入試間際の塾

2006年3月

 これは中学入試にもあてはまることです。が、本人の意志や自覚の強い高校入試段階の子どもたちにとっての問題として、提示してみることにします。

 高校入試の直前というのは、塾の殺気立つところです。

 福岡県では、公立高校の方が人気が高い場合が多く、その入試直前には、中学三年生を毎日のように塾へ呼び出します。そのため、通常中学二年や一年が授業があるべきところを、全部中三生にして、そのことをお断りの文書まで配布して、公立入試直前の分の授業を、中三生が公立入試を終えた後に、多く実施できるように振り返るわけです。極めて合理的な措置だと言えるでしょう。

 塾としては、当然のサービスです。連日、直前予想などといったプリントを配布し、ここを覚えろと教師が叫びます。

 生徒は、学校が終わると毎日塾へ足を運びます。そうして、言われるがままにプリントに挑み、解説を聞くのです。ここが大事だ、最後にこのことを言っておく、云々。

 中学生たちは、もはや自分で考えようとはしません。受験への最後のアプローチも、全部、塾教師に委ねています。まるで、旅行地に旗を持って全部案内してもらうツアー客のように。

 あるいは、ブロイラーのように、無理矢理繋がれてどんどん餌を与えられているかのようにも見えます。

 やがて、社会という野に放たれたとき、どうやって生きていくのか、については考慮されていません。旅行地で独り置かれて自由行動など、取るのも恐いようなふうにならないでしょうか。

 私が京都にいたときには、入試直前だからといって、特別に連日呼び出すようなことはしませんでした。決まった曜日には来るようにさせていましたが、他の曜日には、自宅で自分のやり方で復習をするように考えさせていました。たいへん人間的な扱いであるように見えます。……しかし、それでは塾間の競争に、勝てませんでした。それでは、サービスの悪い塾だというふうにしか、見られなくなっていくのは必定でした。

 競争に負けないために、私たち塾という機関は、何を育てているのだろう、という気になることがあります。

 ちょっとしたアドバイスによって、生き生きとした顔を見せ、それで、「自分で」やっていく気持ちが強くなっていくことが、望ましいと思われますが、そうではなく、何でも、相手にプログラムのすべてを準備してもらい、自分で計画を立てることすらできなくなっていくとすれば、進学塾の熱心さというのは、罪なものです。

 もちろん、望みの高校へ合格するという、ある意味でかけがえのない代償を得るためではありますが。  


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