中体連が終わり、三年生が部活を卒業すると、二年生がリーダーシップをとるようになります。三年生は、残る中学生活を受験勉強に賭けることになりますから、いわばもう隠居の状態です。中学生活を営む上で、二年生が先頭に立つこととなります。
それでいて、二年生はまだ受験はずいぶん先のことだと考えています。つまり二年生は、きわめて自由度の高い状態にあることになります。
それまで真面目にコツコツと学習をしていた生徒も、「そこまで真面目にしなくてもいいんじゃないか?」という気になり始めます。「ここは手を抜いてよいところさ」と自分で判断し始めます。中学生活に、慣れてきたからです。
生活面でも、中ニは気をつけるべき時期だとされています。
とくにこの夏休み。教師の目が離れる長期の中で、確実に変化する子が現れます。6週間を経て学校で見る顔が、まったく違う目つきになっているということもあります。ひどい話では、学校に出てこないということもあります。
保護者は、中ニの夏休みに、厳しい一線を画すことができるでしょうか。

では、その時期の数学について考えてみましょう。
このころの数学の内容は、「一次関数」です。その前の「連立方程式」は、それなりによく頑張ります。4月から、どちらかというと無味乾燥な計算ばかりが続いてきた中で、連立方程式の文章題だけが、「ええ〜」と思わせる内容ですが、その状態で、あるいは、「一次関数」に少し入った状態で、危険な夏休みが始まります。そして最初の「一次関数」というのが、きわめて分かりにくい!
何の意味があるのか、どういう目的で学んでいるのかが、見えてこないのです。
それはまるで、何の目的もないのに、ただパソコンを使えるようにならなければ、と命令された人のようです。自ら興味が沸かないのに、ただ操作方法を次から次へと説明されても、身につかないのと同様なのです。

このような背景では、勉強を放棄したくなる雰囲気を助長する可能性があります。
そして、それは中三生の弱点がどこにあるかを見ればはっきりしています。「一次関数」がさっぱり分かっていない生徒が、実に多いのです。
あまり深く内容を考えず、「マニュアル」として情報処理をすることが、「一次関数」の目的でもあり、攻略法でもあります。しかし、練習をしないと、この技術は身につきません。さぼっていたか、真面目に取り組んだか、の差が現れる、怖い項目なのです。
ですから私は、興味のない中学生にも、「できるようになる」という目的を持たせます。中学生も、これが高校入試に出ることは理解できますから、言われた通りにしておけばきっとできるのだ、誰でもできるのだ、ということを信じさせることができたら、こちらの仕事は半分終わったようなものです。
パソコンでもケータイでも、いちいち「送信は何故できるのであろうか?」などと考えながら操作している人はいません。ただ、このボタンの次にこのボタンを押せばできる、ということを知っていれば「できる」わけです。関数の処理もそれと似ていて、どのボタンを押せば「できる」のかを今から説明するから、真似してやってごらん、と説明します。
操作は、他人がしているのをいくら見ても、自分ではできるようにはなりません。他人がパソコンを操作しているのを見ると、簡単そうに見えますが、いざ自分がマウスを渡されると、何をしてよいか分からないのです。
間違ってもいいから、自分の手で操作をやってみて、からだで覚えていくのです。からだで覚えたものは、忘れません。ちゃんと身につきます。
関数は、そんなふうに、やってみたら気楽に「できる」のだ、という動機付けを行うために、時間をたっぷりとるわけです。

一次関数の授業をするときには、私は、毎時間、「一次関数マニュアル」を板書します。さすがに毎時間書くと、すべて毎回ノートする生徒はいなくなりますが、ときに塾を休んでいたとしても、一度でも出席していれば、マニュアルをダウンロードすることができるという具合です。
まだ習いたての最初の時間から、私はマニュアルの基本編は全部板書します。パソコンのマニュアルも、今やっている部分しか見えていないのではなく、最後にはこんなこともできるという部分まで目に入っておくと、この先どうするかが分かっている安心感のようなものがあります。目の前のことだけでなく、マニュアルの全体像を一度見せておくのです。
意味が分からないということは、マニュアルを最初に見たときには、さほど苦にはなりません。今から操作していくうちに、その意味が分かるようになってくる楽しみがあるではありませんか。若い人は、そういう楽しみをもてる年代にいます。
マニュアルを全部示しておいて、意外とポイントが少ないな、と思わせたら、またこれからの学びを楽にしていくことができます。
「これだけのマニュアルが頭に入っていたら、全部問題が解けるのだよ」

今ここで授業を実況中継するわけにはゆきませんが、せめてその「マニュアル」だけは、サービスで一般公開致しましょう。
一次関数マニュアル
y=ax+b
a b
・傾き ・切片
・変化の割合 ・y軸との交点
yの増加量 → 上
xの増加量 → 右
・平行
x軸……y=0 y軸……x=0
点を通る ⇒ x,yに代入せよ
交点の座標 ⇔ 連立方程式の解
以上です。その他、図形の知識が入ってくると、
面積は、たて×よこ
中点 ⇒ 平均
面積2等分
三角形……頂点と対辺の中点
点対称な図形……対象の中心
といったマニュアルも使うようになります。こちらは上級編とでも言いましょうか。
いずれにせよ、こうしたマニュアルに従って作業を進めること、つまり一定の手続きを練習することで、一次関数の問題の殆どすべては解けるようになるわけです。

問題を解くとき、まずこのマニュアルを見比べながら解きます。いくら見比べても構いません。マニュアルとはそんなものです。しかし、そのうち、何度も操作しているうちに、もう見なくても操作できるようになります。最初は何度見比べてやっても構いません。

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