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王子デヴァムノ


 クマ・ラージャ(Kuma Raja)という王(プタオ)は上帝に命じられて俗界を統治するためシク・インラ(Gan Sik Inla)の地に降りた。シク・インラは百余の属国を従えていた。
 ある日、王の白象が本能的に食べなくなり、鼻を土に挿し、涙を流した。その不吉な兆候を見た老官は 直ちに朝廷に行き王に奏上した。
 奏上を聞いて王はすぐさま百の属国の諸侯たちを招集し、白象の奇妙な行動について議論するため謁見させた。
 ビンダ(Bi-nda)という名の大臣(panraong apraong)は額づいて次のように奏上した。
 「申し上げます、陛下。白象が急に食べなくなり涙を流したのは国家の急を告げているのです。」
 王はそれを聞きすぐに才ある占星術師(huer)のアラック(Alak)を呼んだ。占星術師アラックは命に従い朝廷にきて拝見した。王が白象の奇妙な行動について話すや、彼は次のように奏上した。  「陛下! 白象が急に食べなくなり涙を流したのはそれが一般民衆を愛していて、継承者のいない陛下の運命のためです。もし陛下が王位継承者たる王子を欲しいのでしたら、民に天に礼拝させ、全国で布施をさせ、道の至る所に井戸を掘り、あらゆる地に長い砦を建設して下さい。」
 王は彼の奏上を聞き、すぐに軍師にやらせた。一方、自分は上帝の夢のお告げを待った。
 翌日、王は夢で、天から宝玉でできた箱が落ちてきて自分がその玉の箱を手に取ったが、手元が狂って落としてしまったのを見た。目を覚ますと彼はすぐに文部百官を伺候させた。王は夢での出来事を話した。聞き終えたアラックは次のように奏上した。
 「申し上げます。私の考えでは、その夢は女性が男子を産むことを意味しています。しかし幼くして死んでしまうでしょう。というのも子宝に恵まれない陛下の運命によるものです。」
 王は尋ねた。
 「ならば王位継承の王子を得るにはどうすればいいのだ?」
 アラックは続けた。
 「申し上げます。もし王子に継承をお望みであるならば、唯一ある方法は陛下の命と引き換えです。」
 アラックの奏上を聞き、王は考えた。『自分はもう老齢である。そう長くは生きられまい。』それで皇后ルンダ・ルンガ(Runda Runga)を呼び、この後生まれてくる継承者たる王子のため王位を退く前に遺言をした。
 皇后は側室の美女たち、文官、武官たちと一緒に朝廷で王の言葉を聞いた。皆哀悼し、嘆き悲しんだ。
太陽が光り輝くその年終りの土曜日、皇后は王子を産んだ。その知らせを聞き、朝廷は百の国の伯爵、文官、武官とともに一ヶ月間にわたる祝賀会を組織した。三十日後、皇后は各官吏たちとともに命名の儀礼をして、慣習にしたがって王子をデヴァムノ(Dowa Meno)と名付けた。
 同時に、ビンダもまた俊秀な息子ウングチャル(チャム写本ではAngkar Dowa)を授かっていた。官吏は皇后にウングチャルをデヴァムノの友達にさせて欲しいと願い出た。そしてデヴァムノとウングチャルは親友同士になった。
 ある日、王子デヴァムノは母に尋ねた。
 「母君、父王はどこにいらっしゃるんでしょう。教えて下さい。」
 母はそれを聞き、腸がちぎれるほど心を痛め、涙を流しながら言った。
 「王子、私が受胎したその日の晩、先王は夢で凶兆を見られたのです。そして朝起きて、文官、武官、伯爵、才能ある占星術師を招集し、そのことを議論したのです。占星術師はそれは私が男子を産むだろうこと、しかし幼くして亡くすだろうと先王にお教えしたのです。そしてその理由は王の子宝に恵まれない運命にあると。もし子を生かしたくば、先王の命と引き換えであると。そのため、お前の父王は王位を退き、天廷ヘの道を探しに行ったのです。お前のため命を贖うために。」
 デヴァムノ王子は父王のことを母から聞き、我が身を嘆き、涙を流した。
 しばらく考え込んだ後、王子は母の前に跪き、奏上した。
 「母上、私は本当に幸福ではありません。父上のお顔をとても拝見したいのです。どうか父王を探しに行くのを許していただき私を早く喜ばせてください。」
 母は息子の奏上を聞き、非常に心を痛めたが、押しとどめることもできないとわかっていたので、仕方なく了解した。
 王子デヴァムノの退位は国中を動揺させた。
 デヴァムノ王子はウングチャルと一緒に白馬にまたがり、遠くの万里の道を手当たり次第走り回った。出発の時、数人の軍人と衛士を連れていた。しかし、道のりは遠く、咽は渇き飢え、しばらくして連れてきた者たちは餓死し、力のないものは踵を返して戻ってしまった。王妃は伯爵、文官、武官とともに軍人たちから往路での困苦を聞き、さらに憐れに思い、ただ天にその庇護と王子とウングチャルの安全を願うだけであった。

 ここはイラン・サンギタ(Ilang Sanggita)で、強国の首都である。王ルアインサナと王妃ソアロ・ガンガはたくさんの奇妙な魔術を知っていた。王子リジャ・サムレイ(Rija Dowa Samelaik)とリア・アリチャイカポアリ(Rija A ni Kes Kaphuari)は末の王女サパタン・ディヴィ(Sapatan Diwi)と一緒に宮廷庭園の楼閣に住んでいた。王子リジャ・サムレイはたくさんの難しい珍しい魔術を持ち、竜に変身して楼閣の周りで見え隠れしていた。一方、リア・アリチャイカポアリは神剣に変身する才能を持ち、楼閣の入り口の前で剣法をしていた。王女サパタン・ディヴィには朝夕六人の美女がそばに仕えていた。鳥が落ち魚が沈んでしまうほどの美貌を持つ王女はいたる所で皆に尊敬されていた。リジャ・ドカラヴァナは王妃の弟で、リジャ・サムレイの実の母方のオジであった。獅子軍団全ての指揮権を委ねられていた。
 首都に通じる道全てに、無敵で逞しい武将ジオジヌン(Jie Gi-ndung)の指揮下にある獅子が鎮守していた。
 そしてある日、イラン・サンギタの内廷で、リジャ・サムレイ王子が王ルアインサナの地位を継承するための尊王の儀式を行った。
 ある隣国であるピルン・ランタラ(Birung Langdara)には非常に美しいランタナ(Ratnda Cah ni Ya Sri Biyeng)という王女がいた。その王女はランタラ王と王妃ソアロ・ガンガの娘であった。そして彼女には二人の兄、長男のリジャ・デヴァ王子、次男のリジャ・ラサナ王子がいた。各属国は皆ラトナ王女を仙女(Tien nga 越語)と呼んだ。
 王は彼女のために非常に美しい広い区域の中心に彼女だけの邸宅を建てた。その家には堅固な城門があった。詩を作るのにふさわしい風景で、夕雲の影を移した青い湖水、花園、四方いづれも異なる桃源郷のようであった。
 彼女の噂はリジャ・サムレイの耳にまで達した。王自ら求婚にきたが、彼女は同意しなかった。
 おなじころ、テュムート(Sumut)島にあるディディダン(Didin Didan)国の王 インタン(In ni Ten)もまた求婚にやって来た。そして数えきれないほどの金銀財宝の贈物を持ってきて婚礼をする運びとなった。
 インタン王とラトナ王女が結婚するという知らせを聞くや、以前結婚を断られていたリジャ・サムレイは怒った。そのため、リジャ・サムレイは魔術を使って彼女を白象に変え、インタン王が彼女を娶りに来るその日、その象は森の奥深く逃げ込んでしまった。
 インタン王はそれを見て震え上がり、しっぽを巻いて軍官を連れ船に乗ったかと思うと帆を張り国に帰ってしまった。
 王妃ソアロ・ガンガと側室たちはラトナ王女が白象になり森の奥深く逃げ込んだと聞いて非常に胸を痛め、悲しんだ。
 またラトナ王女はといえば、白象に変身させられた後、身寄もなく、独りぼっちで山奥や森の奥深く生きていかねばならず、それゆえいつでも涙がまたこぼれるのであった。
 彼女はぶらぶらとランギリ山にまでやってきた。そして大樹の根元で足を止めると我が身の運命を嘆いた。悲しみ悩んでいると、突然、榕樹の梢から二羽の鷹が口論しているのが聞こえてきた。雄の鷹は尋ねた。
 「なぜあの白象はまた泣いているのかお前知ってるかい?」
 雌の鷹は答えた。
 「あの白象はもともとはラトナ王女だったのよ。それで彼女が自分の落ちぶれた身の上に泣いているのよ。でもきっと救世主が現われるわ。それは王子デヴァムノよ。」
 二羽の鷹がそう話すのを聞いて、白象は心の不安が消え、希望が湧いてきた。
 突然、遠くから二人が馬を走らせてやってきた。それこそ正にデヴァムノ王子とウングチャルであった。デヴァムノ王子は尋ねた。
 「なぜ白象はここまで来てるのに人を見ても逃げないんだろう?」
 王女、つまり白象は王子に答えた。
 「王子様、私はラトナというピルン・ランタラ国の王女だったのです。白象になったのは以前サムレイが求婚にきたとき私の父王が応じず、裕福なインタン王子との結婚を承諾したからです。サムレイは怒って魔術で私を白象にし、私は森の奥深くでひとり暮らす羽目になったのです。以前のように人間に戻りたいのです。慈悲深いあなた様は助けて下さいますね?」  王子デヴァムノは彼女の告白を聞き、白象のために魔術を使い、以前よりも美しい美貌のラトナ王女に戻してやった。王子のグループは彼女を連れてピルン・ランタラ国に向かった。道半ば、人気のないところに来ると、デヴァムノ王子はフクベノキ (1)の木陰でを見て、すぐに足を止め休んだ。ラトナ王女は言った。  「王子様、どうかここでお休みにならないで下さい。ここはよく獅子軍が木の実を取りに来るところです。彼らに見つかればまた私は捕まりリジャ・サムレイ王のところに連れていかれ献上されてしまいます。」
 デヴァムノ王子はそれを聞いても動ぜず、魔術を使い、その木の梢を指さした。たちまち木になっていた果実全てが地に落ちた。彼は二、三の実を拾い座ると食べながらリジャ・サムレイ王の獅子軍が来るのを待った。ちょうどその時、翼のある獅子が疾風のごとく飛んで来て、デヴァムノの両目から放たれた光輪にぶつかり地に落ちた。それはすぐにえらそうに尋ねた。  「そこのやつ!我が王のこの木の実を地に全て落とすなんて、お前は上帝の子供か?それとも俗人か?」
なんて向こう見ずなやつだ。儂は決してお前を放ってはおかんぞ!」
 デヴァムノ王子は答えた。
 「シク・インラは私の故郷である。私の父はクマ・ラージャ王だ。聞いたことがあるはずだ。私はラトナ王女を彼女の故郷に連れていく。お前たちの王はかつて彼女を白象に変えたが、今私がまた元の姿に戻して差し上げたのだ。私は彼女を妻に娶るつもりである。」
 「おい、デヴァムノ、もし彼女がラトナ王女だとすれば、直ちにリジャ・サムレイ王に献上するから彼女を引き渡せ。そうすれば儂は死罪を許してやる。さもなくば、凶悪なわしらから逃げれられんぞ。お前は儂が誰か知らんだろう?」
 王子デヴァムノはすぐに短剣を抜くと獅子の肩を一太刀切りつけた。それは慌てて跪き、殺さないでくれと頼んだ。
 王子デヴァムノはそれを許し告げた。
 「愚妹なお前なんぞ許してやる。お前はお前の将に言って告げろ。私はデヴァムノ王子で、ラトナ王女を元の姿に戻し娶ると。」
 そう言うと、デヴァムノは魔術を使い獅子が早く戻ることができるように短い空間を抜取った。大慌てで朝廷に飛び込んだ獅子軍は、今起きたばかりのことを全てリジャ・サムレイに告げ、それを終えると倒れ転げて死んだ。
 サムレイは文官、武官、伯爵たちを招集し、恨みを晴らすため討論した。
 リジャ・サムレイは飛翔術を使って空中に飛び上がると、厚い雲に隠れ、続けざまに雷を起こし、台風を引き起こし、騒々しく地を震わせた。
 サムレイの母方のオジはカラヴァナといった。その様子を見ていた彼はすぐにリジャ・サムレイを諌めに雲の方に飛び上がった。
 「サムレイ、デヴァムノにかまう必要なんかないぞ。奴の運命は儂の手のうちにあるのだ。お前は戻って休んで力を蓄えておきなさい。」
 それからカラヴァナはすぐさま兵を整え将に出陣の準備をさせた。その一方で、珍しい高度な魔術を知っている獅子将軍ジオジヌンに急報させた。ジオジヌンは命を受け、獅子軍とともに直ちに船に乗って合戦にやって来た。都につくと、ジオジヌンはサムレイに奏上した。
 「陛下! この私めのわずかな才能を信じて安心して下さい。デヴァムノのやつが、たとえいくら多くの奇妙な難しい魔術を知っていたとしても。私にも約束させて下さい、やつの首を取り陛下に献上することを。もし私めがデヴァムノの奴を捕まえられなかったらこの首を差し上げます。」
 リジャ・サムレイはその言葉に感激し、ジオジヌンに戦い巧みな将兵全てを指揮させた。兵士をねぎらう宴席が終わると、ジオジヌンはすぐに出陣した。彼は船に乗って空を飛び、一方軍師はその後を地を真っ黒に埋めて続いた。そしてある広い場所で、軍団はデヴァムノとウングチャル、王女ラトナに会った。
 武将ジオジヌンはすぐさま軍団にデヴァムノを包囲させた。ラトナ王女はそれを見て非常に恐れおののいた。デヴァムノは胸に彼女を抱き、なだめた。
 「どうか怖がらないで下さい。私たちは何も起こさせませんから。」
 その間、武将ジオジヌンは軍にデヴァムノに対し投降を呼びかけさせた。
 「やい、デヴァムノ! 頭がいいなら頭を下げて投降しろ! そしてすぐに生かしておいてやる代わりにラトナ王女を引き渡すのだ! さもなくばお前の身体を即刻切り刻んでやる。」
 デヴァムノはそいつらがわめくままにしておいた。彼は落ち着いたまま、全く変わらなかった。ラトナ王女が自分に対し誠実かどうか試そうと、王子はびゅっと高く飛び上がり、彼女の目の前で地に身体を投げた。王女は王子が敵の手に落ちるのを恐れ、自殺したと思い、それで剣を抜き彼の後を追って自殺しようとした。突然、王子は剣を取り上げると彼女を抱きしめ言った。
 「正に私の愛する妻だ。安心しなさい。」
 そう言うと、デヴァムノは敵の方を向いて大声で怒鳴った。
 「お前たち、よく聞け! 馬鹿でずる賢いやつらだ。お前たちは命あるままでいたいなら、そのまま一緒に帰れ。さもなくば私の剣の刃はだれ一人も許さないだろう。」
 武将ジオジヌンははるかに優勢なので嘲笑した。
 「デヴァムノ、お前、ほらを吹くな! お前の兄弟は卵を取って石とどうやって戦うんだ?」
 デヴァムノは彼らが嘲笑するのを見て、すぐに怒って地を足で力強く踏みつけた。そして短剣を抜くと、一声をあげぬ間にジオジヌンを仲間とともに殺し、敵は皆慌てて走って消えた。
 武将ジオジヌンとリジャ・サムレイの軍兵を殺し終え、王子デヴァムノとウングチャルは王女ラトナを連れて彼女の故郷に帰る道を探した。
 三人がランタラの都に着くや、王、王妃、そして朝廷の文官、武官、伯爵たちは皆限りなく喜び、慌ただしく身体の安否を尋ねた。
 自分の子を助けてくれた恩人のことをふと思い出したランタラの王は戻ってきてデヴァムノに尋ねた。
 「勇者よ!あなたの故郷はどこですか? なぜあなたは会って我が子を助けここに連れ帰ることができたのですか?」
 王子デヴァムノは跪いて奏上した。
 「陛下に申し上げます。私の故郷はシク・インラです。クマ・ラージャ王は私の父で、そしてルナシュリビヤンは母でございます。デヴァムノが私の名で、そしてここにいるのが同行している親友のウングチャル・ドワです。我々二人は父王をさがしている途中なのです。そして不幸にもランギリ山で災難にあっている王女にお会いしたのです。尋ねてやっと王女と結婚できないで、嫉妬のために、サムレイが魔術で白象に変えてしまったことがわかりました。痛ましいと思い、あるいは天命でしょう。私は王女を魔術で元の姿に戻し、ここにお連れしたのです。サムレイは途中で軍に迎え撃たせ、王女を奪い返すつもりでした。しかしやつらは我々によって大敗を喫したのです。」
 ランタラの王と王妃はそれら全てを聞いて、彼の勇敢さに感服し、命令した。
 「おい、お前たち、聞け! 勇者デヴァムノの勇気、忠誠心、そして大きな功労に感謝するのだ。彼は娘を助け、人間に戻して連れ帰ってくれたのだ。儂は勇者メノとラトナに命じる。儂の可愛い娘は堅く結ばれたのだ。そしてウングチャル、メノに同行していた友人よ。生涯の固いきずなのために儂の側室の中の美女のうちの一人を好きに選ぶがよい。」
 続けて王は群臣に命じて腕のいい職人に二軒の邸宅を建てさせ、数十日にわたって喜びの大宴会を催した。
 ラトナ王女とデヴァムノ王子の婚礼は二、三週間前に組織され、この後続けて貴族の娘パリンガンチャダとウングチャルの婚礼が行われた。
 二つの夫婦はおもいっきりの幸福な日々を送った。
 それからある日、婿の聡明さと才能の豊かさについて今だにまだ半信半疑であった王妃は、ラトナ王女を宮廷に呼んで試してみるように告げた。尊敬していたので、王女は母の命に従った。  デヴァムノ王子は王女が自分を試そうとしているのに気づき、悲しくなった。しかし口に出して妻には言わなかった。彼は友人のウングチャルと相談した。そして二人は何も言わずに、こっそりと立ち去った。  道半ば、二人は巨大なサンギ神に会った。その怒鳴り声は雷鳴のようであった。二人を見るや、サンギ神は丸飲みして食ってしまおうとした。しかしデヴァムノは短剣を抜いて応戦し、サンギ神をやってけようとした。ウングチャルは急いで王子を押しとどめ、手をゆるめた。巨大なサンギ神はそれを見てすぐに王子の足元に跪き、命ごいをした。そして自分のわずかな才能だが力の限り王子が困難にあったときには、次のように呼んでくればいつでもお助けすると約束した。『助けてくれ! おい、邪神サンギ!』そうすれば自分は助けに飛んでくると。  またランタラ国の王と王妃の話に戻ろう。デヴァムノとウングチャルがこっそり出ていってしまったことを知り、非常に悲しくなり、後悔して、すぐさま将兵にさがしに行くよう命令した。二人がサンギ神と道で話しているのをみつけると、ラトナ王女とパリンガンチャダはすぐに走って行き、頭を覆い、平身低頭して言った。
 「どうかお許し下さい。そのままで二、三説明させてください。敬愛する母君が愚かな私たちにあなた方を試すことをでそそのかしたのです。私共を憐れに思われるんでしたらどうか考え直して下さい。デヴァムノ様! あなた様なしでは生きていかれません。どうかどこにいっても私たちに日夜頭巾を高くあげ小箱を準備させてください。」
 デヴァムノはラトナ王女の涙ながらの説明を聞き、感動し心を痛めた。彼は心苦しくなり、二人の固く結ばれていたた頃を思い出し、自分と一緒に二人が行くのを了解した。
 リジャ・サムレイはというと、デヴァムノと交戦して負けた後、復讐の念を抱いていた。彼は全ての勇将、雄兵を招集し、すぐにデヴァムノに軍を率いて復讐に行くつもりだった。
 サムレイの近親たちは跪きひれ伏して奏上した。  「どうか陛下! 心を静められて軍事教練をお願いします。デヴァムノは不思議な難しい魔術をたくさん使えます。勝利をお望みなら、武芸をさらに鍛え、同様に魔術に精通しなければなりません。そうしてやっと勝利を手に入れることができるのです。」
 サムレイはそれを聞き、認めた。この後、サムレイはリア・アリチャイカポアリと王女サパタン・ディヴィに兵士の教練をまかせた。そしてサムレイとリチャカラヴァンは魔術を練習しに出かけた。
 ソンロン山で、二人は懸命に魔術を鍛えた。七年もの間、毎日二人はただ一つのトウゴマ の実(2)を食べ飢えを癒した。  リジャ・サムレイは海を池に、高い山を小さな丘にしてしまう魔術、火を起こして海を干上がらせてしまう魔術などを習得した。  二人は一緒に海が水溜まりにしか見えないほど高く迄上がる飛行術を練習した。そしてある日、カヌンサラパン王国へカクカクンカカン王に力を貸してくれと依頼をするために飛んでいった。
 この国は、一族が別れて暮らしていた。太陽、月、雨、風・・・全ては巨大な各神々が司っていた。彼らの王国の周りには堅固な無形の垣根によって囲まれていた。そのため、最初二人はどうやっても入ることができなかった。そして最後に魔術を使い通り抜けたのだった。
 その垣根を通り抜けた後、二人はすぐに魔術を使って無数に連なる高山、広大な海を通り抜けた。リジャ・サムレイはまた炎で深海を干上がらせ、数えきれないほどのエビや魚を死に至らしめた。カヌンサラパン王国の海口を鎮守していた将軍の館は、突然海が干上がったのを見て慌てた。突然、彼らはサムレイたちを見つけた。彼らは二人にこのように彼らの国土を破壊したのはなぜか聞いた。
 リジャ・サムレイは答えた。  「王に会わせろ! 私は話しがあるのだ。」  カクカクンカカン王は群臣の急報を聞き、すぐに二人を宮廷に招いた。  王は尋ねた。  「お前たちは儂の国で何をして何をさがしているのだ? 儂が手伝ってやるぞ。」  サムレイは奏上した。  「申し上げます。私共にはやらなければならない大事がございます。できるなら、あなた様にお力添えをお願いしたいのです。反乱者デヴァムノ、難しい魔術を操る奴は、我が王座と王国の領土を占奪に来ようとしています。私だけでは戦ってそれを防ぐことができそうもありません。それで仕方なく蛮勇を振るって探しにきてあなた様に御助力をお願いしているのです。どうか御恩は一生忘れません。守って下さい。」
 サムレイ王の懇願を聞いたカクカクンカカン王は助力に応じると言った。そう言い終えると王は軍師に命じて彼の意に応じるため全強将雄兵を集めた軍を選ばせた。正にカカン王が先頭に立つその軍隊は、旗で天を覆い、ランタラ国へ向かった。民衆は兵列を見ておそれおののき、声を掛けあって逃げ出した。
 デヴァムノはというと、リジャ・サムレイが兵を率いてやってくると聞き、すぐにウングチャル斗ともに応戦にでた。ウングチャルはデヴァムノに自分に先に敵と戦わせてくれと頼んだ。以前のサンギ神から授かった以前の魔術を試したかったのである。デヴァムノは了承し、ウングチャルに兵を殺す必要はない、ただ凶悪なあいつらを殲滅するようにと言った。
 カクカクンカカン王は遠くから一人だけのウングチャルを見て突き進んで迎え撃った。そして軽視して傲慢な態度で言った。
 「やい! そこのちび! どうしてあえて大胆不敵にもひとりだけなんだ? お前の主のデヴァムノをここへ呼んでこい。お前では役不足だ。」
 ウングチャルは怒って、足を踏みならして大声で叫んだかと思うと、天地は激しく揺れ、暗府の魔物たちが数えきれぬほど現われ、カクカクンカカン王の将軍を四散させた。デヴァムノはそれを見てすぐにウングチャルに暗府の軍を後退させるよう命令を出した。
 リジャ・サムレイ、リジャ・カラヴァンナはそれを見てすぐにカクカクンカカン王の為応戦にでた。しかし道の途中でアリチャイカポアリが道に出て跪き奏上した。
 「陛下! 私はサパタン・ディヴィ王女の命でまいりました。王のオジや王の兄は応戦する必要がないとお考えです。というのも彼女はデヴァムノを非常に才能があることを知らしめたからです。だから我々はもっと遠くから金の弓矢を使って撃つ必要があり、さらにディヴィ王女の真新しい占いによれば、今日は不利な戦です。」
 それを聞き、リジャ・サムレイはすぐに弓を張り、金の矢でデヴァムノを狙い撃った。カラヴァンナもまた金の矢でウングチャルを撃った。二本の矢はびゅっと飛んで、すぐに二匹の火竜に変身し、二人に巻きつき海の彼方へと連れ去った。海はすぐさま嵐になり、波は荒くなった。海の蝦、魚の類い全てはそれを見てやってくると、デヴァムノたちを持ち上げた。二人はばらばらに漂った。七日後、波によってやっと二人は再会することができた。ちょうどその時、ウングチャルはサンギ神の言葉を思い出した。それで大声で呼んだ。
 「おーい。サンギ! どうか俺を助けてくれ!」
 呼ばれてサンギ神はすぐに海面に現われ、デヴァムノとウングチャルを大海の二頭の火竜から助け出し、二人を抱きかかえるとノラパ王国に属している平坦な地に飛んでいった。そして二人を王女の専用の井戸のそばに降ろした。サンギは魔術を使いこっそり宮殿に入り、マチャックサ王女の服を取り、デヴァムノにわたして言った。
 「デヴァムノ王子、ウングチャルと一緒にここでしばらくの間休んでいて下さい。私はランタナに戻ってラトナ王女の身に何か起きてないか見て参ります。」
 そういうと、サンギ神は飛翔術を使って雲に昇りランタラ国に向かった。それからトカゲに姿を変え、王女の部屋近くの宮殿の入り口にとまって様子を探った。
 王女マチャックサはというと、衣服が無くなったのに気づいて、すぐに金のコガモに誰が盗んだか見ていないか尋ね、探すのを手伝ってくれと頼んだ。
 金のコガモは井戸のあるところに飛んでいき、二人を見つけて尋ねた。
 「ハンサムな見知らぬお二方! あなた達、王女様のお服を知りませんか?」
 デヴァムノは答えた。
 「ここにいましたが、知りません。もし王女を助けたいなら我々を客としてもてなし、王女の家のキンマを食べさせて下さい。」
 金のコガモは戻ってあったことを奏上した。マチャックサ王女は聞き直した。
 「これは本当?それともお前の作り話?」
 より確かなものにしようと、すぐに 妹トンラマイに官吏である貴族の娘と事実かどうか確認しにいかせた。二人は戻ってくると自分が見てきたあらゆることを再び奏上した。
 マチャックサ王女は女官をデヴァムノとウングチャルを招きにいかせた。王子を見るや、マチャックサ王女はすぐに恋心を抱き、自らの手で檳榔に石灰をつけキンマの葉でまいて彼に渡した。彼女は朝廷に入りあらゆることを父王クラチョマラに奏上した。王は急いで二人の若い客を内廷に入れた。王は二人にここにやって来た理由を尋ねた。王子デヴァムノは自分の転居の意図とともに一家眷族の境遇を細かく話した。王は彼が孝行ものであることに感服し、言葉を選んで慰めた。
 「敬愛する王子よ。二、三日、ここに滞在して楽しんでくれ。サンギ神が戻って来るときを待ちなさい。朕が知らぬ王国の若者がいるのは天のおぼしめしによるものある。天命に従い、朕はマチャックサ王女のために、あなたと一緒にはちまきを持ち上げ袋の準備をさせること(結婚すること)に同意しよう。」
 そう言い終えると、王は軍兵に森に行って獣を狩って来るように命じ、二人のために極めて盛大に新婚者を迎える儀礼をした。内廷中で、誰もがはしゃぎ喜んだ。天下の民もまた宴会を催した。そして王クラチョマラはまたトンラマイ王女とウングチャルの成婚の儀礼をした。  一年後、デヴァムノ夫婦は非常に賢く俊秀な息子に恵まれ、名をクマラとつけた。産まれてまもなくして、サンギ神がやっと戻ってきてデヴァムノに次のように知らせた。
 「リジャ・サムレイがラトナ王女に結婚を迫っていますが、一年間夫の喪に服していることを口実に王女様はまだ承諾しておらず、もし強制すれば後を追うと言っていらっしゃいます。しかしもし一年たって王子が戻らなければ、王女の生命はあやういので、早く戻ってあげて下さい。さもなくば一生煩悶し後悔するでしょう。」
 知らせを聞き、王子デヴァムノはすぐに朝廷に入り奏上し、別れを告げた。王クラチョマラは娘婿の奏上に感動し、軍師に象馬、護送の兵を準備するように命じた。
 デヴァムノは王に拝謝し別れを告げた。そして三人とも飛翔術を使えたので瞬く間にランタラ国に着いた。デヴァムノが庭園に足を踏み入れると、宮嬪美女の泣き声をきこえてきた。そしてラトナ王女が死期を迎えているということだった。
 正にその時、突然自分の慣れ親しんだ足音が聞こえてきたので、尋ねた。
 「愛するデヴァムノのような慣れ親しんだ人の足音が聞こえなかった?」
 彼女が死期の間際にそう尋ねるのを聞いて、デヴァムノは非常に胸を打たれ、ラトナ王女の床のそばまでそっと行った。そして彼女が突然自害するのを恐れて、彼女のまげに刺した刀を手をまさぐり抜いた。果たして自殺しようというあわい期待を抱いているとき、本能的に男の掌がまげを触ったのを感じて、サムレイがやって来たと思い、彼女はすぐにまげに手を伸ばし刀を抜き自殺しようとした。王子デヴァムノは彼女の手をつかみ言った。
 「やあ、愛するラトナ。デヴァムノ王子だよ。お前の夫だ。安心して目を開けてみなさい。もうお前と一緒だよ。」
 ちょうどこの頃、ウングチャルも彼女とおなじように姉を呼んでいた。彼女は気を落ち着かせてみて、心の底からとても喜んだ。彼女は王子の胸に身を投げると失神してしまった。しばらくゆすって呼んでやっと目を覚まし、王子の胸に頭を突っ伏すと泣き崩れた。サンギ神は二人が共に身体を放さない感動の場面に立ちあい、数回わめきランタラ国の山々を揺るがせた。
 ふと王子が王女サパタン・ディヴィを見て、待っている間、ラトナ王女の憂いを紛らわせるために兄サムレイの命によりその面倒を見に、そして慰めにに来ていたことを知った。王子デヴァムノはディヴィ王女に言った。
 「サパタン・ディヴィ王女、兄のリジャ・サムレイのところに帰りなさい。あなたがここに居続けるとあなたの兄さんはもっと恨みを抱いてしまいます。私のラトナを慰安し世話したあなたの功労は決して忘れません。」
 王女サパタン・ディヴィはそれを聞き、涙を流しながら王子を見て言った。
 「申し上げます。私の落ちぶれた身の上を憐れに思って下さるか、あるいはあなた様のお心にはなくても、どうか私の本心をお聞き下さい。サムレイの実の妹ですが、私は蛮勇を振るってあなたに憧れ愛していたのです。慎んで申し上げます。あなた様が姉ラトナととどまる恩恵を下さり、朝晩あなたさまのお世話をしたいんです。」
 デヴァムノ王子は彼女のその真情の吐露を聞き、言った。
 「王女サパタン・ディヴィ、もしあなたの心のうちがそのようであるならば、私の目の前で終始変わらぬ愛を誓いなさい。」
 王女サパタン・ディヴィはすぐに天に向けて両手を高くあげると言った。
 「高い天、広大な大地にかけて、今後この私がデヴァムノに対する終始変わらぬ愛についてもし心変わりしたならば、神よ! 死をもって償います。」
 真実の誓いを聞いた王子は、王女サパタン・ディヴィがラトナ王女と姉妹の関係になるのを了承した。
その後二、三日、デヴァムノ王子は軍師にリジャ・サムレイに王女サパタン・ディヴィが自分の妻になることを了承したと知らせるよう命じた。
 デヴァムノの軍師から知らせを聞いたリジャ・サムレイは非常に怒り、すぐに兵士を招集の命を出し、恨みを晴らそうと出陣の準備をした。
 リジャ・ドカラヴァナはその知らせを聞いて、すぐにやって来て諌めた。
 「リジャ・サムレイ!お前戦争の前にいらつくなよ。デヴァムノはお前がすでに知ってるように賢く才のある将だ。奴に勝ちたければ、もっと詭計を企てねばならん。デヴァムノと親しくなり、奴を妹の夫のように見なして宴会に呼べ。これで勝つ方法が出てくるのだ。わかるか?」
 サムレイはそれを聞いてこれはよい計画だと思い、すぐに親密になり、兄弟になりたいと諸侯に頼みに行かせた。それから王子を宴会に招いた。王子デヴァムノはその言葉を信じて何も考えずに承認した。
 クラチョマラ王の子、マチャックサ王女はと言うと、デヴァムノ王子と契りを結んでから、男の子を産み、クマラと名付けた。それで妹トンラマイと話して数人の宮嬪美女を連れてきて、ランタラ国に行く準備をした。王子デヴァムノとウングチャルと一緒に家族団欒の時を過ごすためである。一方、サンギ神はサムレイがデヴァムノと仲良くなったのを知り、また別れを告げた。
 四人の王女は皆サンギ神を見送った。特に王子デヴァムノだけは実の親(のように)見送りに行き道のり半ばでやっと戻ってきた。

 ここからまたサムレイの話である。リジャ・カラヴァンナのあくどい計略に従って、すぐにデヴァムノ王子のための大宴会を催した。サムレイは親密な情をあらわして彼を迎え、麹をつかんで酔っぱらい、催芽の酒の番に来た頃、デヴァムノとウングチャルは毒にあたり心身共に酩酊し、慌てていた。サムレイは勝利を得た。軍師に命令を出して二人を縛り火に投げ入れさせ、身体を無くしてしまうつもりだった。しかし不思議なことに、燃えていた火は突然消えてしまった。サムレイは再び命令を出して二人を海に連れていき沈めて魚のえさにしてしまうつもりだった。しかしその深海には水はなかった。サムレイは更にいらいらして怒り、二人の身体を鎮守の獅子将軍にひきわたした。それから軍師に命令してランタラ城で王女達を捕まえてこさせ無理矢理妻にするつもりだった。しかし王女達は慣習により夫の喪に服するという口実を使って従わなかった。
 グレンガ国には一匹の巨竜がいた。その長さは百丈に及び、それが口を開くと上あごは空の中ほどに達した。この国の宮殿は皆この竜の口の中にあった。この国の王には飛ぶ鳥は落ち魚は沈んでしまうほどの一人の王女がいて、名をジョタと言った。彼女はいつも庭園にある楼閣にいた。彼女はめずらしい魔術が使え、もし誰かが彼女の目を見たら、即刻心神喪失してしまうのだった。故郷も妻子も何も思い出すことはなくなってしまうのである。ジョタは今までどれほど多くの国のハンサムな王子を迷い惑わせたかわからなかった。  リジャ・サムレイはデヴァムノとウングチャルを殺す方法をさがしたが見つけられなかった。ジョタのことを聞きつけ、軍師に二人をジョタが毎日よく浴びに来る井戸の淵にまで連れていかせ、二人を王女に心神喪失にしてもらって故郷を忘れてもらおうと企んだ。
 習慣のように、王女はその日も井戸に水浴びに来た。そこに突然二人の見知らぬ若者が井戸端でどうしてかわからないが倒れて意識を失っているのに気づいた。一目見て、王女ジョタは余りの美しさに二人に恋心を抱き、彼女はまた近寄って観察し、それから蘇生薬を二人に与え目を覚まさせた。王子デヴァムノは王女から薬をもらったときぼう然とし、ここがまだどこかわからなかったが自分の目の前に降臨した仙女のような美女が立っているのに気づいた。そしてすぐに、王子はその美しさと彼女の溺れるような両目に心神喪失してしまった。そして以前のことは全て忘れ、ただ彼女から愛されることだけを願った。
 王女ジョタはウングチャルにも蘇生薬を与えた。目を覚ますや、慌ててウングチャルは一心不乱に一気に走り出して難から逃れようとした。しばし走ってから、彼はすぐにサンギ神に助けてくれと叫ぶと、その目の閃光が現われた。サンギ神はウングチャルに自分を呼ばなければならないようなどんな不測の事態が起きたか尋ねた。ウングチャルはサンギ神にサムレイの謀略にはまったこと、にそれから蘇生し、デヴァムノがジョタ王女の色香に惑わされていることついて一部始終をはなした。
 ウングチャルが言い終えると、神はすぐに行ってデヴァムノ王子とジョタ王女の手をつかみ、グレンガの都を離れた。そして魔術を使って媚薬の魔術を解いたのだった。王子デヴァムノは難を免れた。魔術の効果がなくなっても、ジョタ王女は彼の妻になりたいと願った。
 リジャ・サムレイはというと、デヴァムノの妻を自分の妻にできず、喪が明けるのを待たねばならず、非常に怒っていた。しかしどうやったら待たなくてすむのかわからず、しかたなく座って指折り日を数えた。そして喪が明けると、サムレイはすぐに数人の将軍をランタラ国に派遣して各王女に会わせた。しかしその地に足を踏み入れるやいなや、サムレイはデヴァムノが玉座に荘厳に座って、五人の艶めかしい王女と話しているのが目に入った。サムレイはすぐにいらつき、足を踏みならし、狂ったように喚いた。そして兵士に命令を出し、デヴァムノの城の周囲を包囲するよう命じた。激しく迎え撃つことに決した。
 サムレイを狂ったように吼えさせたものの、デヴァムノはまだ何もおこってないかの如く平然としていた。
以前と同様、今回もウングチャルはデヴァムノに自分に先陣をきらせてくれるよう頼んだ。
 サムレイ軍は大軍で、アリ・チャイポアリ、ブラマナのように珍しい魔術を使う高い才能を持つ多くの将軍がいたが、ウングチャルの方はというと一人だった。しかし両者は激しく交戦し、三日三晩交戦した後、結局サムレイの軍はまた敗北した。
 サムレイの実の弟アリ・チャイポアリは自分の兄が敗北しているのを見て、怒って恨みを晴らすため軍を率いて出陣した。
 アリ・チャイポアリは頭は二つの美しい金飾をつけ、身には金の鎧、手に棍棒のいでたちで、ウングチャルを狙って槍を素早く投げ棍棒を力強く打った。しかし棍棒が正にウングチャルにあたるや、急に炎が吹きだし、昼間のように照らし、連続してきらめいた。両軍とも朝から昼まで交戦し、チャイポアリの兵士は数えきれないほど戦死した。チャイポアリのミスに乗じて、ウングチャルは魔術を使って彼を空から地に落として殺した。ウングチャルは狼神を捕まえ、チャイポアリの生きている木はデヴァムノ王子に渡した。
 リジャ・カラヴァンナは自分の孫が戦死したのを知り、すぐに紙張りの竜 (3)にまたがり、呪文を唱え、復讐にウングチャルを殺そうと突き進んだ。しかしそれを見たサンギ神はすぐに魔術でカラヴァンナと戦い、ウングチャルの危機を救った。カラヴァンナはサンギ神が突っ込んでくるのを見ると、燃え盛る火になり、生きながらに焼き殺そうとした。しかしサンギ神は炎の周りびゅっと飛び、雨になり燃え盛る炎を叩き消してしまった。両軍は七日七晩戦った。そのためたちまち天は暗くかすみ、民は恐れ手を取りあい、難を避けた。最後にサンギ神はカラヴァンナを計略を使って捕まえ、その身体を二つに引き裂くと、怒りをおさめるため血をすくい飲んだ。そしてその身体の半分をつかむや、カラヴァンナの城に力いっぱい投げつけた。そしてもう半分は彼らの宮廷の中にある池に投げ込んだ。
 リジャ・サムレイは更にいらだち怒り、すぐに弓矢を肩にかけると、赤紫色の竜に飛び乗り、大軍を連れて出陣してきた。
 城に座っていたデヴァムノ王子は、サムレイが大軍を率いてやってきたのを見ると、すぐに刀を掴み、待たせてあった馬に跨がった。王女達もまた王子に頼んで手に護身刀を握り出陣した。
 王女達は刀を持った手を高く上げて、サムレイの方だけに向き言った。
 「サムレイ、この剣の刃をよく見ろ!お前を放ってはおかないぞ!」
 ちょうどその頃、雷が撃つような声が響き渡った。皆どうしてかわからずぼう然としていると、デヴァムノ王子が笑いながら、二つに折られ、彼の足もとにたたき落とされたばかりのサムレイの金の矢をかがんで拾ったところだった。サムレイにもう矢を撃たせないように、デヴァムノは短刀を振り降ろし、サムレイを真っ二つにしようとした。しかし、突然一閃の炎が吹きだした。二人のどちらも最強の魔術で戦った。
戦いは七日七晩続いたが、依然として勝敗はついていなかった。二人は更にもう七日七晩にわたって海の臍で戦い、無数の蝦や魚を殺したのだった。そして二人はまた二頭の竜になり、さらに三日三晩地下で戦い続け、山を崩壊させ、地を騒々しく揺らしたのである。デヴァムノは戦えば戦うほど持久力が増し、最終的にサムレイが戦死した。
 サパタン・ディヴィは自分の兄の遺体を見て憐れに思い、さめざめと泣いた。彼女の悲痛な泣き声は天廷にまで届いた。玉皇はすぐに天使に事情を見に行かせた。そしてサムレイを生き返らせた。
 サムレイは命を助けられるや、すぐにその場で怒鳴り散らした。
 「デヴァムノめ! 今度こそお前を必ず殺してやる。お前の国を復讐の炎で平らげてやる。」
 そう言うや、サムレイはすぐにデヴァムノを討ちに行った。二人とも飛び上がって空中で戦い、カンカンと剣を戦わせ、連続して雷を引き起こした。天は震え地は揺れた。風は騒々しくうなりをあげ、空はかすみ暗くなり、いつが昼でいつが夜だかわからなくなった。世間は混乱した。
 玉皇はそれを見てまた天使を地に降ろし戦いをやめさせた。そして二人を呼びだし、なぜまたこのように激しく戦っているのか尋ねた。二人の奏上を聞き、玉皇はラトナ王女の奪いあいがその理由と分かり二人を諭し調停した。玉皇は魔術を使いラトナ王女の影を抜き、別の彼女を作ってサムレイに渡し、二人を下界に戻した。
 デヴァムノとサムレイは天命には逆らえず、互いに頭を下げ謝意を表し、命に従いたいと述べた。
 ランタラ国で皆が集まって再会してしばらくして後、デヴァムノ王子は王と王妃に自分と五人の妻を年老いた母に孝行するために帰らせてくれと願い出た。
 ランタラ国王は文武百官に命令を出して、デヴァムノ王子の送別会を催した。送別会は非常に盛大で、奉仕する二人の武官がいた。デヴァムノとウングチャルはまだ白馬にまたがっていた。王女達は奉仕する国軍と一緒に船に乗っていた。その船は天を覆うほどの旗があった。
 シク・インラ国の国境を兵たちと一緒に守っていた将軍達は、突然船団が現われたので自分の国に帰り、大慌てで、兵を集め将軍に指揮させて戦いにこさせて下さいと朝廷に急いで報告した。その時、サンギ神は空にいて見ていたので、すぐに飛んでいき知らせた。サンギ神は巨大な翼を持つ巨大な兵士に変身し、シク・インラ国の将兵の目の前に飛んでいった。そして大声で叫んだ。
 「やあ、シク・インラ国の英雄諸将たち! 兵を止め武器をおさめなさい。我々の方に向かってくる船団こそ、王子デヴァムノとウングチャルで、日夜待ちわびていた人だぞ。」
 その知らせが唐突だったのでシク・インラの将兵はまだ半信半疑だった。それで巨人の衛士、すなわちサンギ神にもし本当なら、一言誓えば信じようと言った。巨人の衛士はすぐに天を見つめ、非常に毒のある言葉を誓った。三官諸将はそれを見て非常に喜んだ。急いで跪き頭を下げデヴァムノ王子を迎えた。
 皆が王子の顔をはっきり見ることができるようになると、軍師はすぐに朝廷に急報し手王妃に知らせた。王妃は非常に喜びすぐに盛大に宴会を開かせた。
 二人の子の母は長い間遠く離れて今やっと集まり再会し、皆喜んだり悲しんだりして多かれ少なかれ涙を流していた。王妃は王子デヴァムノにでて言って戻ってくるまでのことを話すように言った。
 王子デヴァムノは母后にただ簡単に話させて欲しいと願った。と言うのも今、日々の苦難に溢れた行程を事細かにはなすのは不可能だからである。そこであとで母に報告書をかくことで許可をもらった。そして王子は席を外すと、自分の官邸に戻り閉じこもって一冊のノートを取りだし詩で行程の苦しみを書き上げた。
 まもなく、王妃は一人息子の記録を手に取り喜んだ。そして皆と一緒に話した。
 「我々は皆さん全員、それとともに私たちの子供を助けていただいたサンギ神に感謝いたします。今日、我々は我が子たちとまた再会することができました。我が子の功労は決して忘れません。ちょうどよく今日、各国の諸侯とともに朝廷内の伯爵、文官、武官が皆そろっています。そこで私は敬愛する王子に玉座を継承して欲しいと思います。諸卿はいかがお考えか?」
 全ての人が皆歓声を上げ賛成した。そして王デヴァムノに万歳を絶叫した。
 王妃を選ぶ時になって、各王女は皆ラトナに譲ることに同意し、そして第二夫人になることを望んだ。
 即位式のあと、デヴァムノはウングチャルに兵を管理する職官大臣を担わせた。
 あらゆることが平穏無事に進められるのを見て、サンギ神はシク・インラ国の王にいとまごいを求めてきた。
 サンギ神を引き止めるのは不可能と知り、デヴァムノ王とウングチャルは王妃と一緒に側室のように皆共感し大宴会を開いて感謝の儀礼をし非常に盛大にサンギ神を見送った。伝説は次のように言う。その時がちょうど子年四月で、チャム暦の最初の点であると。




1、小さく暗い緑の葉、すべすべしていて固い。(ヴェトナムにおける薬木辞典 446)ノウゼンカズラ科の植物。ハノイ、ドンナイ、カントーに植生。食用のため栽培される。(牧野)(『世界有用植物事典』 / 堀田満[ほか]編 平凡社, 1989.8)
2、 トウダイグサ科唐胡麻属唐胡麻(トウゴマ)・・・・油脂植物として栽培される一年草。種から蓖麻子油を取る。(牧野富太郎,1983『原色牧野植物大圖鑑(続編)』北隆館 参考) インド、中国、日本、ヴェトナム、台湾、タイ、フィリピンに植生。(ヴェトナムにおける薬木辞典)
3、 冥器の一種。紙で作った葬式に使う竜のこと。

PHAM XUAN THONG, THIEN SANH CANH, NONG QUOC THANG, LUC NGU編 1978,"Truyen co CHAM"nha xuat ban VAN HOA DAN TOC

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