
この所は地味な興行を打ちつづけたSBにとっては、勝負の興行でしょう。

ルール・・・なのですが、今回は色々なルールが混じっています。

まず、基本となるSBのルールです。
大まかなルールを挙げると、基本的には「K−1」と同じですが、
以下の点が「K−1」と違います。
・投げが有効である(有効な投げはジャッジ時の点数にもなる。後方から投げた方が点が高い)
・肘が有効である…が、今回はヒジなしルールが殆ど。
・立関節が有効である(有効な立関節はジャッジ時の点数にもなる。後方から極めた方が点が高い)
・1Rにつき3ダウンでTKO

ちなみに、S-CUPは上記ルールを元に、
・1試合は3分3R
・1Rにつき2ダウンでTKO
・肘は全面的に禁止
だと思ってください。

また、本日はRINGSマッチと女子総合格闘技も同時に行なわれます。
これらのルールについては、観戦記中に記載します。

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13:30
東急桜木町駅到着。今日は友人・PON君と一緒だ。
本日はSBの大一番、5年ぶりのS-CUP、「S-CUP・2002」の観戦である。

PRIDEで有名なヴァンダレイ・シウバ等が所属するシュート・ボクセの所属選手や、
北の最終兵器、ボブチャンチン率いるボブチャンチン軍団の招聘、
中国・散打協会やRINGS・ネットワークとの提携など、
大手スポンサーがないにも関わらず話題を作るべく色々と努力し、
地道だが着実に固定ファンを獲得してきたSB。
そして今日、その集大成をS-CUPという形で世に問うのだ。

そのS-CUPは、内容が盛り沢山である。

興行の柱となるS-CUPには、K-1・W-MAX優勝者・クラウスの兄弟子や、
DRUKA世界王者、シュート・ボクセ所属選手、ボブチャンチンの刺客など、
名を連ねた8人の選手は、まだ見てないので何ともいえないが、
肩書きだけならいずれ劣らぬ一級品。迎え撃つ日本人勢も、
K-1・J-MAXでは敗れはしたが魔裟斗と死闘を繰り広げた後藤 龍治選手や、
そのキラー・ローで外敵を次々に迎撃し続けた土居 広之選手が出場。
これだけの面子が集まれば、僕でなくとも、この興行を「裏・K-1・W-MAX」と見てしまう筈だ。

そして、話題はS-CUP・トーナメントに留まらない。
同興行のワンマッチ試合には、一夜限りのRINGSの復活、修斗で有名な雷暗 暴選手のSBマッチ、
そしてSMACK GIRLで有名なしなし さとこ選手の総合マッチも組まれている。
もちろん、純正のSBの公式マッチもあり、
そんなこんなでS-CUPの試合数は実に13試合にもなる。

とにかく、このマッチメイクだけでも、
「随分と気合の入った興行だ」と言うのがわかってしまうS-CUP。
今までSBを応援して来た者として、これを観ずに何を観る!?



・・・という割には、チケットはまだ買っていなかったりする。
まずは横浜文化体育館(以後、文体)へと向かう事に。

14:00
文体到着、チケットを購入すべく受付に。

実は、今日のチケットを購入しなかったのには訳がある。
ローソン・チケットでS-CUPのチケットを購入しようとしたところ、
二階席や三階席のチケットとなる4000円席と5000円席は、
もう「売り切れ」になっていたのだ。

これは行った事がある人ならわかると思うのだが、
文体は観戦するなら二階席や三階席で観た方が俄然観やすい。
上の席は、リングとの角度も急過ぎず、非常にリング全体が見渡し易い。
逆に一階席は、主催者が特にひな壇等を作らない為、
前の人が邪魔になって試合が見えない事が多いのだ。

「幾ら観に行っても、試合が見えなければ意味がない。」
そこで僕は、その場では一階席用の席を購入する事をやめて、
当日券に二階席や三階席がある事に賭けたのだ。

そして・・・。
ありましたよ、4000円の席が!
早速購入、やった、こりゃ得したね。

PON君曰く「いいなぁ、僕はチケット代は8000円ですよ・・・」。
ガハハハハ、これぞチケット購入の年季の差なのだ。
まっ、チケット購入の余剰分でメシでも奢るから、そう恨むなよ。

14:15
中華街で会った    女の子
綺麗さ        まるで楊貴妃
かわいいね      パンダより 
声かけたいな      ニーハオ

ちょっとやそっとじゃ 見つからない
頭もいい       毛沢東
やさしいね      西太后
誘ってみようか    飲茶

雲呑 baby 焼売 baby 春巻 all night long
(吾妻光良 & ザ・スウィンギン・バッパーズ 「中華 baby」より)

・・・という訳で、久しぶりの中華街散策。
以前は良く文体観戦ついでに来ていたのだが、
文体で興行を行なっていたRINGSは解散してしまい、
同じく文体興行の多かったPANCRACEは後楽園での興行を中心にしてしまったので、
ここに来る事も少なくなったものだ。

まずはPON君に誘われて関帝廟へ。

あからさまに日本人の足元を見ているとしか思えない、
一本500円もする線香は無視して中に入る。
改めて見ると、中国寺院というのは非常に豪華なつくりだ。
「中で祭られている関羽も、伝説のイメージ通りの姿だな。」
「高倉さん、これは『関聖帝君』って言うんですよ。」
この呼び名も知らんかったが、横にいるのが関平と周倉だとは驚いた。

それにしても、周倉って実在しないんじゃなかったけ・・・?

「関帝廟」・HP
http://www.yokohama-kanteibyo.com/

14:30
いつも通りでスイマセン、すっかり腹が減ったんです。

飯を食うべく、前から目を付けていた店、
関帝廟の隣にある中華料理屋・「興昌」に入る。

ここの売りは「渡り蟹の炒め」。
前からとにかく食いたかった蟹を食うべく、
早速2500円コースを注文する。

出てきたのは、
1 前菜 ( この日は 叉焼 + ネギ )
2 烏賊ゲソの唐揚げ甘酢がけ
3 青菜の炒め物
4 焼売 + 海老の蒸し餃子
5 豚のバラ煮と万頭
6 渡り蟹の炒め
7 麺(蟹に使った餡を絡めて食べる)
8 デザート( この日は杏仁豆腐 )

こう書くと、前菜からなにやら重そうな雰囲気だが、
「前菜」の叉焼は、油が強い割にはしつこさがない。
「烏賊ゲソの唐揚げ甘酢がけ」は、ゲソのコリコリとした食感がとても良く、。
「青菜の炒め物」は、ほんのり薄味の塩気が前の2つの料理の味の流れを崩さず、
「焼売 + 海老の蒸し餃子」は、豚肉たっぷりの焼売にプリプリした海老が・・・、

・・・。

まあ、これは別にグルメのメーリングリストという訳ではないし、
僕も全然グルメな訳ではないので(旨い店に詳しいだけ)、
これ以上は書きませんが、非常に言いたいことがあります。

「食え!いいから食え!特に最後の『麺』は絶対に食え!」

「興昌」・HP
http://www.spiceroad.ne.jp/miyuki/

15:30
大変満足して食事を終える。

さて、今日はここでPON君とお別れ。
実は、彼は同じ横浜の赤レンガ倉庫で行われる、
宇野 薫選手主催の「THE CONTENDERS」を観戦する為に横浜に来たのだった。
赤レンガと文体は中華街を挟んで反対側にある。
お互い、目的地に向かいそれぞれの道を歩き始める。

確かに、今回のCONTENDERSは注目カードが目白押しだったからなぁ、
そっちに引かれる気持ちもわかるよ。
・・・って言うか、今日は両国国技館でZERO-ONEの興行も行われ、
後楽園では全日本プロレスが。
2002年7月7日は、何気に中小団体の興行戦争になる一日だったのだ。

全部、観たいよなぁ・・・。

15:55
文体到着、会場入り。

安く上がった会場費だけでは、SBに対して申し訳ない。
パンフレットを購入、今日は何と2000円。
紙質も内容もPRIDEやK-1のパンフと比べても見劣りしない立派なモノだった。
こういう所にも、今日の興行に賭けるSBの意気込みが見える。

16:00
試合会場に入る、驚いた。

リングの周りにK-1ばりの照明機材用の櫓が設置され、
花道も新日本プロレスのドーム興行ばりの豪華な作り。
その横には、持ち込みの大型スクリーンが2個も置かれて、
1階フロア内には、PANCRACEやRINGSも設置しないような数の椅子が。

凄いなぁ。会場だけなら、こりゃPRIDEやK-1に全然負けてないよ。

・・・でも、客入りは思っていたより伸びていない様子。
あれ?実はチケット、あんまり売れてないの?

16:30
今日は開始は16:00予定なのに、一向に始まる気配がない。
おそらく、当日券が伸びに伸びまくったのであろう。
結局、開会式は30分遅れになってしまった。

・・・とは言え、SBが勝負を賭けたこの興行も、
残念ながら満員とは言い難い入りとなった。
確かに一階席は、他の興行の倍以上の席が準備されていた為、
通常は満員になるような人数が入ったところで満員の入りにはならなかっただろうが、
全体を見渡しても、恐らくは五割から、贔屓目に見ても六割の入り。

「やはり、いかにメンバーが豪華絢爛でも、
 TVのPUSHがないと客入りも伸びないものなんだなぁ・・・。」

非常に残念な気持ちに包まれて観戦開始。

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◎入場式
今日出場する全選手による入場式。
ワンマッチ出場選手は舞台に留まり、S-CUP出場選手は花道を歩いてリング内へ。

出場選手がそのシステムを理解していない様子。
あっちをウロウロ、こっちへウロウロする選手が結構いた。
こういうのは、リハーサルをやっていた方がいいですよ、SB関係者様。

全選手入場後、国家吹奏。
歌い手さんは・・・、何故かコギャル風のタレントさん2人。
なんともか細い、気の抜ける「君が代」だった。
矢野顕子が歌ったほうが、まだ気合が入っていたのではないか?
ま、着ていた和服がいい感じだったのでいいけどね。

ここで本日のスペシャル・ゲストとして、高田延彦選手が登場。
シーザー武士氏に花束の贈呈。会場からは「高田〜っ!!」の声が飛び交う。
なんだかんだで人気者なんだよね、高田って。

S-CUP2002開催にあたって、代表選手である土井が挨拶。

「本日はご来場、誠にありがとうございます!

 選手一同、S-CUPを盛り上げる為に頑張ります。
 今日は応援の程、よろしくお願い致します!」

バアアアアアアァァァァァァーーーーーーンッ!!

ここで、照明櫓の火薬が大爆発!
そのあまりの音の大きさに、会場は騒然となる。
心臓に悪いなぁ、もう。

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第1試合 オープニングマッチ ミックスドルール 5分3R
△しなし さとこ(149cm:44kg:日本/AACC)
△吉住 絹代(150cm:50kg:日本/東京元気大学 格闘技部GGG2nd)
[判定 1−0]

S−CUPのファーストマッチは、このところは土井や後藤と一緒に練習しているしなしの登場。
小さい体ながらも、彼女はサンボ世界選手権・第3位の実力を誇り、
SMACK GIRLでも看板選手として人気を博している選手だ。
今日は二階席に大勢の応援団が駆けつけているぞ。
・・・ウルサイなぁ、もう少し静かにして欲しいねぇ。

対する吉住は、K-1・J-MAXでは小比類巻をキリキリ舞いさせた、
元PANCRACE・GRABAKAの須藤が主催し、
次回UFC(UFC-38)挑戦を理由にあっという間に抜けてしまった「東京元気大学」所属だ。
入場時には、セコンドが大学旗(?)を大きく振って入場してきた。
・・・って言うか、いつの間に元気大学は2ndになったの?

さて、今日の試合ルールはSMACK GIRLのルールとはちと違う。
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・グラウンドによる一切の顔面への打撃を禁止。
・ヒジ、ヒザは全面的に禁止。
・女子総合格闘技としては珍しい、グラウンド時間無制限、但し膠着ブレイクあり。
・打撃によるダウンの概念は存在するが、関節によるロープエスケープ等はない。
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どちらかというと、SMACKのライバル団体であるAXが最近採用したルールに近いだろう。

「コォーン・・・」

なんだぁ、この気の抜けるゴングの音は?
蚊の鳴くような音に拍子抜けしつつ試合は開始。

1R、しなしは首投げからグラウンドで吉住をコントロール。
上四方、マウント、サイドとガンガンポジションを移行する。
ところが、まかりなりとも須藤と練習していたせいか、吉住も中々グラウンドが巧い。
下から足を取って体制を入れ替えると、逆十字を極めにかかる。
これを返したしなしは、再び上のポジションになり逆十字のお返し。
だが、十字に行く瞬間に半身を起こして防御する吉住は、これをしのぐ。
両者スタンド状態になり、試合は仕切りなおし。

しなし、吉住のタックルを潰してパンチを入れつつ相手に組み付き、
上からガブッてテイクダウン。サイド、上四方とポジションを奪いつつ、
何度か逆十字を狙うも、またしても吉住の「半身起こし防御方」に逃げられる。
崩れてスタンド、しなしがパンチを入れたところで、「コォーン・・・」と気の抜けたゴング。

しなし、今日は思わぬ苦戦を強いられているなぁ。
そして、この情けないゴングの音はなんとかならんかね?

2R、今度は吉住の方がパンチを入れるも、しなしは組み付き、綺麗な首投げ。
これには、応援団が、
「技ありだ。」
「いや、一本だ!」
「いや、技ありだろっ!」
「一本って言ってんだろっ!」
と言い争う。やかましい。

しなし、またしてもグラウンドでスイスイとポジション移行。
サイド、マウント、またサイドと奪って、再三の逆十字。
そして、またまたこれを「半身起こし防御方」で返してしまう吉住。
そのままバックを奪い、スリーパーで逆襲だ。
しなしは必死に逃げるが吉住は逃がさない。
この体制がかなり長い間続いたが、結局、吉住は極めきれずに膠着ブレイク。
しなしは九死に一生を得た。それにしても、吉住、中々やるじゃない。

しなし、組み付いた後に足を刈ってテイクダウン、袈裟固めの体制に入るが、
抜けられた上にバック・マウントを取られる。何とか逃れてスタンドになったが、
次に組み付いての投げは失敗、またしてもバック・マウントを奪われた。
最後に維持のサイド・ポジションを奪ったものの、試合終了。

判定は1−0でドロー。しなしは一本勝ちで、
SMACK GIRLを始めとした女子総合格闘技の存在をアピールしたかったであろうに。
この結果は残念だ。まあ、それだけ吉住が巧かったって事か。

第2試合 SB公式戦エキスパートルール 3分5R
○ネイサン コーベット(185cm:80kg:オーストラリア/IAMTFライトヘビー級欧州王者)
●YU IKEDA(190cm:79kg:日本/湘南ジム/SB日本ヘビー級5位)
[2R 1分7秒 KO]

長身のIKEDAは、いつもならフリッカーの構えから素早いパンチで距離をとりつつ、
開いた距離から必殺の右ミドルとローキックを叩き込むのが彼のスタイルだが、
今日の相手は決して小さくない選手。いつもの戦法は通用しないぞ、どうする?

1R、攻めていくのはネイサンの方だ。
力強いミドルキックを中心に、距離がつまればパンチで攻める。
IKEDAもパンチで応戦するも、いつもの戦法が通用せず攻め込まれるシーンが目立つ。
ラウンド終盤には、ネイサンのミドルキックがもろに決まり、うめくIKEDAにストレートのダメ押
し。
このコンビネーションでIKEDAはダウン。ここは何とか立ち上がってネイサンに向かっていったが、
ネイサンは容赦のないフックやストレートでIKEDAを返り撃つ。

2R、ネイサンには余裕が見られる、裏拳を出した。これをガードしたIKEDAだったが、
またしてもネイサンのミドルキックに動きを止められ、ストレートを食らってダウン。
立ち上がったが、もはやIKEDAのダメージは大きい。
最後は距離を詰められてのパンチ連打に沈んだ。

IKEDAはまだ若い。この敗戦をバネに、さらなる強さを手に入れて欲しい。
・・・もっとも、今日の負け方はフォローのしようもないが。

第3試合 S-CUP2002 一回戦 第一試合 3分3R
○ダニエル ドーソン(178cm:70kg:オーストラリア/ブンチュウジム/WMTA世界Sウェルター級王
者)
●後藤 龍治(173cm:70kg:日本/STEARTH/SB日本Sミドル級1位)
[判定 3−0]

ここからはS-CUPの一回戦。
K-1・J-MAXでの、親友・魔裟斗との一戦も記憶に新しい後藤の登場だ。
後藤はドラゴンボールの胴着のようなデザインの黒い衣装を着ての入場。
この男には、泥臭いが華がある。ここは勝利を期待したいが、
今日のトーナメントは一回戦から強豪だ。

対戦相手のダニエル ドーソンは、その実力から優勝候補の一人と数えられている。
過去にはSBのエースたる緒方を敗り、さらにはK-1・W-MAXにも出場した小比類巻をも倒している。
彼は特に力が強い訳ではなく、必殺技があるわけでもない。ただ、ガードは固く、攻めも手堅い。
「飾りのない強さ」、それすなわち、基本に忠実な者のみが持つ「本物の強さ」。

1R、後藤は土井がダニエルを攻略した時のように、ローキックを主体に攻め立てる。
単発のローキック、連発のローキック、パンチからのコンビネーションのローキック。
対するダニエルはパンチ主体、こちらもローキックを織り交ぜつつ、組み付けば投げを放つ。
序盤から両者は打ち合うが、ラウンド中盤〜終盤になると、
ダニエルのコンパクトなパンチ連打が後藤を捕らえる。
後藤は打撃を打ち返すも、体力を少しずつ奪われて行く。

2R、後藤に対してダニエルはストレートパンチで攻め立て、
そのうちの一発がクリーンヒット。これで後藤は手痛いダウン。
何とか立ち上がったものの、試合再開後もダニエルの容赦ないラッシュが襲う。
しかし後藤はこれにキッチリと応戦、しかも逆にパンチの何発かがダニエルの顔を捕らえている。
ダウン時のダメージは思ったよりダメージは小さいようだ。
ここからは、再び両者休まずの打撃戦に。
ガンガンやりあうものの、やはりダニエルのコンパクトなパンチラッシュが来ると、
後藤はどうしても食らってしまう。

3R、後藤は再びローキックを主軸にダニエルを攻め立て、
下に注意を逸らしておいてのストレートがダニエルの顔面を捕らえた!
明らかにダメージの大きそうなダニエルに対して、今度は後藤がパンチのラッシュで攻め立てる。
試合終盤の攻守逆転劇に会場が沸き返ったが、フラついてもダニエルは絶対にダウンはしない。
後藤はさらにローキックで攻め立てるが、ダニエルも意地の反撃。
やがて攻める後藤にも疲れが見え始める。それでも両者は最後まで打ち合った。

判定は2Rにダウンを奪ったダニエルが3ポイントで勝利。
しかしながら、これだけの強豪相手に、後藤は良くやったのではないだろうか?

それにしても、こんな消耗戦をしているというのに、終了のゴングの音が情けない。
なんとなく、観戦する者の気分を削がれてしまうなぁ・・・。

第4試合 S-CUP2002 一回戦 第二試合 3分3R
○郭 裕蒿[ジョン イーゴ](180cm:70kg:中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者)
●ユーリ グディマ(174cm:70kg:ロシア/ボブチャンチン軍団/DRAKA世界ミドル級王者)
[2R 1分8秒 TKO]

S-CUP、一回戦の第二試合は「未知の強豪同士による対戦」。
まあ、言い方を替えれば「どこの馬の骨ともわからぬ者同士の対戦」とも言えるが。

散打協会が満を持して送ってきたジョンではあるが、
これまでのK-1での散打選手の事を考えると全く期待が出来ない。
確かに、SBは散打に限りなくルールが近いとはいえ、
またいつもの散打選手と同じく、何の印象も残せぬまま消えていくのがオチか。

対するユーリ、前回のSB興行でボブチャンチン軍団が送り込んできたアーテム・スケグロフは、
敗れたとは言え、実力者・土井と互角の勝負を演じる程の強豪だった。
したがって、今回送り込んで来たこの選手も、
同じ位、いや、それ以上の強豪である事は十分期待できる。

しかし・・・。
両者への僕の予想は、全然、本当に全然違っていた、いい意味で。

「スパルタンX」と共に入場してきたジョンは、思わぬ伏兵にして強豪だったのだ!

1Rから、ジョンの散打殺法はアクセル全開!
その均整の取れた長身から、物凄く前に出るステップ・イン・サイドキックが出ると、
それだけで観客は騒然!これをヒットさせひるんだユーリに対して、
やや大振りながら見栄えのよいパンチのラッシュで追い討ちをかけると、
客席からは、思わぬ「掘り出し物」だったジョンを支持する歓声が。
しかし、凄いのはここからだ!ユーリのパンチをダッキングでかわしたジョンは、
そのままユーリに組み付き、次の瞬間、高々と抱え上げて、何と場外へ放り出してしまう!
エプロン際でユーリがスクッと立ち上がれたから、大事には至らなかったが、
この物凄いシーン・・・、観客はすっかりジョンの虜になってしまったぞ!もちろん、僕もだ!

すっかり試合のペースを握ったジョン。
ここからステップ・インからのサイドキックやトラースキック、前蹴りとユーリを一方的に攻めて、
思いのほか鋭いローキック連打でユーリからダウンを奪うと、
再び前から組み付き、腰から高々と抱えあげた後に思いっきりマットに叩きつけた!
この鮮やかな投げにはスローポイントが1点加算。
1RのKOこそ逃したが、ジョンの勝ちが動かないのは誰の目から見ても明らかだった。
今まで見た事のないタイプの選手の出現に、客席からは喜びの歓声が上がる。

2R、相変わらずリーチの長いステップ・イン・サイドキックから飛び込んでいったジョンは、
大振りなパンチの猛連打!この猛攻に対してユーリは何も出来ず、ストレートの連打が顔面を直撃。
ユーリは全く立つ事が出来ず試合終了、観客はジョンを支持する大歓声でこれに答える。

うおおおぉぉぉ、中国四千年の歴史を始めて実力で実践する選手が出てきたぞ!
見栄えもいいし、これは間違いなく「ニュースター」の誕生だ!

第5試合 S-CUP2002 一回戦 第三試合 3分3R
○アンディ サワー(174cm:70kg:オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者)
●マヌエル フォンセカ(174cm:70kg:ブラジル/シュートボクセ/ストームムエタイ王者)
[2R 2分58秒 KO]

このカードは、お互い「未だ見ぬ強豪」でありながら、
1回戦の中でも屈指の好カードと見られていた。

サワーはK-1・W-MAX優勝者であるアルバート クラウス選手の兄弟子にあたる人物。
若干19歳ながら、その戦跡は88戦85勝という驚異的なもの。
サワーやクラウスが所属するリンホージムのジョン デリング会長も、
「トータルではサワーの方がクラウスより上だ」と公言。
「未知の強豪」としては、申し分の無い肩書きだ。
また、彼には今回どうしても優勝しなくてはならない理由もあった。
サワーにムエタイの道を勧めた父親が、現在、脳溢血で闘病中なのだ。
入院費や治療費を稼ぐためにも、今日は何がなんでも優勝しなくてはならない。
ちなみに入場曲はGuns N' Rosesの「You Could Be Mine」。
懐かしい!もう10年も前かね、この曲が流行ったのは。

しかし、一回戦の相手であるフォンセカも、肩書きだけなら一筋縄ではいかない。
PRIDEでお馴染みヴァンダレイ シウバの所属するシュート・ボクセ・アカデミーは、
昨年11月にSBに選手を3人ほど送りこんだ。しかし、試合結果は全敗。
後藤には、試合後に「シュート・ボクセなんてこの程度!最強はSBなんだよ!」と言われる始末。
これを聞いた同アカデミーのフジマール会長は、
「今回、連れてきたのはBクラスの選手。今度は強いのを連れてくる!」と豪語。
そして、今回S-CUPに送りこんだのがフォンセカなのだ。
日本格闘技界を席巻するシュート・ボクセ・アカデミー。
昨年11月の屈辱を晴らし、SBにもシュート・ボクセの爪痕を残せるか?
ちなみに入場曲は「SAND STORM」・・・ではなかった。残念。

1R、フォンセカはリーチの長いミドルキックで専制。
体は小さく構えて、蹴り方はムエタイスタイル。
おお、これはまさにシュート・ボクセ・スタイルだ。
距離を取って戦おうとするフォンセカは、離れてからのミドルキック及びローキックで牽制する。

対してサワーは、ストレートからミドルキック、左右パンチのコンビネーションで応戦、連携が早
い。
接近してから、これらのコンビネーションでフォンセカを嫌がらせる。
最初は互角の闘いをしていたが、キックが単発に終わってしまうフォンセカに対して、
サワーの近距離コンビネーションは、徐々にフォンセカを捕らえ始めていた。
しかしながらフォンセカもパンチで応戦、ここまではほぼ互角か?

2Rも両者は同じような打ち合いだったが、
ラウンド中盤、サワーの左右パンチラッシュ&ヒザがフォンセカの動きを止めた。
ここからサワーは、さらに左右パンチの猛ラッシュ。
しかしラッシュと言ってもそのパンチは大振なものではなく、
非常に無駄のないコンパクトなもの。
そして、そのパンチはフォンセカの顔面や体に確実にヒットしている。
この攻撃に耐えられずフォンセカはダウン。
立ち上がったものの、もはや試合の流れは変わることはなかった。
ラウンド終了間際のサワーのコンパクト・ラッシュでフォンセカは2度目のダウン、試合終了。

サワーのパンチの技術は素人目に見ても中々凄い。
ジョンのような目立った強さはないけど、これまた強豪だな。

第6試合 S-CUP2002 一回戦 第四試合 3分3R
○土井 広之(173cm:70kg:日本/シーザージム/SB世界ウェルター級王者)
●タリック ベンフキー(170cm:70kg:フランス/オートテンション/WPKA世界Sウェルター級王者)
[延長判定 3−0]

キラーロー・土井の出陣だ。唯一のSB代表として(後藤の所属団体は純SB団体ではない)、
後藤が敗れた今、日本代表として、今日は絶対に負けられない。
昨年11月には、同トーナメントにも出場している強豪・ダニエル ドーソンを敗り、
今年3月には、ボブチャンチン軍団の刺客・アーテム スケグロフを、激闘の末、勝利をもぎ取る。
そして、満を持してのS-CUP出陣。彼に掛かる期待の大きさは、観客の大歓声と正比例している。

しかし。土井の世界制覇は、そう簡単には行くものではなかった。
何故なら、サバットの世界王者でもあるベンフキーもまた、このトーナメントの伏兵だったのだ!

1R、まずはベンフキーがローキックを放ったが、
これが重くて力強い。バシンという乾いた音が館内に響く。
これに対して土井も、得意の内腿を蹴るキラーローを打つが、
力の強さなら明らかにベンフキーが上だ。
さらにミドルキック、そしてパンチを放つのだが、
そのどれもがローキックに負けない力強さ。
土井はこれらを食らいながらも、ひたむきにキラーローを打ち続ける。

2R、ベンフキーのストレートが土井の顔面を捉えた。
これでグラついた土井に対して、ベンフキーは重い打撃で猛ラッシュを掛けてくる。
しかも、その表情には明らかな余裕が見える。
土井も相変わらずキラーローを放つが、それを上回る勢いのベンフキーのパンチラッシュが襲う。
メモを取る手が止まり、気がつけば僕も大声を上げて土井に声援を送っている。
2Rはこの攻防に終始。なんとか凌いだ土井ではあるものの、
このラウンドは完全にポイントを奪われたであろう。

3R、お互いにローキックの蹴り合うと、
パワーに勝るベンフキーのローキックに土井の体が流される。
ベンフキーはさらにパン連打で土井を追い立てていく。

もうダメか・・・と思っていたら、
ここで土井の逆転の右ストレートがベンフキーにクリーンヒット。
ぐら付くベンフキーに対して、土井はキラーローやパンチの連打で攻め立てる。
客席からはいけいけ土井の大歓声が起こるが、
ベンフキーもきっちり反撃して来て、土井に決定打を許さない。
結局、このまま試合終了。土井、万事休す、か。

・・・と思ったら、判定は1−1のドロー。大会ルールにより、延長戦に突入した。
ややホームタウンデシジョンっぽいが、ここは素直にチャンスが舞い込んだ事を喜ぼう。

延長R、ようやく来たぞ!土井のキラーローがベンフキーの動きを止め始めたのだ。
ここからは土井は一気にベンフキーを攻め立てる、パンチのラッシュを浴びせ掛け、
接近してからは、鮮やかな首投げを決めた!これで土井に貴重な1Pが加算される。
しかしながらベンフキーも重い打撃で反撃、最後はお互いフラフラになっての打ち合い。
なれど、キラーローで動きを封じられたベンフキーは、もはや棒立ち状態だった。

延長判定、投げによる1Pが効いて、土井が辛勝を収めたが、
3分3R制は、キラーローの効果が出難という大きな課題が残った一戦。
次の相手は、強豪・アンディ サワー。果たして土井は勝てるのだろうか・・・。

それにしても・・・、ベンフキーも強かった。
S-CUPは、つくづくにいい選手がそろったぞ。

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◎「KISS B」って何?

S-CUP一回戦はこれで終了。
ここで突然、フードで身を包み、ボクシンググローブで顔を隠した謎の集団がリングを占拠。

ここでリング・アナウンサーのMC。
「今日ここに、シュート・ボクシングを愛してやまない十一人の女性が、CDデビューします。
 その名は、『KISS B』!歌うのは『You are the Champion』!」

WHAT!?「シュート・ボクシングを愛してやまない」!?

・・・。

この世の中には、半端でなく濃い女性が十人もいるんですなぁ・・・。

どうでもいいが、随分簡単な振り付けの曲だな。
覚えちゃったよ、一緒に踊っちゃったよ。

まあ、こういう余興にブーイングを飛ばさない今日の客はいい客だ。
それにしても、先日のWEW旗揚げ興行の「板ちょこ」といい、
最近はこういうのが流行なのかね?

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第7試合 SB公式戦フレッシュマンクラスルール 3分5R
○阿部 勝(172cm:70kg:日本/クロスポイント)
●雷暗 暴(165cm:70kg:日本/フリー/修斗ウェルター級2位)
[判定 3−0]

ここからはSBのワンマッチが2試合。

雷暗 暴(ライアン ボウ)は、修斗の現役ランカー。
最近は打撃のレベル向上の為にシーザージムに通っているらしい。
修斗での戦跡は輝かしく、現・修斗ウェルター級王者の五味隆典をヒザで病院送りにしている。
しかしながら、SBはこれがデビュー戦。
「フレッシュマンクラスルール」(肘なし、サポータなしの膝なし)によるSB挑戦だ。

対戦相手の阿部については、僕は詳しいことは知らない。
ただ、柔道は初段、空手はトーナメントでの優勝経験を持っている。
今年3月にはムエタイ選手も撃破しているらしい。
まあ、ここは試合でジックリと実力を見てみますか。

1R、両者向かい合って距離を取る。
阿部が蹴りを出すと、雷暗はカウンターのパンチを繰り出す。
ここから試合は打ち合いになるが、やはりこの競技では打撃経験のある阿部が上。
ミドルキック、ストレート、ハイキックと次々に繰り出し、
さらにラッシュをかけると、雷暗は防戦一方に。

2R、阿部はミドルキックから組み付いてのヒザで攻めるが、
雷暗は反撃、突進してのパンチラッシュ。
ここから雷暗は、何か吹っ切れたように突進を繰り返す。
何度も何度もラッシュをかける雷暗に、
練習仲間や友達と思われる応援団による歓声が起こる。

しかし阿部は、この流れを断ち切るかのような、目の醒めるハイキック一閃!
これをもろにテンプルで受けた雷暗は、よろけるようにしてダウン。
何とか立ち上がったものの、完全に足に来ている。
レフリーによっては試合を止めていたかもしれないが、
ここは試合続行、そして直ぐにゴング。雷暗、本当に大丈夫か?

3R、阿部は2Rのダメージが癒えない雷暗をさらにパンチで攻め立てるも、
雷暗はこれを返して投げを放つ。そして、再びパンチラッシュで突進していく。
そしてこのラッシュの内の何発かが阿部にヒット、阿部にもダメージの色が見える。
だが阿部もラッシュを掛けていき、お互い大味なラッシュの掛け合いになった。
終盤に差し掛かると、雷暗が徐々にプレッシャーを掛けていたが、
「試合の流れが変わるぞ!」と思ったところで試合は終了。

判定は、2Rにダウンによる2Pを奪っている阿部の勝利。
しかし、おそらくあと1Rあれば、勝敗は逆転していたであろう。
雷暗はこれにめげずに、またSBに挑戦して欲しい。

第8試合 SB公式戦エキスパートクラスルール 3分5R
○宍戸 大樹(174cm:65kg:日本/シーザージム/SB日本Sライト級チャンピオン)
●ロナルド ウルフス(175cm:64kg:オランダ/リンホージム/WPKLライト級ヨーロッパ王者)
[1R  2分24秒 TKO]

会場内に、ジャッキー・チェンが歌う「カンフマスター・酔拳」のテーマが流れたら、
それはSB日本Sライト級チャンピオン・宍戸の出番だ。
ここ最近は連勝街道を爆進中の宍戸、
今日の相手はクラウスやサワーが所属するリンホージムからの刺客。
気は抜けないが、まあ、宍戸はやってくれるでしょう!

試合開始、ロナウドは序盤からラッシュを掛けてくるが、
こういう相手を冷静に対処出来るのがこの人の強さ。
向かってくる相手のパンチを裁き、きっちりミドルキックとローキックでお返ししていく。
さらにはミドルキックとストレートによるコンビネーション、
そして接近してヒザを出すと、これがクリーンヒットしてロナウドは早くもダウンだ。
立ち上がってくるロナウドだったが、宍戸はこれを逃がさない。
さらにラッシュで猛攻を掛け、結局、立て続けに3ダウンを奪ってしまった。

思えば、今日は日本人がスッキリ勝利するのはこれが初めて。
客席からは、「待ってました!」と言わんばかりの歓声が起こる。

いや〜、相変わらず土井は強いねぇ。
これなら、体重上げて、S-CUPに参戦しても良かったんじゃないのかな?

第9試合 S-CUP2002 準決勝 第一試合 3分3R
○郭 裕蒿[ジョン イーゴ](180cm:70kg:中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者)
●ダニエル・ドーソン(178cm:70kg:オーストラリア/ブンチュウジム/WMTA世界Sウェルター級王
者)
[1R 1分4秒 TKO]

ここからはS-CUPの準決勝が2試合。

ジョンには、前の試合で散打殺法に魅了された客席から大歓声が起こる。
これに気を良くしたジョンは客席にアピールしつつ入場。
入場曲は「スパルタンX」から、「ポリス・ストーリー・香港国際警察」の挿入歌に変わっていた。
これには、客席からはその入場曲のセンスに対して動揺の空気が流れる。
しかしながら、その相手は強豪・ダニエル ドーソン。
先ほどのジョンの試合がフロックか本物かは、この男とやれば自ずと見えてくる。

試合開始、ダニエルは序盤からパンチを打つが、ジョンはスーッっと接近して投げを打つ。
そして、ステップインからのトラースキックを挟んで・・・。

ローキック、一閃!

この一撃に、あのダニエルが足元からダウンしている。
その倒れ方は、明らかに脚に何らかの異変が起きた倒れ方だ。
どうやら、この一撃でダニエルの脚の腱は切れてしまったらしい。
当然の事ながら、もう立ち上がる意思はない。
苦悶の表情を浮かべて、必死に脚を庇うダニエル。

あの土井ですら、5Rをフルに使って攻略したダニエルの脚。
あれだけローを打たれながらも、それでも前に出てくるダニエルの脚。
それが、たった一発のローキックで崩れるとは・・・。

大歓声の中、気を良くして退場していくジョン。
この男の実力、本物だ。

第10試合 S-CUP2002 準決勝 第二試合 3分3R
○アンディ サワー(174cm:70kg:オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者)
●土井 広之(173cm:70kg:日本/シーザージム/SB世界ウェルター級王者)
[1R 59秒 KO]

準決勝一回戦の興奮も冷めぬまま、キラーロー・土井の再出陣。
しかしながら相手は、これまた本物の実力の持ち主・サワー。
多分、土井が一回戦で負ったダメージは抜けきってはいないだろう。
土井は正念場を迎えた。それが素人にもわかるからこそ、彼への声援は大きくなる。

試合開始、土井はここでもキラーローを放つが、サワーは力強いミドルキックから、
コンパクト・ラッシュで土井を攻め立てる。土井は早くも防戦一方に。
客席からは、土井は駆り立てるべく声援が起こる。

しかしサワーは土井をコーナー際へ追い込み、更なるパンチラッシュ。
何も抵抗できない土井が、段々とうずくまって行く・・・。

ダウン、もう、立てない。

呆気ない結末だったが、退場していく土井は足を引きずっていた。
恐らくは、前の試合かこの試合で負傷したのだろう。
日本人によるキック中量級世界制覇の夢は、この瞬間、またしても消えてしまった。

それにしても、サワーも強い。

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10分の休憩の後、お馴染み「♪シィーザァー、シィーザァー」のテーマと共に、
SB創始・シーザー武士が登場。会場に挨拶。

「5年振りにS-CUPを開けた事を・・・、本当に・・・嬉しく思います。」

相変わらず、声がうわずってます。

「今日は多数のご来場・・・、誠にありがとうございます!」

おおっ、今日はいつもの「泣きのシーザー」じゃないぞ!
その力強い挨拶に、会場からは拍手が。
 
「さて、S-CUPも残り3試合となりました。ラスト3試合の内、2試合をRINGSが開きます。
ここで、わが盟友である、前田日明をここに呼んでも宜しいでしょうかっ!?」

沸き返る会場、「キャプチャード」が会場に流れ始め、熱い声援の中、前田日明CEOが登場。

「お久しぶりでございます。
 現在、RINGSは第二部に向けて、着々と進行中です。
 SB共々、RINGSを宜しくお願いします!」

日明兄さんから「RINGS・第二部」の言葉が出てきたのは久しぶりだな。
待ってるぞ、日明兄さん!

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そして挨拶が終わると、会場にはRINGSのオープニング・セレモニー時に使用されるBGMが。
この曲にのって、古田リングアナがRINGS・KOKルールについて説明していく。

これは「ここからはRINGS」っていう気分転換には最高の演出だったように思える。
本当に『一夜限りのRINGS復活』っていう実感が沸いてくるよ。

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RINGSルールのおさらい。一般的な総合格闘技とは、この辺が違います。
・4ポイント(四つん這い)状態の選手への、ヒザ攻撃は反則。
・基本的には1Rは5分間、3R制。
・膠着ブレイクが異常に早い。
・グラウンドの顔面打撃は反則。

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第11試合 リングスKOKルール 5分3R
○ヴォルク アターエフ(185cm:100kg:ロシア/リングス・ロシア)
●クリス ブランコ(178cm:104kg:カナダ/カナディアン柔術王者)
[1R 2分31秒 ネックロック]

ここからは、RINGS・KOKルールの試合が2試合。

「リングス・ロシア」の秘密兵器・アターエフの登場。
リングス・ネットワーク崩壊にあたり、
リングス・ロシアは「ロシアン・トップ・チーム」と名を変えてPRIDE21に登場。
エース格のエメリヤーエンコ・ヒョードルは大巨人セーム・シュルトと対戦、
勝利を収める事でその実力を満天下に知らしめた。

しかし「リングス・ロシア」には、もう一人のエース格が存在した。それが、このアターエフ。
腕っ節の強さの余り、対戦相手の頭蓋骨を打ち砕いたというエピソードを持つ男。
今日の対戦相手は、かねてから日本VT界への進出を狙っていたという柔術王者、ブランコだ。

アターエフの入場、しかしセコンドはたったの一人。
選手紹介時も「リングス・ロシア」として紹介され、
「ロシアン・トップ・チーム」の一言はついぞ聞けなかった。
日明兄さんの手前、あえてその単語は使わなかったのかもしれないが、
ひょっとしたら、アターエフは「ロシアン・トップ・チーム」入りはしてないのかも。

試合開始、ブランコはタックルで組み付き、
投げからテイクダウン、インサイド・ガードへ移行。
しかしながら、ここで何故かブレイク。
理由はわからないが、何か反則らしい事があったらしい。
試合再開、ブランコは再びタックルに行くが、
これを返したアターエフがパンチに行くとその迫力に会場からどよめきが。

スタンド状態からアターエフが右ストレートをヒットさせ、
組み付いてブランコをコーナーへ押し込む。
コーナー際で投げを打ち、ブランコを寝かせて猪木アリ状態。
両者、上から下からの打撃を打ったが、
この状態でのブレイクが早いのは、さすがKOKルールだ。
アターエフは再びド迫力の右ストレート、食らいながらもブランコはタックルに来るが、
これを返してテイクダウンを奪ったアターエフはネックロックへ。
これでブランコがあっさりタップ。気がつけばアターエフ、圧勝である。

あ〜っ、対戦相手はかませ犬だったかぁ。
当初の予定通りカーロス・バヘットなら、
もっと気分も盛り上がって見れたんだろうけどなぁ・・・。
それにしても、ブレイク時に古田アナの「ブレイク」の声のかからないRINGSは、
ちょっと拍子抜けするなぁ。

第12試合 リングスKOKルール 5分3R
△緒形 健一(172cm:70kg:日本/シーザージム/SB日本Sウェルター級チャンピオン)
△ナーコウ スパイン(181cm:74kg:オーストラリア/ブンチュウジム/SPARTANミドル級王者)
[判定 0−0]

本日、最後の日本人出場選手。SBのエースである緒形の登場だ。
EUROPEの「FINAL COUNTDOWN」が掛かると、会場は大歓声で緒形を迎える。
去年10月、緒形はRINGSに参戦。KOKルールに挑んだが、結果は秒殺負け。
しかも、雪辱の機会を望む間もなく、RINGSは崩壊。
「あれ以来、正直、何をしても身が入らない所があるんです。」、
という緒形に、この日、チャンスが舞い込んだ。
本来なら、S-CUPの出場をしていてもおかしくない緒形だが、彼は今日、KOKルールに挑む。
しかし、対戦相手のスパインも簡単な選手ではない。
ムエタイでは14戦11勝、総合では10戦9勝と、実力は決して侮れない。
緒形は、この難敵に勝利し、KOKで失ったプライドを取り戻せるのか?

1R、スパインは組み付き、足を引っ掛けてテイクダウン。
インサイド・ガードからポジションを優位にすべく体を動かすも、
緒形はここで体制を反転させ上になる。
おおっ、緒形、いいじゃない。
でも、スパインも下から腕を取ってる、
油断は禁物・・・、よし、抜いたぞ。

ボディにパンチを落とす緒形、
いやがるスパインはクロス・ガードで密着し、このまま体制をさらに反転。
クロスガードのまま反転したのだから、その体制はマウントだ!
緒形、大ピンチ・・・、おおっ、さらに体制は反転だ!
しかもインサイド・ガードになった緒形は、そこから一度はサイドを奪う。
上手いじゃない、成長しているじゃない、緒形!
しかしスパインは再度体制をガード・ポジションに戻す。
緒形はボディへパンチを落とすも、ここは膠着ブレイク。
その後、緒形はスパインに組み付き、
ロープ際に押し込んでインサイド・ガードを奪うも、ここはラウンド終了。
いやいや緒形、いい感じだねぇ。

2R、スパインは打撃から組み付きコーナー際へ押し込む。
が、ここで不意にスタンドでバックを奪った緒形は、そのままスタンド・スリーパーへ。
おお、何だかSBっぽい絞め技だな。これには会場は決めろ決めろ緒形コールで応援する。
しかしこれは体制崩れて両者グラウンド、今度は緒形、下からの三角締めを極めにかかる、
っていうか、見た目だけならもうガッチリ極まっているぞ!

しかしながら、これもスパインにはずされてしまう。
それどころか、今度はスパインがバックを奪ってのスリーパーを極めに来た。
しかも、これが大変しつこい。緒形が何度も逃れようとしたが、スパインは絶対に逃がさない。
それでも何とか凌いだが、今度はマウントを奪われての逆十字を何度も何度も狙われる。
会場からは、今度は逃げろ逃げろの緒形コールが。

まさに絶体絶命だったが、緒形はどうにか逃げ切りインサイド・ガードの体制。
会場からは安渡の歓声が起こる。しかしながら、緒形の闘争心はここで終わらなかった。
体制をサイド、マウントとスイスイ移行すると、スパインの腕を取ってチキンウィングの体制だ!
再び起こる決めろ決めろの緒形コール。しかしスパインが腕を外した所でラウンド終了。
一進一退の攻防、なかなかの好勝負だ。

3R、緒形は組み付き、「これぞSBの技術!」という綺麗な首投げでスパインをダウンさせる。
ここから、両者の体制は一転二転、お互い上になり優位なポジションを奪い合う。
ここで最後に上になったのは緒形。
ハーフ・ガードを奪い、ギロチン・チョークでスパインに嫌がらせ。
腕を取り、アームバーを仕掛けるも腕が外れてしまう。ここは膠着、ブレイク。

緒形、今度はスタンドでパンチ二発、怯んだスパイン相手にスタンドのフロント・スリーパーだ!
しかも、ボディへはヒザ連打のオマケ付き。
素人目にもガッチリと決まり、スパインは全く逃げる事が出来ない。
長い間、ガッチリと絞りこんだ緒形の攻め、会場はタップの瞬間を「今か今か」と待ち構えたが、
スパインはこの絶対不利な状況からどうにか首を抜いて脱出。会場からは落胆の溜息が。
最後まで勝利を諦めない緒形は、スパインを倒して逆十字を極めに掛かったが、結局は試合終了。

判定は、2Rはスパイン、3Rは緒形でドロー。でも緒形は良くやったのではないだろうか。
本業のSBも頑張って欲しいが、ここが総合再デビューもどうですかね?

第13試合 S-CUP2002 決勝 3分3R
○アンディ サワー(174cm:70kg:オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者)
●郭 裕蒿[ジョン イーゴ](180cm:70kg:中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者)
[延長判定 2−0]

長かった・・・、本当に長かったS-CUP興行も、いよいよこのメインを残すのみに。
試合前には前口上が、そして突然、リング上に轟音と共に上がる火柱!
・・・音、デカ過ぎ。オープニングの爆発も酷かったが、またまた会場が動揺しているよ。

観客の声援に答えて、ノリノリの入場はジョン。

試合終了前だが、あえて言う。
今回のトーナメントの成功は、この男による所が大きい。
未知の格闘技だった散打の実力を満天下に知らしめるだけにどどまらず、
観る者を魅了してやまない、その格闘スタイルは、
今のキック界に間違いなく新風を巻き起こすものだった。
その勢いに任せ、S-CUPをも制してしまうのか?

対するサワーは、静かに闘志を燃やしての入場。

チープな言い回しになるが、
ジョンが陽だとしたらサワーは陰としてこのトーナメントを成功させた。
若干19歳、88戦85勝、クラウスの兄弟子。
その肩書きから、今日は彼を観に来た人も少なくないはずだ。
そしてその肩書き通りの実力を発揮しての決勝進出。
ましてや、脳溢血で倒れた父の為にも、
今日の彼にとってはS-CUP制覇は「必須課題」なのだ。

両者は準決勝を秒殺で勝利している。ならば、お互い体調は万全なはず。
果たして、S-CUPの勝利を掴むのは、
中国四千年の歴史か?格闘大国オランダの意地か?

1R、ジョンがいきなり仕掛けた。
トラースキックからタックルで組み付くと、サワーを高々と抱えあげて叩き落す!
いきなりジョンにはスローポイント1P。
会場からは、期待通りのジョンの動きに歓声が起こる。
さらにジョンはサイドキック、そして必殺のローキックを繰り出していくと、
サワーがこの一撃に体制が崩れる。ジョンは、ここで裏拳一発。

ノリノリのジョンだったが、この裏拳をガードしたサワーは、
接近してのコンパクト・パンチラッシュ。このパンチが的確にヒットする。
しかし、ジョンはトラースキックで距離を空ける。
ここからは、両者パンチの押収。大振りなジョンに比べて、
サワーのパンチの方がやや精度が上だったが、ジョンも綺麗な首投げでパンチ力をカバー。
お互いの持ち味を存分に発揮しながら1Rは終了した。

2R、両者一進一退。サワーがコンパクト・パンチラッシュで接近すれば、
ジョンはステップ・イン・サイドキックで距離を取る。
それでもサワーはラッシュを仕掛けて行くが、
組み付いていく事そのものが上手いと思われるジョンはこのパンチをガンガン掻い潜ってしまう。
・・・とは言え、さすがに何発もサワーの打撃を食らっているせいか、
高々と持ち上げる体力は残っていない様子。さらにストレートがジョンにヒットする。
段々、動きが悪くなってきたジョンだが、それでも首投げや払い腰でサワーを転がしていく。

3R、ジョンのクリンチの割合が多くなってきた。明らかにスタミナ切れだ。
こうなると、サワーの打撃は益々ジョンにヒットしていく。
ラウンドが進む毎に、サワーのコンパクト・ラッシュは厳しいものに。
さらに組み付いてくるジョンには、ボディへのヒザのおまけ付き。
ジョンのダメージは明らかに大きかったが、それでもこのラウンドを戦いきった。

試合終了、判定は・・・。何と、一人はジョンに上げたぞ!
しかし残り2人はドロー、大会規定により延長戦へと突入だ。
ジョンは、1Rに奪ったスローポイントに助けられたな。
そして、この試合をもっと観たいと思っている会場からは大歓声が起こる。

延長R、サワーのラッシュはさらに厳しいものになるが、
ジョンは最後の力を絞り、タックルから投げを放つ。
サワーが前に出てパンチをヒットさせれば、ジョンはさらに組み付き首投げを打つ。
しかし、やはり前のラウンドでのダメージは大きく、試合は除々にサワーペースに。
パンチによるラッシュでジョンの動きを止めると、やはり組み付いてからのヒザを連打する。
ジョンも裏拳、アッパー、投げを打っていくが、
サワーに一度傾いた試合のペースは変わることはなかった。

試合終了、判定は2−0でサワー、病と闘う父に捧げるS-CUP制覇だ!
セコンド陣がリングイン、銀の紙吹雪が舞い、勝者を祝福する。

---

全試合終了後、表彰式へ。

サワーには優勝賞金$10000、シーザーからは認定書が贈られた。
そして、S-CUPの授与。プレゼンテーターは・・・、清水健太郎だった。
相変わらず濃い空間を演出するなぁ、SBは。

シーザー武士が改めて挨拶。

「長い時間、観て頂いて本当に有り難うございます!

 今日、永年の夢である『世界最強は誰か』という問いに、一つの結論が出ました。
 最強は、このアンディ サワーです! しかしながら、中国の選手も頑張りました。
 土井も、ダニエルも、靭帯を切ってます。 本当に皆、よく頑張ったと思います。

 最後に、今日闘ってくれた全選手を、ここに呼びたいと思います。
 皆さん、暖かい拍手で出迎えてあげて下さい。」

全選手登場、全員で記念撮影。

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雑感:
まずは、この文章も長かったのですが、
今回は興行そのものが長かったので、まあカンベンしてね。

S-CUPというトーナメント自体は大成功だったように思えます。
サワーやジョン、そしてベンフキーといった強豪の発掘は、
今後、K-1・W-MAX等を含めた「日本キック中量級」というジャンルを、
より一層、盛り上げる事になるでしょう。

し、か、し。

S-CUPという興行自体は、
今一つ盛り上がりに欠けた大会になった気がします。

実は、文章にはしなかったのですが、大会中はジャッジミスが結構ありました。
ダウンの判断が遅かったり、ダウンカウントが曖昧だったりして、
折角の盛り上がり所で水を刺されていました。
ゴング音の小ささも、試合の迫力を削いでいたように思えます。
ダウンカウントは、往年のUインターのような、
「5カウント以降はリングアナがコールしない形式」だったのもいただけません。

又、興行自体が冗長すぎた。
当日券が伸びたせいもありますが、試合開始は30分遅れ。
そして、全興行の終了には、実に4時間30分を掛けています。

RINGS2試合 & S-CUP7試合 & SMACK GIRL & SB公式戦3試合で全13試合。
「目白押し」って言い方も出来ますが、
僕はどちらかというと「貧乏性」ってイメージを持ちました。
今日はS-CUP7試合 +2試合くらいでよかったのではないでしょうか?

これらの集中力を削がれる要素が絡み合い、
試合終了後の表彰式には客席には10分の1程度の客しか残っていなかったのが、
今日の興行自体の完成度の低さを物語っている気がします。
招聘選手や試合自体は素晴らしかっただけに、これはちょっと残念な光景でしたね。

機材や選手招聘にお金を掛けるのも興行の盛り上げ方の一つですが、
試合そのものを演出する要素にも配慮が欲しかったです。

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以上、長文失礼。

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