●温家宝への公開質問を中国英字紙が報道

藤岡信勝


  香港で発行されている英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」のジュリアン・ライオール記者から電話がかかってきたのは4月12日の昼頃だった。私が事務局長を務める「南京事件の真実を検証する会」の温家宝への公開質問状についての取材依頼である。この日の午前、中国の首相の国会演説がなされた。それにからめて会の公開質問状について話を聞きたいという。翌日には記事を書かなければならないので、13日の昼までに会いたいという希望である。会長の加瀬英明氏は先約で都合がつかず、私と監事の茂木弘道氏でお相手することにした。

 13日午前11時から、有楽町の海外特派員協会のレストランで私と茂木氏でライオール記者に40分ほど面会した。ライオール氏は、中国系ではなくヨーロッパ人で、40歳前後の男性である。「ジュリアンは女性の名前のようですね」と私は余計なことを聞いたが、「そう言われます」と答えていた。話の理解が早い。かたくなな感じはない。会見後、おそらく当日中に記事を書き、翌日4月14日に発信したのが、下記の記事(英文)である。日本文は私の拙訳である。新聞の紙面は香港在住の日本人が「つくる会」の事務所にたまたま送ってきてくれた。中国人をトラックに乗せている写真が大きくあしらわれている。英文のテキストは、記者から私あてにメールで送られてきたものである。

 最初にライオール記者は、「温家宝の演説になぜ日本の国会議員は拍手を送ったのか」と質問してきた。「日本の謝罪を評価するから、それを行動で表せ」と温家宝は言い放った。安倍首相は靖国神社に参拝するなという脅しである。それに無心に拍手を送る日本の国会議員の姿が、中国英字紙の記者にも異様にうつったのである。私は、一瞬、日本の国会議員の歴史認識の弱さと謝罪外交の惰性からくる卑屈さについて一席ぶとうかとも考えたが、あまり本筋ではないので、「日本式儀礼の一種でしょう」と答えてすませた。これでも間違いではない。新聞の見出しになったのは、その時私が使ったことばそのままである。

 しばしば外国の新聞にありがちな偏見に満ちた書き方とは違って、掲載された記事は公平に書かれている。特に公開質問状のポイントとなる6点が正確に論旨をとらえて要約紹介されていることに感心した。本文の最後の方で、2万から3万の中国兵が日本軍によって殺されたのが南京城内の出来事であるかのように文脈上読めてしまうところだけはこの記事の欠点である。当方は城内と城外をしっかり区別して説明したつもりだったが、こみ入った話を短い時間で私の不完全な英語で説明しているのだから、このあたりが限度かも知れないとも思う。いずれにせよ、対外発信はこれから益々重要になる。


<記事和訳>

■日中首脳会談/南京専門家「温首相演説賞賛はただの儀礼」
 
【4月14日東京発、ジュリアン・ライオール】
[写真説明]暗黒の日々。「レイプ・オブ・南京」とも呼ばれる南京虐殺は第二次世界大戦中における市民の組織的殺害の最悪の事例とされている。

 「温家宝首相の国会演説に議員が拍手を送ったのは『ただの日本的儀礼』にすぎない」。藤岡信勝氏は苦笑して切り捨てる。「礼儀正しさは日本文化の一部だ」とも拓殖大学の教育学の教授である藤岡氏は言った。

 礼儀正しくとはいうものの、「南京事件の真実を検証する会」事務局長の藤岡氏と会の同人たちは温家宝演説の内容への酷評をかくさない。
 「彼の演説は中国だけが正しいという基本的な前提に立っており、そもそも日本は中国に戦争を仕掛けたと言うが、廬溝橋事件は中国側が始めたものであることは歴史的に証明ずみだ」と語るのは、世界出版社長で「検証する会」の13人のメンバーのひとりでもある茂木弘道氏。「片手で友好と親善を唱えておきながら、同時に演説では日本が侵略戦争を始めたと言う。まったく矛盾した態度だ」。

先月発足した同会は、大学教授、歴史研究者、ライター、および日本の主要政党である右派の自民党と野党・民主党の両党議員を糾合した一連の公開研究会から発展したものだ。会の目的は、1937年の「南京事件」に関する「正しい知識」を、特に若い世代の日本人に普及することである。

会のメンバーの信ずるところによれば、南京虐殺、731部隊(日中戦争と第二次世界大戦期に捕虜に生体実験をした生物兵器研究班)、20世紀の初めの数十年に数十万のアジア人女性を強制して日本帝国軍隊の用に供した性奴隷制、などの議論のあるテーマを、日本の教師は生徒に間違って教えてきたのである。温首相の訪日に合わせて同会は、70年前の出来事に関する中国側の主張の矛盾点とみなされる諸点について質問を提示し回答を求める公開書簡を送った。

質問はこんな具合である。何故、毛沢東は『持久戦論』のなかで「[日本軍による]殺害は少ない」と書いたのか。何故、1937年12月1日から翌年の10月まで外国の記者や外交官に向けて開かれた[中国国民党政府による]300回の記者会見で虐殺事件が公表されなかったのか。何故、虐殺を証拠立てるような本物の写真が一枚もないのか。「検証する会」は、いわゆる南京虐殺なるものはなかったのであり、南京に記念館をつくり死者30万人という数字を宣伝することで中国は「史実をないがしろにしてきた」と結論づけている。

 「本年は南京事件から70年ということで、貴国のさまざまな機関が『南京虐殺映画』製作を企画し進めていると伝えられます。こうしたことは日中友好を願うわれわれ日本人にとって耐え難い裏切り行為と受け止めております」と温家宝首相への公開質問状は述べている。

藤岡教授によれば、日本軍が南京攻略戦を開始したとき南京城内は混乱が支配していた。中国兵は逃亡兵を射殺し、2万から3万人の中国兵が日本軍との戦闘で殺された。藤岡氏は「市民で殺された者はほとんどいない」と主張。中国の公式文書はわずか26件の殺人事件を記録するのみであり、そのうち名前がわかる目撃者がいるのは1件だけだ。残りは伝聞にすぎない、と同氏は言う。

 藤岡教授は、安倍晋三首相が今年北京を訪問する際には、日中両国間の歴史に関する自らの見解を確固として発言するよう希望している。

《「南京事件の真実を検証する会」の質問事項》
 1 毛沢東が事件に全く言及しなかったことをどう説明するか。
 2 1937年から38年にかけてなされた300回以上の記者会見で、国民党が市民の死に言及しなかったのは何故か。
 3 中国の公式文書が南京の人口を日本軍占領以前20万、以後25万と述べているのは何故か。
 4 上記公式文書が市内での26件の殺人についてしか日本兵を非難していないのは何故か。
5 何故、虐殺の証拠となる本物の写真がただの1枚もないのか。中国は新たな証拠写真を出せるのか。
 6 南京虐殺があったというなら、当方が提示する資料を客観的に検証することができるのか。

                       訳) 藤岡信勝


< 英文原文>

Saturday, April 14, 2007

CHINA-JAPAN SUMMIT
Praise just courtesy: Japan's Nanking expert

JULIAN RYALL in Tokyo

Dark days: The Nanking Massacre, also known as "the Rape of Nanking", is considered one of the worst examples of systematic slaughter of civilians during the second world war. SCMP graphic

Nobukatsu Fujioka gives a little laugh as he dismisses the applause Premier Wen Jiabao received after addressing the Japanese Diet as "just Japanese courtesy".
"Politeness is part of our culture," said the professor of education at Tokyo's Takushoku University.

Politeness does not stop the secretary-general of the Committee for the Examination of the Facts About Nanking and his colleagues bridling at the content of Mr Wen's speech.

"His speech was based on the basic assumption that only China is right and at the very outset he mentioned that Japan initiated the war against China, but history has proven that the Marco Polo Bridge incident was started by the Chinese side," said Hiromichi Moteki, president of the Sekai Shuppan publishing house and another member of the 13-strong committee.

"On one hand he calls for friendship and amity while at the same time saying in his speech that Japan initiated a war of aggression. It is very contradictory."

The committee was formally set up last month and grew out of a series of symposiums which attracted professors, historians, writers and politicians from both of the main parties, the right-wing Liberal Democratic Party and the opposition Democratic Party of Japan. It aims to disseminate "correct knowledge" about the "Nanking incident" of December 1937, particularly among young Japanese.

The committee believes teachers have misled them about issues such as the Nanking Massacre, Unit 731 - the military biological warfare research unit which experimented on prisoners in the Sino-Japanese war and second world war - and the hundreds of thousands of Asian women forced into sexual slavery for Japan's Imperial Armed Forces in the early decades of the 20th century. To coincide with Mr Wen's visit to Japan, the committee sent a letter requesting responses to questions concerning what it says are discrepancies in the Chinese take on events of nearly 70 years ago.

They asked why Mao Zedong said in his book, On Protracted War, that "not many were killed"; why massacres were not reported between December 1, 1937, and the following October in 300 press conferences for foreign journalists and diplomats; and why no uthentic photos of the massacre have ever been produced as proof. The committee concluded that the Nanking Massacre could not have happened, and that by building a memorial museum in the city and promoting the number of dead as 300,000, the Chinese were "undermining history".

"As this year marks the 70th anniversary of the Nanking incident, various organisations inside your country are said to have planned movie productions about the Nanking Massacre, with many now under way," the letter to Mr Wen stated. "We perceive these acts as an unbearable humiliation to us, who really hope to be friendly with your country."

Professor Fujioka said chaos reigned within the walls of the city now called Nanjing as the Japanese army began their attack. Chinese soldiers shot deserters, and a mere 20,000 to 30,000 Chinese soldiers were killed in clashes with the Japanese forces. He claimed "almost no civilians were killed" and an official Chinese report only identified 26 cases of murder, only one of which was witnessed by a named person. The remainder, he said, were just earsay.

Professor Fujioka hoped Japanese Prime Minister Shinzo Abe would be firm in stating his opinions on the two countries' shared history when he visits Beijing this year.

The Japanese committee's questions

1 How do you account for the fact Mao Zedong never mentioned the incident?

2 In more than 300 press briefings in 1937 and 1938, why didn't the Kuomintang mention civilian deaths?

3 Why did an official Chinese book say Nanjing's population was 200,000 pre-occupation and 250,000 afterwards?

4 Why does the same book accuse Japanese soldiers of only 26 murders in the city?

5 Why do no authenticated photos exist of the massacre? Can China provide any?

6 If you suspect it occurred, can you objectively examine materials we provide you?


 

 

 

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