★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第4節 管理者

第二十五条 選任及び解任
第二十六条 権限
第二十七条 管理所有
第二十八条 委任の規定の準用
第二十九条 区分所有者の責任等

W.第25条(管理者 選任及び解任)から 第29条(区分所有者の責任等)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

 

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第一章 建物の区分所有
第四節 管理者
 
(選任及び解任)
第二十五条
1項 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる。
    
過去出題 マンション管理士 H25年、H24年、H21年、H20年、H19年、H18年、H16年、H15年、H13年
管理業務主任者 H23年、H22年、H18年、H17年、H14年、

★注:第4節(第25条〜第29条)の管理者についての規定は、管理組合が法人化されると、管理者に代わって理事が設置されるので適用がない。(第47条11項参照)

 しかし、管理組合法人では設置が必須である、理事と監事の選任・解任として、本第25条1項と次の2項は、準用されているので注意のこと。(第49条新8項、第50条4項参照)

できる...任意である。特に管理者を決めなくてもいい。

★ここからは、「第1章 建物の区分所有」の「第4節 管理者」に入ります。
 「第4節 管理者」は、第25条から第29条までで構成されています。

★区分所有法の規定は、いままでは、建物と土地についての規定でしたが、今度は、マンションの管理をする「管理者」についての規定です。

★区分所有者の団体では、第3条により、管理者をおくことが認められています。

<参照>区分所有法第3条 (区分所有者の団体)

第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 区分所有法では管理者に関し、この第4節 第25条で管理者の選任・解任に関し規定し、第26条に管理者の権限を、第27条に管理者による管理所有を、第28条に民法の委任規定の準用、第29条に管理者の行為に関する区分所有者の責任を規定していますが、他の条項にも管理者に関する規定が存在しています。
それには集会(総会)の招集(第34条)、集会(総会)の議長(第41条)等があります。

管理者とは
  区分所有法第3条により区分所有者の団体に設置が許されるいる管理者ですが、区分所有法自体には管理者とは、なに者かの定義条項はありませんが、他の条文などから定義するとすれば、
 「管理者とは集会(総会)によって選任・解任され、区分所有者の代理人として共用部分等を保存し、集会(総会)の決議事項を実行し、規約で定めた行為をする権利と義務をもった者
 ということになるのでしょうか。

  *;マンションの管理者と管理人(管理員)は違う...管理者は区分所有法で定められた規定ですが、管理人(管理員ともいう)はマンションの受付や清掃を行い、管理組合や管理会社に雇われた人です。
  ただし、管理会社が管理者になっていることはあります。


★管理者の設置は任意
  区分所有法第3条の規定により、区分所有者の団体は、「管理者を置くこと」ができます。

<参照>区分所有法 第3条:(区分所有者の団体)
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

  そして、管理者は本第25条により、原則として集会(総会)の普通決議で選任され、また解任されますが、第3条でも、第25条の規定でも「できる」と表現しておりますから、区分所有法では管理者の設置は任意であり、全部の区分所有者の団体(管理組合)には必要な存在とは考えていないようです。

 その理由は、区分所有法は、マンションの管理は、原則、区分所有者全員が自ら行うこととし、もし、希望するなら、代理人としての管理者を選任して、管理者に行わせることもできるようにしたということでしょう。
 しかし、区分所有者が団体として活動するためには、区分所有法の規定に関わらず、区分所有者が常に全員で行動するのは合理的でなく、通常管理者等による団体の事務の執行を行う代表機関の設置は不可欠となります。
 一般に活動している区分所有者の団体(管理組合)では理事会を組織しその代表者たる理事長が区分所有法でいう管理者であり、区分所有者の団体(管理組合)を代表するとされていますから(標準管理規約38条)、現実の運営では問題がないでしょう。

<参考>標準管理規約(単棟型)38条:(理事長)
第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。
   一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項
   二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。

2. 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。

3. 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4. 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。

第38条関係コメント
例えば植栽による日照障害などの日常生活のトラブルの対応において、日照障害における植栽の伐採などの重要な問題に関しては総会の決議により決定することが望ましい。

 なお、以前から指摘しています、区分所有法第3条での曖昧な存在である、区分所有者の団体なら、(権利能力なき)社団(区分所有法第3条の「団体」参照)として扱われ、その事務を執行する代表の機関名称は特に法定されていませんから代表機関の名称が管理者に限らず理事長とされていてもかまわないことは勿論です。

 そこで、標準管理規約では、区分所有法では明文化されていない区分所有者の団体の事務の執行機関として「理事会」を定め、区分所有法で規定する「管理者」の名称を「理事長」と読み替えています。

(注): また、出題傾向として、単なる管理組合における管理者と後からでてきます管理組合法人での理事の違いを聞く設問は多いので、注意のこと。

 たとえば、区分所有法と標準管理規約における管理者・理事・理事会の関係は下のように違っています。

◎区分所有法と標準管理規約における管理者・理事・理事会の関係
  法人でない管理組合 法人とした管理組合
区分所有法 管理者を定めるが、理事会の規定はない 理事・監事は必須、理事会の規定はない
標準管理規約 理事・監事・理事長、理事会を定めている。 理事・監事・理事長、理事会を定めている。

★選任・解任の別段の定め
 第25条により、管理者を原則、集会の決議で選任・解任できますが、更に、1項では管理者の選任・解任に関し、規約で別段の定めをすることを認めています。

 この規約による別段の定めの例として、規約で管理者氏名を明記する(注意:管理者氏名を規約へ載せる)と、その解任は「規約の設定・変更」(区分所有法第31条参照)に当たり、普通決議(過半数決議)ではできず、特別決議(3/4以上)事項となりますので注意してください。
 また、規約で管理者の解任又は選任・解任の条件を集会の普通決議から特別決議へと加重し、または組合員(議決権)総数の過半数という普通決議を総会出席組合員(議決権)の過半数、更には候補者の最多投票取得者とすること等に軽減するなどが考えられますが、各区分所有者の団体(管理組合)の実態に即して適切な変更をすべきでしょう。

 なお、各区分所有者が年度ごとに順番に管理者になる規約での定め(輪番制)も有効です。

 この規約での別段の定めができることをうけ、標準管理規約では、役員の選任を総会の普通決議(ただし、半数の議決権の出席で総会が成立し、出席した議決権の過半数で可決するので全体の1/4を超える賛成があれば可決の可能性がある。)で行い、管理者たる理事長は理事が互選するという間接代表制を採用していますが、これも別段の定めとして認められます。

<参考>標準管理規約(単棟型)35条;役員;(注:平成23年の改正に合わせた。)

第35条 管理組合に次の役員を置く。
  一 理事長  
  二 副理事長  ○名
  三 会計担当理事  ○名
  四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
  五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
  (改正:現に居住の条件がなくなった。)
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

第35条関係コメント(注:平成23年の改正に合わせた。)
@ 管理組合は、建物、敷地等の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体であることを踏まえ、役員の資格要件を、当該マンションへの居住の有無に関わりなく区分所有者であるという点に着目して、「組合員」としているが、それぞれのマンションの実態に応じて、「○○マンションに現に居住する組合員」((注)平成23年改正前の標準管理規約における役員の資格要件)とするなど、居住要件を加えることも考えられる。
  (改正:追加。)
A理事の員数については次のとおりとする。
 1 おおむね10〜15戸につき1名選出するものとする。
 2 員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○〜○名という枠により定めることもできる。
B 200戸を超え、役員数が20名を超えるような大規模マンションでは、理事会のみで、実質的検討を行うのが難しくなるので、理事会の中に部会を設け、各部会に理事会の業務を分担して、実質的な検討を行うような、複層的な組織構成、役員の体制を検討する必要がある。
この場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長、副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である。なお、理事会運営細則を別途定め、部会を設ける場合は、 理事会の決議事項につき決定するのは、あくまで、理事全員による理事会であることを明確にする必要がある。
C 法人が区分所有する専有部分があるマンションにおいて、法人関係者が役員になる場合には、管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者に限定する等どのような資格を有する者が実際に役員業務を行うことができるかについて、あらかじめ規約や細則に定めておくことが望ましい。

★管理者の集会での選任・解任の方法
  管理者の選任・解任は規約に別段の定めがなければ、集会の決議で行うことになり、集会の決議は、これも規約で別段の定めがなければ、区分所有者及び議決権の各過半数で決まります。
 なお、この管理者の選任・解任の集会に対しても、区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意があれば、集会を開催しないで決議ができます。(第45条2項参照

  集会は、通常管理者が招集します(第34条1項)が、管理者が招集しないときや、管理者がいない場合(管理者を初めて選任する場合なども)には、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有している者であれば、集会を招集できます。なお、この定数は規約で減じることはできます。(第34条3項及び5項参照

 区分所有法での管理者となるには、その集会の決議で、管理者に指定された者の承諾は必要です。(民法の委任:第643条参照)

<参照> 民法第643条
(委任)
第六百四十三条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

★管理者の解任は面倒
  管理者を解任するには、2つの方法があります。
  1.集会の決議による場合
    本第25条1項により、区分所有者は、規約に別段の定めがなければ、議題を「管理者(理事長)xxxの解任の件」とする集会を開いて、普通決議で管理者を解任できます。特別な解任事由は不要とされます。
    この集会による解任では、管理者の解任に対する承諾は不要で、また任期の途中であっても、解任できますが、管理者が解任によって損害を被るときには、その損害を賠償しなければなりません。(
民法:第651条2項)

<参照> 民法第651条
(委任の解除)
第六百五十一条  委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2  当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

  2.裁判による場合 −個人での請求−
    上の集会の決議による管理者の解任方法をとるには、まず集会を開くことが必要ですが、集会は通常管理者が招集しますから、普通の管理者ならば、自分が解任されるような集会を、自ら招集することは稀でしょう。
  そこで、管理者が管理者の解任を求める集会を招集しない場合には、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上の有志を募って、管理者に対して集会を招集するように請求できますが、このような有志を集めることはかなり大変です。(第34条2項及び3項参照

   しかし、管理者が不正な行為をしているのに、これを放置することは許されないことです。
 このような場合には、各区分所有者は個人で、裁判所に対して、管理者の解任を請求できますが(第25条2項)、裁判にするなら、「管理者に不正な行為」や「管理者がその業務を行うに適しない事情」がないといけません。

  管理者に不正な行為とは、民事的には、
民法の委任(第644条)による「善良なる管理注意義務違反」に該当する行為であり、具体的な内容は、裁判で判定されることになります。

<参照> 民法第644条
(受任者の注意義務)
第六百四十四条  受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

 一方、管理者に刑事責任を追及できる行為としては、管理費を着服すれば、業務上横領罪(刑法第253条)や知人に利益を与えると背任罪(刑法第247条)などが考えられます。

<参照> 刑法第253条
(業務上横領)
第二百五十三条  業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

<参照> 刑法第247条
(背任)
第二百四十七条  他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

★管理者となる資格は制限されていない −法人でも個人でも可能−
 1項では管理者の選任・解任方法を規定するのみで、管理者たる資格の規定は他の条文でも規定がありませんから、管理者は区分所有者に限らず誰でも適任者を選任できると考えられます。

 区分所有者の団体(管理組合)の代表者としての管理者はその業務範囲が広範に及びますから、区分所有者以外で広く適任者を選任できるとすることは妥当でもあるでしょう。
そして、その被選任資格としては個人に限らず法人でも可能と思われます。

 ただし、個人の場合には意思能力さえあれば未成年や被保佐人等でも法律上は可能でしょうが、管理者としての責任を考慮すると未成年者等は現実的には避けるべきでしょう。また、法人でも管理組合と継続的な取引関係を持つ管理会社も法律的には可能ですが、その利益相反関係から現実的には避けるべきです。

★管理者は複数いてもいい −1人に限らない −
  管理者というと、理事長のイメージで、1名しか置くことができないような感覚になりますが、この規定では、特に管理者を1名にするとの規定ではありませんので、2名以上の管理者をおいて、職務を分担させることも可能です。(ある管理者は、組合内部担当を行い、ある管理者は組合の外の交渉をするなど。でも、現実の運営面では、複数の管理者は存在してませんが。)

★管理者には任期の規定がない −規約が必要 −
 この管理者の任期には注意して下さい。
 区分所有者の団体(管理組合)が法人となると、後で説明します、第49条5項の規定により、理事の任期として2年(規約で3年まで延長可 )の規定がありますが、法人化されていない管理組合では、マンションの集会(総会)によって選任された管理者には任期は規定されていません。
 そのため、管理者を解任したければ、区分所有者は集会を開いて、管理者の解任を決議することになります。(管理組合法人の理事の規定と混同しないように!
 また、管理者の任期を定めるなら、規約が必要になります。

 ★原則:マンションの共用部分、敷地、附属施設の管理は、区分所有者が行う。

      しかし、規約で管理者を選任してもいい(任意)。管理者は個人でも法人でもいい

      管理者は、特に区分所有者でなくてもいい。(標準管理規約では、組合員からとなっているが)、普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で選び解任される。(委任契約となる。)

      ただし、規約の中に「Aさん(またはB会社)を管理者とする」となっていると、解任は規約の変更になるので、区分所有者および議決権の4分の3以上の多数決でないと解任できない。(第31条参照)

     ◎管理者に不利な時期に解任すると、民法で規定される委任の関係から損害賠償の責任がでる。

<参照> 民法第651条2項:
 
当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。
ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

  ★逆に、管理者はいつでも、自由に「辞任」できる。集会の決議はいらない。但し、区分所有者に不利な時期に辞任すると、民法の委任の準用により損害賠償の責任がでる。また、管理者として選任されても、本人が承諾しなければ、管理者ではない。

      管理者の死亡、破産、後見開始の審判を受けると委任契約は、自動的に終了する。

<参照> 民法第653条:
 
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
      一  委任者又は受任者の死亡
      二  委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
      三  
受任者が後見開始の審判を受けたこと。

<参照> 後見開始の審判:精神障害などで、正常な判断力がなくなったときに、その者を保護するために家庭裁判所に申し出て、後見人という保護者をつける。民法 第7条:成年被後見人。

★ 他に委任として 民法第643条〜 の規定の準用は 第28条にある。

★その他の退任原因
 その他、管理者は任期(区分所有法では、規定がないため規約で定めることになります。)の満了又は、民法の委任の規定の準用(第28条)により、管理者の死亡・破産・被後見開始(民法第653条)、区分所有者の団体(管理組合)の破産により退任します。「解任」ではありません。「退任」です。

標準管理規約(単棟型)も法人を前提にしていないため、継続性を考慮し、管理者の任期は2年を勧めています。

<参考>標準管理規約(単棟型)36条:(役員の任期)
第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2. 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3. 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
4. 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

第36条関係コメント
@ 役員の任期については、組合の実情に応じて1〜2年で設定することとし、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。
A 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。
B 役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合、補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。


{設問-1}管理者について、甲マンションの管理を受託した管理会社と集会の決議によって選出された区分所有者の両者とすることができると規約で定めることはできるか。

答え:できる。管理者の資格と人数に制限はないため規約で定めることができる。役務を別々に担当させることも出来る。


{設問-2}平成22年 管理業務主任者試験 「問37」

【問 37】 管理者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 規約又は集会の決議によっても、マンション管理業者が管理者になることはできない。

X 誤っている。 管理者の資格は、区分所有法第25条
 「(選任及び解任)
  第二十五条  区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
   2  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。 」とあるだけです。
 管理者の資格の制限はありませんから、規約又は集会の決議によって、マンション管理業者が管理者になることは、可能です。


2 管理者は、共用部分についての損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領について、区分所有者を代理する。

○ 正しい。 管理者の権限は、区分所有法第26条
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」とあり、
 2項に該当しています。どうして、共用部分についての損害保険契約や損害賠償金が規定されているのかは、私の「超解説 区分所有法」の該当の箇所を参照してください。


3 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならないが、各区分所有者に対する当該事務に関する報告を記した文書の配布をもって、これに代えることができる。

X 誤っている。 管理者は、区分所有法第43条
 「(事務の報告)
  第四十三条  管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」とあり、
 集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければなりませんから、前半は正しい。しかし、後半の「各区分所有者に対する当該事務に関する報告を記した文書の配布をもって、これに代えることができる」の規定は、区分所有法にはありませんから、間違いです。管理者は、必ず集会で事務報告をしなければなりません。


4 管理者は、必ず集会における議長となる。

X 誤っている。 集会の議長は、区分所有法第41条
 「(議長)
  第四十一条  集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。」とあり、
 「規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合」又は「集会を招集した区分所有者の一人」も議長になります。


答え:2 (ここは、まだ、勉強していない箇所も出ていますが、管理者の雰囲気をつかんでもらうために出しました。)

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第二十五条

2項  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

過去出題 マンション管理士 H19年、H13年
管理業務主任者 H23年、H18年、H16年、

★裁判所による解任
 2項は、裁判所による管理者解任の規定です。

 管理者は前の第25条1項により集会(総会)の決議で解任させることが可能ですが、その解任を目的とする集会(総会)は、通常、管理者が招集します(第34条参照)から、区分所有者の団体(管理組合)が機能していない場合には、管理者の解任を目的とする集会(総会)の開催が行われないことも有り得ますし、また、集会(総会)は多数決原理で運営されるため、仮に管理者に不正行為その他その地位にそぐわない行為があっても解任の議案が可決されるという保証はありません。
そこで、集会以外の方法でも区分所有者による解任ができることを定めておく必要性があります。

 ただし、必ずしも区分所有者による管理者の解任請求が正しいとはいえないことや、区分所有者の団体(管理組合)の執行機関であり代表機関でもある管理者の解任は、他の区分所有者の全員に重大な利害関係が有るため、区分所有者の請求の正当性を第三者である裁判所に判断させることにより相互の利益調整を図っています。

★「不正な行為その他その職務を行うに適しない事情」とは
  管理者が不正な行為をした時には、当然に区分所有者はその管理者の解任請求を裁判所に行えます。
 不正な行為としては、管理者の善管注意義務違反があげられます。
 また、その職務を行うに適しない事情がある時にも、区分所有者はその管理者の解任請求を裁判所に行えます。

 この「その職務を行うに適しない事情」としては、例えば、管理者が病気になったり、長期にわたり不在のケースが考えられますが、これだけでは直ちに解任請求が認められません。
  裁判所が、関係する他の事情も含めて判断します。

◎この管理者の解任要求の裁判は区分所有者の団体(管理組合)と管理者との委任契約ないし委任に近い契約を解除する効果を形成するものですから、形成訴訟となり、民事訴訟手続きによります。
 その判決の効力は区分所有者の団体(管理組合)と管理者との両者に及ぼす必要があり、区分所有者の団体(管理組合)と管理者の両者を被告としなければならない必要的共同訴訟となります。
 原告側の区分所有者は特に規定がないので一人でも複数人でもかまいませんが、複数人の場合には全員に同じ裁判の効力を及ぼす必要がありますからいわゆる類似必要的共同訴訟となります。

 管理者の解任請求訴訟で解任を訴えた側(区分所有者の一人、または数人)が勝訴になると、その訴訟費用は、他の区分所有者に対しても、原則区分所有法第14条に定める共用部分の持分の割合で分担を求めることができると解されます。

★集会で管理者に対する解任決議が不成立の時や、集会が開催されないときには、各区分所有者が裁判所に提訴できる。


{設問-1}管理者に関する次の記述は正しいか。

* 管理者に不正な行為その他の職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を建物所在地の市町村長を経由して都道府県知事に請求することができる。

答え:間違いである。区分所有法第25条第2項に「区分所有者はその(注:管理者の)解任を裁判所に請求することができる」と規定がある。
設問の、「市町村長を経由して都道府県知事に請求できる」は要求されていない。裁判所に対して行うため誤りである。
 *なぜこのような簡単な出題があるのか? 多分、法人の許認可との混同を試しているのか?


{設問-2} 平成21年マンション管理士試験 「問8」

 次の文章は、区分所有法の規定によれば、規約の定めとして有効か。


* 管理者の選任について、集会の決議によらず、区分所有者の輪番制によるものと定めること。


答え:有効である。 管理者の選任については、区分所有法第25条1項(選任及び解任)
 「第二十五条  区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。」とあります。
 規約で管理者を区分所有者の輪番制で選任することができます。 有効です。(実際に、多くのマンションの管理組合で、管理者(具体的には理事長や役員等)を輪番制で選任する方法は採用されています。)

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(権限)

第二十六条

1項  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

過去出題 マンション管理士 H25年、H23年、H21年、H17年、H14年
管理業務主任者 H22年、H15年、H13年

★管理者の地位・権利・権限

 第26条は、管理者の権限(権利を有し、義務を負うといっても、権利と義務とは反対概念で両立しませんからここで権利というのは権限のことです。)に関する規定です。

 区分所有者に代わる業務執行者として第三者である管理者を選任すれば、その者が行うことのできる範囲を明確にしておく必要があります。
そこで、管理者は区分所有者の団体(管理組合)の代表者、または全区分所有者からの委任関係の受任者として区分所有者の団体(管理組合)の業務を執行する立場にありますが、本1項では管理者の職務として区分所有者全員の共有に属する、建物の共用部分や敷地・附属施設を保存し、且つこれらを集会決議に基づき管理・変更し、その他集会決議や規約に定める事務を行うものとしています。

★通常の代理人等の権限は
  普通、民法その他の法令においても、不在者の財産管理人や権原の不明な任意代理人の規定等法令による受任者・代理人を定める場合には、その権限を定め明確にします。
区分所有法第26条もそれらの規定と同様に、区分所有法が独自に創設した管理者という地位ないし機関の権限を明確にするための規定といえます。

 規定を設けるにあたり、代理人の権限は代理人と取引をする第三者にとって明確なものであることが要請される一方、本人(区分所有者)の利益を守りその意思になるべく合致した範囲に止まることが要請されます。
 そこで、代理人の権限は一般的には
    @保存行為(民法第103条1号:修理程度)と
    A管理行為(民法第103条2号:利用・改良)が
     その代理の範囲とされ、それ以外の
    B処分・変更行為を行う場合には、本人または代理人監督機関の特別の授権が必要とされています。

<参照> 民法 第103条「権限の定めのない代理人の権限」:
  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
     一  保存行為
     二  代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

★管理者の権限を規定した
 その民法の規定をうけ、区分所有法でも、保存行為は区分所有者各自の単独行為とされ(第18条)、変更・管理行為は集会の決議事項(第17条、第18条)とされていますから、区分所有者の代理人である管理者にも保存行為の単独決定権およびその執行権を認め、共用部分等の管理・変更・処分行為については特別の授権として、区分所有者本人の意思たる集会の決議または規約の規定に基づき執行することとしています。

 第26条1項では、管理者の権限として、建物の共用部分、建物の敷地及び付属施設に対する
    @保存行為
   A集会の決議の実行、
   B規約で定めた行為の実行 が定められています。
 なお、一般の代理と異なり、民法での保存行為(第103条1号:修理程度)のみが明記され、管理(利用・改良)や変更行為(
民法第103条2号、3号)が明記されていないことから、管理者は管理・変更行為を自ら決定することはできませんが(但し、規約で管理について決定権を授権することはできる。)、これらの執行は上記のとおり規約または集会の決議の実行に含まれているということです。

 また、当然なこととして、建物の内、個人所有である「専有部分」は、管理者の管理行為には含まれていませんので注意してください。
  

 <参照>区分所有法 第21条:
 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

★管理者は保存行為(玄関タイルの補修、エレベーターの小修繕など)は単独でできる。
  保存行為には区分所有者の同意不要。また、保存行為は、各共有者も、単独でできる。

<参照>保存行為:区分所有法 第18条の解説。
   共用部分の

     @狭義の管理(利用・改良行為および軽微な変更)...普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)
     A重大な変更の管理行為...特別決議(区分所有者および議決権の4分の3以上の多数による決議)が必要。

   規約があれば、「保存行為」と「@狭義の管理」は集会でなくても、管理者の決定でできる。
   しかし、 「A重大な変更の管理行為」は、必ず集会の特別決議があること。
   <参照>第18条2項:

 ◎なお、管理者の職務については、区分所有法上では、第26条に規定するもの以外に次のものがあります。
   @規約の保管・閲覧(第33条)、
   A集会の招集(第34条)、
   B集会の議長(第41条)、
   C事務の報告(第43条)、
   D共同の利益に反する行為に対する訴訟の提起(第57条3項)
   他に
   E管理所有(第27条)
   F先取特権(第7条1項) 
   なども。

<参考>標準管理規約(単棟型)38条:(理事長)
第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する

   一  規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項
   二  理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。

2. 理事長は、区分所有法に定める管理者とする
3. 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4. 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。

第38条関係コメント
例えば植栽による日照障害などの日常生活のトラブルの対応において、日照障害における植栽の伐採などの重要な問題に関しては総会の決議により決定することが望ましい。

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第二十六条

2項  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

過去出題 マンション管理士 H24年、H23年、H22年、H21年、H20年、H19年、H18年、H17年、H14年、
管理業務主任者

H24年、H23年、H22年、H15年、H13年

代理権...代理行為ができる権限。代理は、代理人の行った行為の効果が、直接本人(区分所有者全員)に帰属する。

*注意:区分所有者の団体(管理組合)が法人化されていると、区分所有者を代理するのは、管理組合法人です。理事ではありません。(区分所有法第47条6項参照

★管理者の代理権
 区分所有法第26条2項で、管理者の職務は、区分所有者の代理であることを明確にしました。

 管理者は区分所有者の団体(管理組合)又は区分所有者全体との間において委任又は委任に類似した契約に基づく受任者であり、広く区分所有者の団体(管理組合)に関する業務一般を執行する権利・権限を持ちますから、対外的執行の権限として代理権があることはその地位からして当然といえます。

  2項はこの当然の権限を代理権として認めたものです。

★管理者の職務権限
  区分所有者を代理することにより、管理者の職務権限としては、
  1.対内的...マンション内の区分所有者との関係。共用部分等の保存等
  2.対外的...区分所有者の団体としての外部に対する行為。損害保険の請求・受領、訴訟追行権等
  があります。

★損害保険の契約、請求及び受領、などの代理権

 2項では特に管理者に損害保険の保険金受領権等を認める規定をしています。

 区分所有法の改正前では第18条4項で損害保険の付保行為を共用部分の管理行為と認めたこととセットとして
  @損害保険の保険金受領権 のみが確認されていましたが、

 平成14年の改正法ではこれに加えて
  A共用部分等について生じた損害賠償金 及び
  B不当利得による返還金の請求及び受領 が追加されました。

民法の考え方では、各区分所有者が持分の割合に応じて請求が必要

 この規定が新設された趣旨は、共用部分の所有が区分所有者の団体(管理組合)の共有関係にあると考えれば当然の規定ということになりますが、通常、
  @の損害保険は区分所有者個人の財産的損害の填補を目的とする保険ですから、本来は区分所有者の団体(管理組合)の権限には属さないものですが、保険金は共用部分の修復に使用されるべきものであることから、共用部分の修復にあたるべき区分所有者の団体(管理組合)の業務として特に認めたものと考えられています。

 Aの共用部分等の損害賠償金とは、具体的には共用部分が毀損された場合や建築工事により瑕疵がある場合の担保責任に基ずく損害賠償金、また不法占拠された場合の賠償額のことですが、これらも本来共用部分等の共有者がその持分に応じて個人的に受ける損害のため各区分所有者に分割的に帰属する債権(
可分債権といいます)と考えられており、本来なら管理者の権限には含まれないのですが、管理者が、区分所有者を代理して一元的に請求し、また受領することができるようにしました。
 その金額は結局、毀損部分の補修に支出されるべきで、建物の円滑かつ適正な管理につながり、保険金と同様に合理性があるといえます。

 この点、Bの不当利得(
民法第703条)に基づく債権(例えば第三者が善意で敷地の一部を不法占拠していた場合の地代相当額や無効な駐車場使用契約による駐車料相当額等)はやや特殊といえ、駐車料は区分所有者の団体(管理組合)に最終的に帰属さすべきものといえても、地代も同様かは問題です。
 はたして区分所有者の団体(管理組合)に当該利益に対応する損失があるといえるのでしょうかは疑問です。

<参照>民法 第703条(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 ★管理者は職務遂行で区分所有者の代理人になる。この代理権は管理者に選任されたことで当然発生する。

<参照>区分所有法 :
第18条4項:共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

第21条:建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

 ★第18条4項と第21条により、建物の共用部分(@法定共用部分、と A規約共用部分を含めて)、敷地、附属施設の損害保険契約を締結することが集会で決定されたら、管理者は区分所有者を代理して保険契約を締結できる。

   ★共用部分等について生じた損害賠償金:第三者や区分所有者が共用部分を壊した時の損害賠償など。
                              共用部分に欠陥があれば、管理人が分譲業者に対して瑕疵担保責任、債務不履行責任を請求できる。
                              明かな手抜き工事であれば、不法行為に基づく損害賠償請求もできる。

   ★不当利得による返還金:第三者や区分所有者が共用部分等を使って使用料を払わないときなど。

   ★この規定が出来る前は、管理者の権限にはいるかどうかで争いがあり、平成14年の改正で明文化した。

   ★管理者は、区分所有者のために、保険金請求訴訟を追行できる(4項)

★ここには、各区分所有者が独自に自己の専有部分などに掛けた保険は当然、管理者の代理権には入っていない
  紛らわしいのは、マンションでは、各区分所有者が自分の室や共有部分に掛けた保険もあり、災害などで区分所有者の団体(管理組合)が入っている保険の対象と、各個人が掛けた保険が同一の対象物となることもあります。
  この場合、管理者が保険金を請求できるのは、区分所有者の団体(管理組合)で入っている保険だけです。
 各個人の保険の請求は、保険に加入している個人が行います。

<参考>標準管理規約(単棟型)24条:(損害保険)
第24条 区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する。

2. 理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。


{設問}マンションの管理者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、最も不適切なものはどれか。

1 管理者が、マンションの管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をする区分所有者に対し、その行為を停止するため、訴訟を提起するには、集会の決議が必要である

答え:適切である。(区分所有法第 57 条)「区分所有者が第6条第1項に規定する行為[建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為]をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のために、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を 執ることを請求することができる。 
 2項 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない
 3項 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」

2 管理者が、マンションの敷地を不当に使用している者に対し、不当利得による返還金の請求又は受領をするには、集会の決議が必要である。

答え:不適切である。(区分所有法第 26 条2項)において、「不当利得による返還金の請求又は受領」は、管理者の職務であると規定されている。
「管理者は、共用部分並びに第 21 条に規定する場合における当該建築物の敷地及び附属施設(次項及び第 47 条第 6 項 において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
 2項 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第 18 条第4項 ( 第 21 条において準用する場合を含む。 ) の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。集会の決議がなくても、管理者はできる。ただし、裁判にするなら、集会の決議が必要となる。

3 管理者が、マンションのエントランスの共用ドアの故障を修理するため、その工事を業者に発注するには、集会の決議は不要である。

答え:適切である。 「選択肢2と同様。」(区分所有法第 26 条第1項)修理程度は、管理者の保存行為である。

4 管理者が、マンションのIT化のため、既存のパイプスペースを利用して光ファイバー・ケーブルを敷設する工事を発注する場合には、集会の決議が必要である。

答え:適切である。(区分所有法第 17 条)既存のパイプスペースは共用部分である。「マンションのIT化のため、既存のパイプスペースを利用して光ファイバーケーブルを敷設する工事」は共用部分の変更にあたる。したがって、管理者が単独ではできず、集会の決議が必要である。
「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権のそれぞれ 4 分の3以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は規約で過半数まで減ずることができる。」。この場合、普通決議で可能
<参照>標準管理規約47条のコメント エ)
エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。

正解: 2

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第二十六条

3項  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

過去出題 マンション管理士 H14年、
管理業務主任者 未記入

善意の第三者...代理権に特別な制限があることを知らない人には、制限内容を主張できない。

◎代理権の制限 −取引の安全性から善意の第三者には、対抗できない−
 前の第26条2項で、管理者には区分所有者からの代理権があり、これにより、管理者は、区分所有者全体(区分所有者全体とは結局、管理組合と同じですが)の代理人として外部の第三者との間でいろいろな取引行為を行うことになります。

 代理人としての管理者の行為が有効に本人たる区分所有者に効力を及ぼすのは原則としてその代理権の範囲で行った行為に限りますし、その範囲をどうするかも委任者である区分所有者(マンションでは集会が必要です)で任意に決定できるのが原則です。

 ところが、マンションの外部の相手方は区分所有者の団体(管理組合)内部の事情は知りませんから、内部事情で特定の共用部分の管理については代理権を与えないなどと制限し、当該行為が代理権の範囲の行為ではない、いわゆる無権代理として取引が無効になったのでは区分所有者の団体(管理組合)の保護にはなりますが、外部の相手方は不測の損害を蒙ることになります。

 代理人たる管理者は区分所有者の団体(管理組合)内部の者であり、その執行の監督は区分所有者の団体(管理組合)自身がすべき事柄ですから、内部事情での代理権の範囲の制限はその存在を知らない相手方(善意の第三者)に主張(対抗)することができないことは、代理制度の本質といえます。
 代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない規定は、民商法の各規定でもよく見られますが区分所有法でも第26条3項でこのことを明記しています。

<参考>旧民法第54条(理事の代理権の制限)
第五十四条  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 

代理権を制限しても、何も知らない人(善意の人)には主張できない。(悪意:制限を知っている人には対抗できる。)

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第二十六条

4項  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

過去出題 マンション管理士 H24年、H23年、H21年、H19年、H17年、H15年、H13年
管理業務主任者 未記入

★この当然のような規定が、どうしてあるのかと感じた人は、偉い! (管理者は当事者ではなく第三者という前提があった。)

★区分所有者のために...その訴訟に関係している区分所有者は除外されることもある。

★管理者のその職務とは

<参照>区分所有法:第2項後段..
  第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による
   損害保険契約に基づく保険金額並びに
   共用部分等について生じた損害賠償金及び
   不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

なることができる...管理者が勝手には裁判を起したり(原告)、訴えを引き受ける(被告)ことはできない。規約か集会の決議がその前に必要。

★どうして第三者である管理者が訴訟担当となれるのか
 4項では、管理者の訴訟における当事者(原告・被告)への就任権を規定しています。
 これは一般に管理者に訴訟担当(訴訟追行権)を認めた規定といわれています。

 裁判は、相手方との法的な紛争を解決する制度で、憲法上も裁判を受ける権利が保障されていますが(憲法第32条)、誰でも何にでも裁判ができるというものではありません。

<参照>憲法第32条
第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 民事裁判では判決で白黒をつける判決(本案判決といいます。)をもらえる前提として民事訴訟で訴訟要件といわれる前提条件を満たす必要があります。

★裁判には、当事者適格が必要 −訴訟要件−

 裁判制度で問題となる訴訟要件は当事者適格といわれるもので、これは当該紛争の判決による解決にあたってもっとも妥当な当事者が裁判に携わっているかどうかを判断して認められる原告(訴訟提議者)または被告(訴訟の相手方)としての地位です。

 当然のことですが、裁判の効力は原則として当事者にしか及びませんし、当事者の裁判を受ける権利を保障して紛争解決の実効性を図るためには当該紛争の当事者が原告又は被告になっているのが最も望ましいことから、通常はこの紛争の当事者に原告又は被告となる当事者適格が認められます。

 そして、裁判は権利義務の存否を判断して判決しますから、権利や義務の主体であることを合い争う前に当事者に当事者適格が認められ、具体的には、民法その他の権利義務を定める法律の規定により権利者又は義務者となる者に当事者適格が認められる関係にあります。

 ところが、他方で権利義務の主体そのものではないものの、他人の権利義務に対し干渉する権限を法的に認められる場合(債権者代位等)や権利義務の帰属主体に実際上訴訟の当事者になりうる機会や能力がないためそのものになり代わって当事者となる場合(被後見人の離婚訴訟における後見人等職務上の当事者といわれる。)にも当事者の地位が認められておりこれを第三者の訴訟担当と称しています。

 第26条2項の「管理者は区分所有者の代理人である」規定から、本来、管理者の訴訟上の地位は代理人であることで十分のはずですが、改正前の立法者の意図は、訴訟の代理権は含まないとしていたようです。そこで、新しく改正法(平成14年)では、管理者の代理的地位を重く見て管理者を区分所有者全員を代理して訴訟を追行する職務上の当事者として当事者適格を認めました。

 しかし、区分所有者の団体である管理組合を法人でない社団と明確に規定して、管理者をその代表者とすればこの区分所有法第26条4項の規定で訴訟担当を認めるまでもなく管理組合自身が訴訟することができるのですから(民訴法第29条)その方が実体に即し簡便のように思われます。 ここでも、区分所有法第3条での「区分所有者の団体」の曖昧さが、この規定となって表れています。

<参照>民事訴訟法 第29条 (法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条  法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

★判決の結果は、管理者と区分所有者全員に及ぶ
  管理者が訴訟の当事者になった裁判で、判決がでますと、その判決は、区分所有者全員に及びます。(民事訴訟法第115条1項1号及び2号参照)

<参照>民事訴訟法 第115条 (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
  第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
     一  当事者
     二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
     三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
     四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
    2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。
 

◎なお、管理者がいない場合や、区分所有者全体の問題である「合有」や「総有」関係の事項については区分所有者が全員連名で訴訟するしかありません。

この場合や、また管理者がいる場合でも、当事者には訴訟代理人の選任権がありますから別途訴訟代理人として弁護士に実際の裁判を依頼できるのは当然です。

  また、この規定には、和解や、支払命令、仮差押え、仮処分、民事執行、民事調停などの当事者に、管理者はなれると解されます。

★区分所有者の団体(管理組合)が法人化されていると、管理組合法人が訴訟の当事者になる。
 区分所有者の団体(管理組合)が法人化されていますと、管理者に関する規定が排除されています(第47条11項)から、訴訟の当事者は、管理組合法人が、訴訟追行権を持ちます(第47条8項)。理事ではありませんから、注意してください。

 <参照>区分所有法 第47条11項及び8項
(成立等)
第四十七条
11  第四節(注:管理者の規定)及び第三十三条第一項ただし書(注:規約の保管)(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。

8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。


★裁判で当事者適格が問題となった例が多い
  区分所有法では、マンションの所有者の団体を、単に区分所有者の団体とし、管理組合であるとの明文化がありません(区分所有法第3条参照)。
 そこで、マンションでの紛争では、誰が裁判を起こせるのか、つまり誰が当事者適格を有すのかが、過去から問題となっています。

 それは、当事者適格は、個々の区分所有者にあるのか、法人化されていない管理組合が「権利能力のない社団」としてできるのか、管理者がいれば管理者にするのか。
 また、紛争になっているのは、専有部分か共用部分か、共用部分の使用方法か、専用使用権か、専有部分の使用か、規約違反か、管理費の支払いか、損害賠償か、和解はだれができるのか、など多くの例が裁判となり、まず、当事者適格が争われます。

 そのたびに、個々の事案ごとに争点となります。これは、区分所有者の団体(管理組合)の法的な立場、その有する権利・義務が明確に法で定められていないために起きています。

 増大するマンションと共に増大するマンションの紛争を解決するために、早急に、管理組合・管理者・個々の当事者の権利・義務の調整を、法律で明確にする必要があるようです。

<参考> 原告適格を法人格のない管理組合に認めた判例:最高裁:平成23年2月15日

 法人格のない管理組合でも、マンションの1階の共用部分が区分所有者によって、違法に侵害されれば、「給付の訴えにおいては,自らがその給付を請求する権利を有すると主張する者に原告適格があるというべきである。本件各請求は,上告人(管理組合)が,被上告人(違反者)らに対し,上告人自らが本件各請求に係る工作物の撤去又は金員の支払を求める権利を有すると主張して,その給付を求めるものであり,上告人が,本件各請求に係る訴えについて,原告適格を有することは明らかである。」
 としています。


    ★第三者である管理者が訴訟で原告・被告になれるのは、規約で決めているか、集会の決議が必要。独断では、できない。

    ★訴訟行為は、区分所有者の訴訟代理人ではなく、管理者自身名で区分所有者の全員のために行う。

      以前は、区分所有者全員が原告になっていて、面倒だったようだ。

       ★裁判の判決の効力は、区分所有者全員に及ぶ(ただし、被告となった区分所有者は除く)ので、管理者が敗訴した権利については、区分所有者が再度訴えを提起できない。

    ★管理者が訴訟に使った費用は、区分所有者全員の負担となる。

★義務違反者に対する訴訟追行は、ここ第26条の規定には入っていない。
 区分所有法第6条1項や同3項に規定される義務違反者に対する差止めなどの訴訟に関する規定は、区分所有法第57条以下に別途規定され、この第26条4項の規定は適用がありませんので注意してください。


★住宅の品質確保の促進等に関する法律と管理者の瑕疵担保請求 −管理者が請求できるか−

 新築マンションを購入して、共用部分(住宅の構造耐力上重要な部分に限ります)に瑕疵があれば、買主である区分所有者は、売主の分譲業者に対してこの隠れた瑕疵の修補(修繕)請求が、住宅の品質確保の促進等に関する法律(第95条1項参照)により可能です。

<参照>住宅の品質確保の促進等に関する法律 (新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)

第九十五条  新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第一項 並びに同法第六百三十四条第一項 及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。この場合において、同条第一項 及び第二項 前段中「注文者」とあるのは「買主」と、同条第一項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。

2  前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
3  第一項の場合における民法第五百六十六条第三項 の規定の適用については、同項 中「前二項」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十五条第一項」と、「又は」とあるのは「、瑕疵修補又は」とする。

 そこで、この訴訟提起を、買主である区分所有者に代わって管理者もできるかという問題があります。

 通常、マンションにおける共用部分の瑕疵修補請求は、本来共用部分が備えている筈の機能を回復するための行為ですから、保存行為としての性質を有しています。
 そこで、住宅の品質確保の促進等に関する法律による瑕疵修補請求についても、管理者は、区分所有者のために、訴訟当事者として、訴訟を起こし、追行できると考えられます。


<参考>標準管理規約(単棟型)67条:(理事長の勧告及び指示等)

第67条  区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、
法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、
理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。

2. 区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。

3. 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、
  又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、
理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。

   一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること

   二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること

4. 前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。

5. 前項に基づき請求した弁護士費用及び差止め等の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。

6. 理事長は、第3項の規定に基づき、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第43条第2項及び第3項の規定を準用する。


{設問−1}次の記述は正しいか。

* 第三者の行為により共用部分が損壊した場合における損害賠償を請求する訴訟は、規約で定めれば、集会の決議を経なくても、管理者が提起することができる。

答え:正しい。区分所有法第26条2項によれば、第三者の行為により共用部分が損壊した場合における損害賠償を請求する行為は、管理者の職務に含まれ、同4項によれば、その職務に関する訴訟は、規約で定めれば、集会の決議を経なくても、管理者が提起することができる。ただし、通知は区分所有者にすること。


{設問−2} 平成20年 マンション管理士 試験 問4 

〔問 4〕  マンション業者AがBに設計・工事監理を委託し、Cに施工を請け負わせて建築した甲マンションは、B及びCが必要な注意義務を怠ったため、共用部分に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があることが分譲直後に判明した。その瑕疵のため甲マンションの区分所有者の生命、身体又は財産が侵害された場合における、管理者が区分所有者を代理して行う共用部分の損害賠償請求に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、分譲契約に特約はないものとし、分譲時から区分所有者に変更はないものとする。

1  管理者は、Aに対して、分譲契約上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求することができる。

答え:正しい。似たような問題は、平成18年 マンション管理士 試験 「問13」 にある。
 マンション管理士試験ではよく出題される、民法での不法行為(民法第709条〜)と売主の瑕疵担保責任(民法第570条〜)をきいている。
  まず、マンション業者Aは売主として、「共用部分に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があることが分譲直後に判明した」ことに対して、民法第570条 (売主の瑕疵担保責任)
  「第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 」の規定により準用される 民法第566条 (地上権等がある場合等における売主の担保責任)
  「第五百六十六条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。 」の責任を負い、買主から損害賠償の請求を受けることになる。
  では、次に、買主でないマンションの管理者が、分譲会社に対して、分譲契約上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求することができるかどうかの検討となる。
 鍵は、「共用部分」である。マンションの管理者の権限としては、区分所有法第26条(権限)
  「第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
  2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
  3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
  4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
  5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」とあり、管理者は、2項により共用部分に生じた損害賠償請求を買主である区分所有者を代理してできる。

2  管理者は、Bに対して、不法行為に基づく賠償責任を請求することができない。

答え:誤っている。
  売主の次に、設計・工事監理をしたBに対して不法行為が成立するかどうかをきいている。
  設計・工事監理をしたBと施工を請け負ったCは、「必要な注意義務を怠った」とある。これは、民法第709条 (不法行為による損害賠償)
  「第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 の要件の過失(不注意で認識しなかったこと)に該当するため、損害賠償責任を負う。
  第三者である管理者であっても、マンションの管理者は選択肢1で述べたように、区分所有法第26条により、管理者は買主である区分所有者を代理して損害賠償請求ができる。

3  管理者は、Cに対して、不法行為に基づく賠償責任を請求することができる。

答え:正しい。
  次は、施工を受け負ったCに対して不法行為が成立するかである。
  Cは「必要な注意義務を怠った」とある。これは、選択肢2で述べたように、民法第709条で規定する「過失」に該当するため、損害賠償責任を負う。
  また、マンションの管理者は、選択肢1で述べたように、区分所有法第26条により買主である区分所有者を代理して損害賠償請求ができる。

4  Aが建物の基本的な安全性を損なう瑕疵があることを知って分譲した場合は、管理者は、Aに対して不法行為に基づく賠償責任を請求することができる。

答え:正しい。
  こんどは、マンション業者Aにも、不法行為が成立するかどうかである。
  「Aが建物の基本的な安全性を損なう瑕疵があることを知って分譲した場合」は明らかに、故意という観念(自分の行為が他人に損害を及ぼすことを知っていながら、なおあえてこれをやるという心理状態)による行為である。これは、選択肢2で引用した、民法第709条での不法行為の成立要件の「故意又は過失」の故意に該当するため、マンション業者Aにも、不法行為が成立し損害賠償責任がある。
  また、マンションの管理者は、選択肢1で述べたように、区分所有法第26条により買主である区分所有者を代理して損害賠償請求ができる。

答え:2 

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第二十六条

5項 管理者は、前項の規約により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

過去出題 マンション管理士 H21年、H13年
管理業務主任者 未記入

遅滞なく...時間的に即行うことが要求されている。
          でも、正当な理由や合理的な理由があれば遅滞が許される。事情の許す限り最も速やかに行うこと。

遅滞なく...時間的な近接性を表す語句は、「速やかに」「遅滞なく」「直ちに」の順で 近接性が強くなります。つまり、
        1.「直ちに」  ...理由の如何を問わず
         2.「遅滞なく」 ...正当な理由による遅延は許容される
        3.「速やかに」...上の2つよりはやや緩やか

★管理者の裁判の報告義務 − 規約で原告・被告になれる定めがあるときだけ。 集会の決議でなったときには報告は不要 −
 管理者は受任者の立場にありますから委任者たる区分所有者の団体(管理組合)や区分所有者に適宜その事務の報告をする義務があることは当然であり、このことは報告内容が裁判事項である場合に限りませんが、裁判は区分所有者の団体(管理組合)にとって重要事項である以上、管理者が原告又は被告となつたときは、
遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならないこととされています。

 ただし、注意しなければならないのは、5項では規約に基づき(集会決議なしに管理者の判断で)原告または被告となったときだけにその旨を区分所有者に通知することが規定されている点です。
集会の決議で原告または被告となったときには報告が要求されていません。

 これは集会決議がある場合には当該集会またはその招集手続きや議事録等で欠席者も含めて全区分所有者に裁判の存在が明らかであるためでしょうが、管理者の報告義務からすればその場合でも適時必要な情報の提供を行うべきでしょう。

 なお、この場合の通知方法は集会(総会)の招集通知の規定(第35条2項から4項まで参照)が準用されています。(5項後段)
また、区分所有者にこの通知が無いときでも、管理者が起した訴訟そのものは有効に進みます。ただし、その後の集会の決議で、裁判の取り下げなどが決議されることもありえます。

★管理者の権限内の職務に対し、規約が定められていて、管理者が裁判の原告・被告になったら、遅滞なく、区分所有者にその、通知を下の方法ですること。(これは、集会の通知:第35条2項から4項までと同じ)

<参照> 区分所有法 第35条 (集会の通知)
  2項
 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。

   3項  第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。

    4項 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。

<参照> 区分所有法 第40条 (議決権行使者の指定)
 第四十条  専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。


   ★ 共有の時は、区分所有者の数も、議決権も1つしかない。

◎訴訟開始時の管理者の通知義務
管理者の当事者適格の根拠 区分所有者への通知義務
規約で定めているとき あり
集会の決議でなったとき 不要

★「通知」で、「訴訟告知」を代用する。
  民事訴訟では、当事者から訴訟に参加することのできる第三者の利害関係者に対して法定の方式で訴訟があることを通知して、該当の訴訟に参加することを認めています(民事訴訟法第53条)。これは、「訴訟告知」と呼ばれています。 
  告知により、告知を受けた者は、必要なら訴訟に加わりますし、もし参加しなくて敗訴しても、判決の効力が及びます(民事訴訟法第46条)

<参照>民事訴訟法 第53条 : (訴訟告知)
  第五十三条  当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
    2  訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
    3  訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
    4  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

<参照>民事訴訟法 第46条 : (補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条  補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一  前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二  前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三  被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四  被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。


  そこで、区分所有法においては、管理者は、区分所有者に対して訴訟があることの「通知」は求められていますが、民事訴訟法による法定の「訴訟告知」までは求められていません。
  区分所有法の制定者は、区分所有法第26条5項の「通知」の規定で、「訴訟告知」に準じた対応がとれると判断したようです。 

◎管理者に報酬を支払うべきか −原則 無報酬−
 管理者には委任の規定(民法第648条)が準用されますから、無報酬が原則であり特約のない限り報酬は貰えません。

 しかし、最近の管理規約では、管理者(役員)のなり手がいないため、特約として報酬を定めている例が出てきています。

<参考>標準管理規約(単棟型)37条:(役員の誠実義務等)
第37条  役員は、法令、規約及び使用細則その他細則(以下「使用細則等」という。)並びに総会及び理事会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとする。

2. 役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。

 しかし、区分所有者以外のマンション管理士等有償で他人のために事務を処理する者がその職務として行う場合には有償とする合意があるものと見るのが通常です。

◎管理者の義務 −善管注意義務があるー
 管理者には委任の規定が準用され、無報酬でも「善良なる管理者の注意義務(略して善管注意義務といわれます。)」が課されます。

 もっとも、民法上の有償契約ではすべてこの善管注意義務が課されていますから、無報酬でも課されるという点が特色といえるでしょう。

 「善管注意義務」とは、抽象的には「その者の職業、社会的・経済的位置に基づき一般的に要求される程度の注意」をいいます。
ようするに管理会社を管理監督する立場の管理者は有償の管理会社が負う責任と同じ程度の責任を負すべきですから、一般組合員が管理会社に期待し且つ要求するのと同程度の義務が管理者に要求されているということになります。

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(管理所有)

第二十七条

1項  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。

過去出題 マンション管理士 H24年、H22年、21年、H20年、H16年、H15年、H14年、
管理業務主任者 H23年、H15年、

★またまた、管理所有です。

★管理者による管理所有がある理由...区分所有者でなくても、権利の対象にできない建物の共用部分が所有できるのは、区分所有法が整備される以前から、分譲会社が管理人室などを所有していた事実を暫定的に認める。

★区分所有法第11条及び第20条で、分かり難い規定として説明した「管理所有」です。

 以前の解説を思い出してください。
 原則として、建物の共用部分は、区分所有者全員の共有です(第11条1項)が、例外として、規約があれば、別段の定めができます(同第11条2項)。

<参照>区分所有法第11条1項、2項:(共用部分の共有関係)
第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。

2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。

 本第27条1項により、規約があれば、区分所有者でない管理者も、建物の共用部分(法定・規約共用部分をとわず。管理人室・集会室など)を所有することができます。

 通常、 管理者は、建物の共用部分の管理に関して職務権限はありますが、保存行為(現状維持・修理など)のほかは規約で定めがある場合を除いては、単独で管理行為が出来ません。
管理人室などで、なにかあれば、集会の決議が必要となります。
しかし、これでは、緊急に対応しなければいけない場合などに問題があります。
そこで、この第27条により、管理者を共用部分の所有者とすることで、共用部分の管理を円滑にすることを認めています。
これを、「管理所有」といいその所有者を「管理所有者」とよびます。

◎管理所有の対象となるのは、共用部分であれば法定共用部分・規約共用部分の全部でも一部でもかまいません。

 しかし、管理所有になっていても、それはあくまでも便宜的なものであり、実質的な所有者は区分所有者全員ですから、管理者には、共用部分を処分する権限(譲渡や担保権設定)や変更する権限はなく、管理所有になってもその登記はされません。
もともと、共用部分については、管理所有に限らず所有権など権利の登記をすることはできませんが。

 管理所有は、管理の便宜のために形式上管理者の単独所有としているだけで、その共用部分については、区分所有者の実質的な共有関係は存続しています。ですから、管理所有を定めても、区分所有者は引き続き共有部分を使用できます。

(しかし、分かり難い条文です。解説もしづらい。古いマンションで、区分所有者でない分譲会社が勝手に、共用部分(管理人室や集会所)の権利を持っていたための規定と捉えるといい。)

★管理者は区分所有者以外でもなれる
  管理者の就任資格には区分所有者であることを要求されませんから、本第27条によって区分所有者以外の者でも管理者としてであれば管理所有することができることになります。
なお、管理者が管理所有する場合でも区分所有者の場合と同様に、その旨を規約で定める必要があるとされています。

★共用部分は原則区分所有者(各持ち主)の共有だけど(第11条1項)、各区分所有者が共用部分に有した権利を一括して管理所有を認められた者に委ねることで、これは、共用部分の所有権の信託となる。

 規約があれば、共用部分(管理人室など)でも特定の人や管理者の単独所有にできる。この方が共有よりも管理(保存行為なども)が便利。

     ただし、管理者となっている人なら、分譲会社など区分所有者でなくてもいいが、他の身分の人が管理するなら、必ず区分所有者の中から(個人でも法人でも可)指定されること。
     <参照> 第11条2項ただし書き

     また、管理所有は、共用部分(建物)にだけ認められる。敷地および共用部分以外の附属の施設には認められていない。

 ◎ 規約に特別の定めがあるときは、管理者は共用部分を所有することができます(第27条)。これを管理所有と呼びますが、所有権を実質的に管理者に移転するのではなく、管理の便宜上対外的な関係において管理者の所有とするもので一種の信託的な所有権の移転と言えます。したがって実際に所有権の登記がされるわけではありません。また、共用部分には不動産登記法上も権利の移動は出来ません。

◎管理に要する費用
 管理所有者が当該共用部分の管理に関し費用を支出したときは、区分所有者全員に対しその管理に要した費用を請求することができます。これは、当該共用部分が実質的には区分所有者全員の共有に属することから当然のことです。通常は、管理費、修繕積立金名目で積み立てた金額の中から管理所有者に支払われることになります

★管理所有者の地位は継承されない。
  管理所有者の地位は、個人的な信頼関係に基づくもので、規約によって定められた管理所有者が死亡したり、専有部分を譲渡した場合には、その管理所有者の地位は、相続人や譲受人には承継されないと解されています。ただし、規約で後任の管理者なり特定の区分所有者を共用部分の所有者としておくことは可能です。

 ★この規定は、専有・共用との関係で管理者だけに認められた例外で、 注意が必要。

 ★また、建物の共用部分なので、登記はできない。


{設問}次の記述は正しいか。

*共用部分については、規約に特別の定めをしても、管理者はそれを所有することはできない。

答え:間違い。 (区分所有法第 27 条1項)「管理者は、規約に別段の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。」

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第二十七条

2項 第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H16年、

<参照>
 区分所有法第6条第2項;
  
2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

 区分所有法第20条;
 第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。

2  前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。

★第6条2項および第20条の準用
 管理者による管理所有の場合においては本第27条2項で専有部分や共用部分の立ち入りに関する第6条2項と管理所有者の権限に関する第20条が準用されています。

 このうち、第6条2項の準用の意味は、共用部分の管理のために専有部分等に立ち入りの必要があることは区分所有者が管理所有者である場合と同様ですが、区分所有者が管理者になっても区分所有者の地位で第6条2項に基づき必要な立ち入りが可能であるのに対し、管理者が区分所有者でない場合には直接には第6条2項の適用がないため、第6条2項の準用を認めて管理所有する管理者の地位自体に立入り権を認めて業務に支障がないように配慮したものです。

 また、管理者による管理所有が管理のための信託の受託であり、その権限は受託者としての権限であることは区分所有者の場合(第20条の解説参照)と同様ですから、この旨を明らかにするために第20条が準用されています。

★管理者の保存・改良行為を認め、お金がかかれば、他の区分所有者に請求できる。

また<参照> 区分所有法第11条2項:
 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。


{設問}平成21年 マンション管理士試験 「問5」

〔問 5〕 規約の特別な定めにより共用部分を所有する管理者(以下この問において「管理所有者」という。)に関する次の記述のうち、区分所有法によれば、誤っているのはどれか。

1 管理所有者は、区分所有者以外の第三者であってもなることができる。

○ 正しい。 区分所有法での特異な存在「管理所有」からの出題傾向は高い。
   まず、マンションの建物の共用部分は、区分所有者全員の共有であり、共用部分は個人では所有できないことが区分所有法の原則ですが、これの例外規定が区分所有法第11条2項にあります。
   区分所有法第11条 (共用部分の共有関係)
   「第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
     2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
     3  民法第百七十七条(注:登記) の規定は、共用部分には適用しない。」とあり、
  そして、同法第27条(管理所有)
   「第二十七条  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
     2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。」とあり、
  規約で定めれば、権利の登記ができない共用部分に所有者を認めるという、おかしな構成となっています。
   これが、区分所有法でいう「管理所有者」です。
   管理所有者の資格として、区分所有法第11条2項で、@区分所有者 が上げられ、その他の人として、同法第27条で A管理者にも管理所有を認めています。
   区分所有法では、管理者についての資格を特に区分所有者に限定した規定はありませんから、区分所有者以外の第三者でもなれます。また管理者には法人でも、二人以上でもなれます。


2 管理所有者は、規約に定めがあるときは、当該共用部分の形状又は効用の著しい変更をすることができる。

X 誤っている。 管理所有者ができることは、区分所有法第20条 (管理所有者の権限)
  「第二十条  第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
   2  前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。」と定められています。この2項に該当する同法第17条1項とは、(共用部分の変更)
   「第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」とあり、「その形状又は効用の著しい変更(重大変更とよばれます)」は規約で定めても、管理所有者はできず、必ず、集会の決議によると解されています。例外的な管理所有者が、勝手に変更したら大変です。


3 管理所有者は、当該共用部分に係る損害保険契約の締結について、集会の決議を得る必要がない。

○ 正しい。 損害保険契約の締結行為が、管理所有者に許されている、「共用部分の保存・管理」の中に含まれているかどうかである。
   通常の「共用部分につき損害保険契約を締結をすること」は、区分所有法第18条4項により、共用部分の管理に関する事項とみなされ、同第18条1項により、集会の決議が必要となります。
   この規定との関係があやふやです。
   調べました。管理所有者の権限としては、@狭義の管理行為、 A保存行為、 B軽微の変更 はできるようです。そして、その共用部分に損害保険契約を締結する行為は、@狭義の管理行為に含まれるため、集会の決議は不要のようです。ここは、区分所有法第18条1項と関係を考えなくてもいい主旨の出題のようです。(私としては、少しばかり疑問の残る設問です。)


4 管理所有者は、当該共用部分に係る修繕のための請負契約の締結をする場合、自己の名においてすることができる。

○ 正しい。 修繕は保存行為に該当しますから、選択肢2で引用した、区分所有法第20条1項の規定により、保存行為は管理所有者の義務に入ります。そこで、管理所有者は自己の名において、当該共用部分に係る修繕のための請負契約の締結ができます。また、区分所有法第18条1項も参照のこと。(共用部分の管理)
   「第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
     2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
     3  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
     4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」

答え:2

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(委任の規定の準用)

第二十八条

この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

過去出題 マンション管理士 H19年、H14年、H13年
管理業務主任者 H24年、H16年、

★管理者の権利義務は民法の委任を準用することの意味
 第28条は管理者の権利義務について民法委任の規定が準用される旨の規定です。

★管理者のこの法律で定める権利・義務
 区分所有法では、管理者の権利・義務については、
 *第7条1項:先取特権 
 *第25条:管理者の選任・解任
 *第26条:管理者の権限
 *第27条:管理所有
 *第33条:規約の保管および閲覧
 *第42条5項:議事録の保管および閲覧
 *第34条1項、2項、3項:集会の招集
 *第43条:事務の報告
 *第57条3項:共同の利益に反する行為での訴訟提起者
 などがあります。

 また、法律の許す範囲で、別途規約で管理者の権限を定めてあればそれも有効です。

*民法の委任とは...当事者の一方(委任者=区分所有者)が法律行為その他の事務の処理を相手方(受任者=管理者)に委託し、相手方(管理者)がこれを承諾することによって成立する契約です。

 管理者を区分所有者の団体(管理組合)という社団の代表者と見ようと、区分所有者からの受任者と見ようと、また、管理者は区分所有者との間で明確な委任契約を締結して管理者の地位につくものではありませんが、いずれも委託されて他人のために事務を行う者であることには変りがありません。

 そして他人から委託を受けて他人の事務を執行する場合の通則(原則的な取扱い)が民法の委任の規定ですから、管理者に委任の規定が適用ないし準用されるのは当然といえます。
この点、現在は改正されて削除されましたが民法の法人の理事や株式会社の取締役なども同様であり、区分所有法では本第28条で委任の規定を準用する旨を規定し明らかにしています。

 もっとも、民法の委任は法律行為の委任が主眼ですから、区分所有者の団体(管理組合)の各種事務を執行する管理者の行為の大部分は事実行為となるでしょうからその本質は準委任といえます。

★法律行為とは...法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為。売買・賃借・遺言など多くのものが該当する。
★事実行為とは...意思表示(人の精神作用の発現)がなされていなくても、それだけで法律効果を発生させる行為。加工、住所の設定など。
  (これで分からない人は、
民法のテキストを読んでください。)

 区分所有法と規約が民法に優先適用されることになっていますので、同じような規定の場合には民法の適用はありませんが、区分所有法と民法とで重複していそうな規定は区分所有法第43条の事務報告と民法第645条の報告義務ぐらいのようです。
 従って、民法の委任に関する第643条から始まる、14カ条のほぼ全てが区分所有法の管理者に関する規定に追加適用されることになります。

★具体的な準用
  それでは、民法に従って各条文を見て行きましょう。

民法第643条:委任の意義(成立);
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 民法第643条:委任も契約ですから申込みと承諾の意思表示の合致により成立します。(諾成契約です)。区分所有法では第25条で、管理者は集会の決議で選任されるとしていますが、集会は区分所有者の団体(管理組合)の意思決定機関であっても意思の表示機関ではありません。
従って、集会が決議しただけでは管理者委託の契約はいまだ未成立といわざるを得ません。

 本来はこの集会(総会)が決定した意志を、その表示機関たる代表機関が表示して初めて申込みの意思表示が完成するのですが、こと団体内部の機関選任の場合に限っては集会(総会)自体が意思の表示機関も兼ねることができると解されているようで、集会(総会)の選任決議に被選任者(管理者として指定された者)が就任受託(承諾)の意思表示をすることにより管理者としての就任契約が成立するとされているようです。

 なお、委任状や契約書などの書面がなくても、相手方が承諾の意思を表示すれば、委任関係は成立します。

民法第644条:善管注意義務;
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

 民法第644条の規定が適用になり管理者はその職務を執行するにあたって「善良なる管理者の注意義務」を負うことになります。

 よく、出題されますが、「注意義務」には、2つあります。
 ここで求められています「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」とは、「その人の個人的な判断能力の高低に応じて要求される注意(
自己のためにする注意義務)」ではなく、「一般的な職業や地位にある人として普通に要求されている注意」です。

{判例}マンション内に自動販売機を設置し手数料を個人としてとっていた理事長に対して「善良なる管理者の注意義務違反として、損害賠償が認められた。(東京高裁:平成13年11月21日判決)

民法第645条:報告義務;
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

 この民法第645条に規定される事務報告義務に関しては区分所有法第43条で、年1回の定期集会(総会)での報告、区分所有法第26条5項に訴訟時の報告が規定されていますので、これらが民法第645条の特則ということになります。

 しかし、民法第645条の趣旨は必要なときに適宜報告することですから、これらの区分所有法の規定が民法第645条の規定を完全に排除するものと理解すると民法規定の緩和規定となってしまい委任の趣旨に合致しません。

 従って、区分所有法で定める報告規定は報告義務の最低限を定めたものであり、それ以外にも必要なときには適宜報告する義務があるものと理解すべきでしょう。

 通常、理事会等の活動内容が組合員に定期的に報告されますが、それはこの報告義務の履行行為と理解することができます。

 事務報告受領権は管理者の解任権と共に委任者たる区分所有者の団体(管理組合)が管理者の職務執行を監督するための重要な権利ですから、委任者との信頼関係の維持と受任者の職務執行の適正を保障するため必要なコミュニケーションに努めることが必要です。

民法第646条:受領物の引渡義務;
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。

 民法第646条により、区分所有法の管理者の場合には本人にあたる区分所有者の団体(管理組合)には物理的な受領能力がないので、管理者が本人(管理組合)の財産として保管することになります。

民法第647条:金銭消費の責任;
受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

 民法第647条:これは単なる不法行為の一つの場合を規定したものであり、管理者の場合も同様です。

民法第648条:報酬支払い請求権;
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。

 民法第648条:委任の場合、無償が原則なのは、信頼関係による役務提供が金銭精算されることに対する倫理的な反感に基づく立法の沿革によるものに過ぎません。
ただし、管理者にもこの規定は適用されますから報酬を与える場合にはその旨規約で定める必要があります。
マンションでは、文句ばかり言われる役員(管理者)のなり手がなく、最近は報酬を出すマンションも増えてきています。

<参考>標準管理規約(単棟型)37条:(役員の誠実義務等)
第37条  役員は、法令、規約及び使用細則その他細則(以下「使用細則等」という。)並びに総会及び理事会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとする

2. 役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。

 また、管理者が管理会社である場合は、商法が適用され、管理会社は特約が無くても、当然に相当の報酬を請求することができます。

<参照>商法第512条;
 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

  ★原則、管理者は無償で働く。しかし、管理者に管理会社がなった時は商法第512条で、特約がなくても報酬請求ができる。

民法第649条:費用前払い請求権;
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

民法第650条:費用償還請求権;
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

 民法第649条、民法第650条:いずれも、受任者である管理者は委任者である区分所有者の団体の事務を行うのですからその費用の一切は受任者が負担すべきことは当然のことですから、受任者に費用面で何らの負担をかけないというものです。
管理者にも当然適用があります。

民法第651条:相互解除権;
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

 民法第651条:委任は相互の信頼関係が全てですので信頼関係が喪失した場合は委任関係の解消が認められなければなりません。
通常、二人以上の当事者の相対する意思表示が合致して成立する法律行為の契約であれば、契約が守られなければならないのは契約の大原則であり、そのため契約の解消は違反行為や解約権留保の特約のない限り認められませんが、契約と異なり委任では委任の信頼関係という特質により相互の関係解消が認められています。
そこで、管理者や区分所有者の団体(管理組合)においても、いつでも、どちらからでも委任を解除できます。管理者側では自らの意思による辞任になり、区分所有者の団体(管理組合)が行う管理者との委任の解除は、集会(総会)の決議又は裁判所の解任判決によることになります。

民法第652条:解除の非遡及;
 第六百二十条の規定は、委任について準用する。

 <参考>
民法第620条;賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。

 民法第652条により、管理者の解任及び辞任は将来に向かってのみ効果を生ずることになります。

 ただし、選任決議の瑕疵等就任契約自体の有効性に問題があるときには遡及的に無効となる場合があることは勿論です。

民法第653条:終了原因;
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
   一  委任者又は受任者の死亡
   二  委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
   三  受任者が後見開始の審判を受けたこと。

 民法第653条の委任の終了原因は管理者にも適用されますから、委任者たる管理者の死亡・破産・被後見人の審判、受任者たる区分所有者の団体(管理組合)の消滅・破産(管財人が引き継ぐので管理者は不要になります。破産的清算の実益があるかは疑問もありますが否定する必要もなさそうです。ただ、現実には債権者は区分所有者の団体(管理組合)の破産申立てよりも個々の区分所有者に請求することになるでしょう。)の場合に管理者は更迭されます。

民法第654条:緊急処分権;
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。

 民法第654条の緊急処分権は受任者たる管理者にも適用され、辞任等で退任した管理者は区分所有者の団体(管理組合)の不測の損害を防止するため後任に引き継ぐまで緊急時の応急対処義務があります。
ただし、信頼関係の喪失により、管理者が「
解任」された場合には別と考えるべきでしょう。

民法第655条:終了の対抗要件
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。

 民法第655条:管理者は区分所有者からの代理権をもって外部と折衝しており、外部のものは管理者が区分所有者の代理人であることを信頼しているのが通常ですから、善意の第三者に対しては委任終了により管理者でなくなったことを対抗(主張)できないことは代理制度一般の原則です。

民法第656条:準委任;
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

 民法第656条:法律行為以外の事実行為の委任を準委任といいい、委任の規定が準用されます。

 委任が法律行為を目的としたことも沿革上の理由に過ぎず、信頼関係を基礎に契約されることに変りはありませんから、準委任の場合にも委任の規定が準用(適用)されます。

 管理者との関係は管理者の事実行為の委任が主ですからその性質が本来的には準委任であること前記のとおりです。

民法の(準)委任契約(法律行為でないので事務の委託)となる。

★<参考>他の民法の委任の説明:第25条にもあり。


{設問}管理者に関する次の記述は正しいか。

* 管理者の権利義務は、区分所有法及び規約に定めるもののほか、委任に関する規定によることとされている。

答え:正しい。区分所有法第28条に「管理者の権利義務は、区分所有法及び規約に定めるもののほか、委任に関する規定に従う。」とあり、設問の通りに規定されている。

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(区分所有者の責任等)

第二十九条

1項  管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。

過去出題 マンション管理士 H23年、H14年、
管理業務主任者 未記入

<参照>区分所有法第14条:(共用部分の持分の割合)
第十四条  各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

2項  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

3項  前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

4項  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない

 

★区分所有者の対外的責任を定める理由

 第29条は区分所有者の対外的責任に関する規定です。
この規定では区分所有者は代理人たる管理者の行為の責任を当然負うものとして、その負担する割合を原則、区分所有者の有する専有部分の床面積(区分所有法第14条参照)の割合と同一のものと規定しています。

★区分所有者の負担は、→ 分割責任
 この規定は、第三者に対する債務が、区分所有者に分割的に帰属するのか(
民法第427条)、それとも区分所有者全員が1つの債務として負担する不可分的に帰属するのか(民法第430条)の解釈での争いがあったのを、「分割責任」であると規定したものです。

 代理人の代理行為は本人に効力を及ぼすのですから、管理者を区分所有者の代理人と位置付ける区分所有法では(第26条2項)この結論は当然かもしれません。

<参照> 民法 第427条:「分割債権及び分割債務」;
 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う

<参照> 民法 第430条:(不可分債務)
第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。

★区分所有者が責任を負うのは、管理者の行為が「その職務の範囲内において第三者との間にした行為」だけである。
 管理者が行ったすべての行為に対して区分所有者が責任を負うのではありません。
 管理者が区分所有者の団体(管理組合)の職務とは関係のない、個人的な利益を図る目的で第三者とした行為については、区分所有者の責任ではありません。
 しかし、管理者が区分所有者の代理人となっているために、外部に対しては無権代理や表見代理の問題が起きる場合もあります。

 ★管理者が職務上で,損害賠償の責を負ったときには、その請求は区分所有者に転嫁される。

 ★ただし、管理者が独自にした不法行為は、当然管理者の責任で区分所有者には負担義務はない。

      負担割合は原則として、専有部分の床面積の割合で負担する。(第14条)

      しかし、別の規約があればそれに従う。

      また、規約で、管理費と修繕積立金が別に定められているときには、管理費と修繕積立金の合計が負担の割合となる。

  ★この第三者に対する区分所有者の責任の割合は、その債務が発生したときに規約があれば、その内容に従い(規約が無ければ無い方法で)決まる。いったん発生した後で規約を作ったり、変更して、責任を変更はできない。

★以前は区分所有者の第三者に対する債務の負担が解釈上はっきりしていなかったので、改正法で「分割責任」と規定した条文。

★なお、管区分所有者の団体(管理組合)が法人化された場合には、管理者に関する区分所有法第4節(第25条〜本第29条)の適用はなく、区分所有者の責任も、別途第53条の規定が適用されます。
 (参考:区分所有法第47条11項、及び第53条1項)

<参照>第47条11項
11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。

<参照>第53条1項 (区分所有者の責任)
第五十三条  管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。


★さらにステップ・アップを目指す人へ

 ◎「共有」、「合有」そして「総有」

 区分所有法では、区分所有者の責任について簡単に規定していますが、実は、区分所有法第3条で規定される「区分所有者の団体」という規定が明確でないためその団体が有する財産、これは、多くの区分所有者が共同で所有する「共有所有関係」にあるわけですが、その「共有物」をどう扱うかについては、民法では纏めて「共有」と呼ばれていますが、団体としての拘束力や処分の限度なども絡めて古くから「共有」を細分化した議論があります。
 「共有物」を巡っては、様々な解釈・意見がありますが、3つの形態が指摘されています。

 その1は、単純な「共有」で、数人が同一物の所有権を量的に分有しており、各々の持分は、完全に所有権であり、その持分は、他の共同所有者とは無関係に自由に処分でき、また分割も請求できます。個人主義色が強い内容です。しかし、目的物が1つであるため、互いに牽制し、拘束されるというものです。

 その2は、「合有」と呼ばれ、組合財産や共同で相続した財産のように、各共同所有者は、独立した所有権は持っていますが、全員はしばらくは目的物を共同の目的のために利用する拘束を受け、その期間では持分権の処分や分割の制限をうけます。

 その3は、「総有」とよばれ、村の部落が古くからもっている慣習による「入会権」のように、権利は質的に分有されているだけで、各人は、持分権がなく、また分割請求もできません。各人は、構成員として目的物を利用する権能しかありません。目的物の管理は協同体が行います。団体主義が強い内容です。

 ◎区分所有者の団体の財産の性格

 法人化されていない区分所有者の団体でも、一定の要件を備えれば「権利能力なき社団」としての扱いになり、「法人でない社団」として訴訟上も当事者能力と当事者適格があります。(民事訴訟法第29条)

 <参照> 民事訴訟法 第29条(法人でない社団等の当事者能力)

第二十九条  法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

 しかし区分所有法では、区分所有者の団体を明確にしていないために、この区分所有者の団体(通常、管理組合とよばれますが)に共同的に帰属する財産の扱い方も明確ではありません。

 区分所有者の団体が、自治会のような権利能力なき社団の扱いとなれば、個別財産は総構成員の総有となり、権利能力なき社団が解散するまで、構成員(区分所有者)には総体財産に対して分割請求権もなく、払い戻しもなく(平成17年4月26日最高裁)なるという「総有」の理論も妥当ですが、規約も集会での決議もない場合の区分所有者の団体の財産の処分行為の有効性、権利能力なき社団にも該当しないマンションで、集められた管理費や積み立てられた修繕費の管理・帰属はどうなるのか、また、権利能力なき社団がおこなった共用部分の修理でその工事代金が未払いになった場合に、債権者は誰に請求するのかなど、まだまだ、区分所有法では検討する事項が多くあります。

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第二十九条

2項  前項の行為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

特定承継人...買った人、贈与された人、競売で落とした人。区分所有法第8条も参考に。

★特定承継人が責任を負う理由 −第三者の保護−
 2項では、管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者が負う個人責任に関しては、その特定承継人にも責任が及ぶと規定されています。

 1項により、負担することになった個人責任は区分所有者が区分所有権(専有部分=室)を譲渡しても免れることはできませんが、この条項により譲渡人と並んで特定承継人である譲受人も第三者に対して責任を負うものとされます。
この譲渡人と譲受人(特定承継人)の債務の関係は、
民法での「不真正連帯債務」として考えられます。

 本来、区分所有者の団体(管理組合)の債権者を保護する方法としては区分所有者個々人に区分所有者の団体(管理組合)と共に責任追及ができることで十分であり、区分所有者は区分所有権を譲渡してもその確定した負担分を免れませんから、わざわざ特定承継人に請求を認める必要はありません。

 1項で区分所有者の団体(管理組合)は区分所有者に対しその費用負担割合(通常は専有部分による持分割合)で費用請求ができる債権を持ち、この債権は第7条で先取特権が認められると同時に第8条で特定承継人に承継されるものとされています。

従って、この第29条2項の規定がなくとも区分所有者の団体(管理組合)の債権者は区分所有者の団体(管理組合)が区分所有者に対して有する先取特権付の費用徴収債権を差し押さえて回収し、又は区分所有者の団体(管理組合)が特定承継人に対して有する債権を差し押さえて回収することができることになります。

 このように考えると、本第29条がなくとも区分所有者の団体(管理組合)に対する債権者は第29条の場合と同様の結果が得られますから、第29条は不要の条項となりそうです。

 結局、第29条は区分所有者の団体(管理組合)の債権者を特に保護しようとしたものではなく、区分所有者の団体(管理組合)の債権者が上記のように区分所有者の団体(管理組合)の債権に基づき各区分所有者の特定承継人に請求するという遠回りの手段をやめて直接請求を認めたものであると考えられます。

 そうであるとすれば先取特権も認めてもいいようですが、先取特権は一般に特定の債権の保護を目的とするものであって区分所有者の団体(管理組合)の債権者の債権というだけでは保護するいわれがないことから、先取特権については認めないものとしたようです。

特定承継人...債権発生のあとで買った人、もらった人。 これらの人に対しても第三者は請求できる。

    何も知らなくても特定承継人は債務を負う。特定承継人が債務を弁済した後は、売主(元の区分所有者)と買主(特定承継人)との問題となる。

ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新日:
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 9月 5日:「第29条」に、「共有」、「合有」そして「総有」を入れた。
また、「第26条4項」に、法人格なき管理組合についての原告適格を認めた、最高裁の判例を入れた。
2013年 7月22日:第4節 管理者 を全体的に追記などした。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2013年 3月 3日:第26条4項に判決の効力を追記。
第26条5項に「訴訟告知」を追記。
2012年 2月23日:平成23年の出題など記入。
2011年 6月 6日:ちょろちょろと
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年6月5日:ちょろちょろと
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年11月5日:品確法で管理者の訴訟当事者を追記
2009年7月6日:第26条4項に紛争での当事者適格を追記。
2009年3月21日

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