World Affairs
Using and Abusing History 利用され、悪用される歴史 オピニオン 慰安婦問題を国際社会が批判するほど
このところ、日本では過去をめぐって熱い論争が繰り広げられている。戦時中の日本の行いが、いまだに国民を悩ませている。 米連邦議会下院が第二次大戦中の慰安婦問題について日本政府に公式謝罪を求める決議を可決するという見通しに、多くの日本人は落胆している。日本政府にとっても意外な展開だ。日本がイラク戦争や荊テロ戦争など、アメリカに惜しみない協力をしてきたことに照らすと、なおさらだ。 国際社会は、日本があらためて気やすく陳謝することを渋る理由が理解できないでいる。しかし多くの日本人は、慰安婦や南京虐殺といった問題がどうして蒸し返されるのかが理解できない。 第二次大戦以後、日本はアメリカ占領軍によって押し付けられた平和主義に従ってきた。日本のマスコミや知識人は平和主義を謳歌するため、再武装を阻むために日本が好戦的で危険な国だというイメージを作り上げてきた。そして、日本軍が行ったとされる残虐行為を誇張したり、でっちあげた。 1945年に日本が降伏してから間もないころまで、国民の間に屈従を強いられることを阻む空気が強かった。 国会は52年に、戦勝国が裁いた東京裁判を含む戦争犯罪裁判の被告を、戦争で戦死や負傷した名誉ある人々と同等に扱うことを全会一致で決めた。また当時の日本の総人口の半分が服役中の戦争犯罪者の即時釈放を求める請願書に署名し、主要政党が戦争犯罪という概念そのものを認めなかった。 しかし70年代ごろになると、こうした抵抗感が弱まった。戦争の記憶が風化し、経済が急激に成長したからだった。多くの国民が未曾有の豊かさに浮かれ、商売のためなら近隣諸国に許しを乞うことをいとわなかった。 93年に、河野洋平官房長官は日本が戦争中に女性を軍のために強制的に売春させたことを謝罪した。その3年後、終戦50周年の記念日に社会党(当時)の村山富市首相は、戦争中の日本の侵略行為が近隣のアジア諸国に「多大の損害と苦痛」を与えたことを詫びた。
謝罪のメリツトがない だが最近、長年にわたって影を潜めていたナショナリズムがいくつかの理由によって台頭している。まず、2000年代初めまで続いた経済不況に見舞われると、謝罪する見返りが明確でなくなった。また、保守本流の安倍晋三首相は53歳で、閣僚や補佐官らのほとんどが40〜50代だ。この世代にとっては、生まれる前に起きた出来事についてなぜ詫びなければならないのか、実感できない。 日本のナショナリズムが復活している。中国の異常な軍事力拡張と、北朝鮮の核の脅威によるものでもある。近隣諸国が目先の利益のために、過去の出来事に悪乗りしていると思えることへの反発もある。 韓国政府は1965年に日本との国交を正常化した際に、慰安婦問題にまったく触れなかった。日本の左翼が、80年代に入ってからこの問題を創りあげたのだ。 慰安所も、その実態は商業施設だった。米陸軍の報告書によると、慰安婦は「売春婦」であり、日本の官憲による「拉致」の例についてはひとつも見つからなかつた。慰安婦の4割が日本人であったことにも注目するべきだ。 多くの日本の政治家は、南京虐殺は中国が捏造したもので、中国がこれを使って政治経済などの領域で日本から利益を引き出そうとしているとみなすようになった。今年2月と3月には延べ60人以上もの国会議員による勉強会が3回催され、事件を否定する多くの証拠が提示された。
日本の姿勢が劇的に変化 たとえば、中国国民党中央宣伝部は南京陥落後11カ月にわたって300回以上記者会見を開いたが、虐殺について一回すら言及しなかった。蒋介石や毛沢東も、中日戦争1周年記念日の演説で南京で虐殺があったと言っていない。 日本の国会議員は最近、「南京事件の真実を検証する」議連を立ち上げた。今後どうあれ、これ以上謝罪することはなかろう。 日本の姿勢は70年代と劇的に変わった。ここ数十年の間、日本の大半の歴史教科書に日本軍が南京で20〜30万人の中国人民間人を虐殺したと記述されていた。現在、このような記述がある教科書は一つだけだ。 公立学校では日の丸の掲揚と君が代の斉唱が義務化された。こうした些細にもみえる多くの兆候が、日本の空気が大きく変わったことを示している。 日本は常識的な防衛力と外交政策を兼ね備えた普通の国として、世界における地位を回復することを願っている。近隣諸国やアメリカが謝罪を迫れば迫るほど、日本の反発が激しくなろう。 (筆者は福田赴夫、中曽根康弘両首相の特別顧問として訪米した) NEWSWEEK 2007.4.11 |
|
|||
|
|