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ドゥオム べ

 かつて、結婚して既に長い年月が過ぎたが、まだ子のない夫婦がいた。二人は継承してくれる子供がとても欲しかった。
 しばらくして妻は妊娠した。お腹は非常に大きくなり、臨月を迎えていたがいまだ陣痛がなかった。 二人はとても心配した。さらに長いときが経って、妻はやっと出産した。 奇妙なことに、産まれたばかりだというのに、赤子には歯があり、しゃべることができ、走り回った。 とても怖くなった夫婦ははるか彼方の地に子供を捨てに行った。 これを知った彼の父方の祖父は、すぐに家を捨て森に引っ越した。
 両親に捨てられた後、赤子は至る所を放浪した。高い山にある焼畑を探しては玉蜀黍や野菜を盗み食いした。 祖父は日々畑に行き、玉蜀黍や野菜がなくなっているのを見て、猿がやって来て荒らしているんだと考え、隠れて捕まえた。
 赤子の長い話を聞いて、彼は自分の孫と確信しすぐに自分で育てることにした。
 祖父は孫をとても可愛がった。祖父は釣り針を作り彼に魚釣りに行かせた。そして彼をドゥオムべ(釣り針)と名づけた。  
   祖父と一緒に住むようになってから、赤子は風のように早く成長した。間もなく、彼は元気で逞しい若者になった。  ある日、彼は川に釣りに行き、餌をかけながら歌っていた。
 「餌をやるから舐めろ、舐めろ。釣った魚はバシャバシャ溢れろ、貝の餌はオイオイ言え。」
 その川の辺りには二人の仙女がいつも水浴びに来ていた。二人の衣の胸の部分には獣や鳥の刺繍があった。
 ある日、二人の仙女が浴びに降りてきた。そこで魚を釣りながら歌うドゥオム べのうまい歌をしばしの間こっそり聞いたあと、ドゥオム べに言った。
 「さあ、他の場所で魚を釣ってちょうだい。私たちが浴びるから。」
 ドゥオム べは家に帰りこのことを祖父に話した。祖父は言った。
 「彼女の服をこっそり盗んでしまいなさい。きっとお前についてきて妻になるから。でも憶えておきなさい。呼ばれても決して振り向いてはいけないことを。」
 数日後、二人の仙女がまた浴びにきた。ドゥオム べは顔をそむけたふりをした。二人が水に潜るのを待って、彼は二人の服を探しだし取って走って逃げた。
 二人は慌てて呼んだ。
 ドゥオム べは振り向いた。彼は突然体が柔らかくなるのを感じた。だんだん力がなくなり、それから水牛の糞のように溶けてしまった。二人はやって来て服を取ると飛んでいった。
 家では、真っ暗になるまで祖父が孫の帰りを待っていたが、帰ってこないのですぐにタイマツを持ち探しに出かけた。 川岸近くに来て、祖父はねばねばした肉と骨の混ざった堆積物を見つけた。 彼はこれが災難に遭った人のなれの果てということを知っていた。彼はしゃがみ込み、小枝を取って肉の堆積物の中にある足の骨に入れ泣いた。

「ドゥオム べの骨、それとも違うかい? もしもし他の者の骨ならばコロンコロンと鳴け。ドゥオム ベの骨ならコリエン、コリエンと鳴くのだ!」
 骨はコリエンコリエンと鳴いた。それが自分の孫だとわかり、すぐに葉を採り包み直すと、持って帰り鍋に入れた。そして囲炉裏にかけ沸し、高床にひっくり返し、扇子をつかみ、扇ぎながら歌った。
 「走る足を扇ぎ、熱心な手を扇ぐよ。」
 瞬く間に、ドゥオム べが現れ、伸びをして言った。
 「僕とても長い間夢を見ていたよ。」
 祖父は言った。
 「お前はねてたんじゃあないよ。死んでたのさ!」
 「どうして?」
ドゥオム べは驚いて尋ねた。
 「仙女が呼んだときお前が振り向いたからさ。儂の言うことを聞きなさい。次はもし呼ばれても振り向かくなよ。」
 翌日、ドゥオム ベはまた以前のように川に行き魚を釣った。昼、二人の仙女が水浴びに来た。二人は以前より美しい彼を見た。彼女達はしばしドゥオム べの歌を聴いた後、また自分たちが浴びるから他の場所に行くように彼に告げた。
 ドゥオム べは森に行った。二人が水に入るのを待ち、彼はこっそり服を取り、飛ぶように逃げた。 二人が呼んだが、今度はもう振り向かなかった。
 二人は天に戻ることができず、すぐに葉を折り胸、体を隠し、ドゥオム べの足跡を追った。そして家に来ると嫁にしてくれと請うた。これより、彼はもう魚釣りには行かなかった。二人の仙女が魔法を使い食料や生活用具をくれたのだった。三人は平穏に楽しく暮らした。  このあたりには、告げ口好きの老女達がいた。ドゥオム ベの妻の話を知り、老婆は皆に言いふらした。
 噂は王の耳にも届いた。王は二人の仙女を奪い連れ帰り妻にするつもりだった。それでドゥオム べを呼びだして告げた。

「才能があってこそ仙女を娶ることができるのだ。今、儂は目を治すために虎の乳が必要だ。お前、儂のために森に行き虎の乳をとってこい! もしできないなら妻を差し出せ!」  
ドゥオム べは家に帰ると妻は尋ねた。彼は泣きながら言った。
 「王様が僕に森に行って虎の乳をとってこいって言うんだ! もしできなければ、王はお前たち二人を宮廷に入れるって。」
 二人は告げた。
 「心配しないで! この服をもって森に行って! 万が一虎に会ったらこれを渡して。」
 ドゥオム ベは森に服を持って入った。虎に会うと、彼はそれをさし出し少し乳をくれと言った。 虎はすぐに乳を彼に搾ってくれた。
 王は彼が虎の乳を手に入れ戻ってきたのを見て怒りを露にして言った。
 「熊の乳を混ぜないと、虎の乳では目は治せんぞ! もう二日やるから熊の乳を持ってくるのだ!」
彼はまた帰って妻達に言った。二人はまた熊の刺繍のある服を彼に持っていかせた。 
 熊は乳をくれ、彼に熊の子を娶らせた。
 熊の乳を手に入れた王は、また言った。
 「野牛の乳を加えてやっと使えるのだ! もう二日やるから取ってこい!」
 ドゥオム ベはまた妻の野牛の刺繍のある服をもって貰いに行った。野牛は乳をくれ、彼に子を娶らせた。
 王は三度にわたり彼が乳を手に入れてきたので激怒した。王はすぐに彼を殺すほかの方法を探した。ある日、王は彼を呼び尋ねた。

「宮廷で、三百尋の籐が必要なのだ。太鼓の枠に巻きつけるために。三日やるから取ってこい。できなければお前は首切りに処す!」
 今度は、ドゥオム べはとても心配した。彼はまた二人の妻にこのことを話した。二人は彼に小さな籐を一巻き渡した。王のところに行き、彼はそれを納めた。それを見て、王は今度こそ彼が死ぬと思ったが、いざ測るときになると、いくらでも引くことができ、籐は長くいつ終わるかわからないほどだった。
 妻を手に入れようとドゥオム ベを殺す方法をさがしてもうまくいかず、王は怒り狂った。ある日、一人の官吏が次のように言った。

「あやつの家には家畜がいません。王は奴を召喚して闘牛、闘犬を挑みましょう。負けたほうが妻を失うと。奴の妻を奪う方法はもはやこれだけです。」
 これを聞き、王は闘犬、闘牛のためにドゥオム ベを召喚した。二人の仙女の妻の言葉を聞き、彼は熊の妻、野牛の妻(ただしどちらも姿は人間である)を連れて都に入った。
 彼の顔を見るなり、王は犬をけしかけた。直ちに一人の妻が熊になり王の犬達を全て噛み殺してしまった。王はまた彼を突かせようと野生の水牛の群れを放した。直ちに野牛が跳びだし、瞬く間に王の野生の水牛は全て突かれて腸がとびだした。
 すなわち王の敗北だった。しばらくして王にある人が次のように知らせた。

「ドゥオム べの妻は地上のさまざまなものに対して命令できる能力を持っているだけです。水中のものには命令できないのです。彼を殺したければ、ワニの乳を持ってくるように命じればいいのです。もしなければ罪を問うと。」
 今回はその官吏の考えは正しかった。ドゥオム ベの妻は夫のためにワニの乳をとることはできなかった。彼はとても悲しくなり、自暴自棄に淵に飛び込んだ。彼はワニの穴に落っこちた。しかし不幸にもその時母ワニは留守で、穴の中には子ワニがいるだけだった。彼は子ワニたちに王に差し上げる乳を少しくれないかと頼んだ。しかし自分たちがまだ飲んでいるからとかれらはその申し出を拒絶した。ちょうどその時、母ワニが戻ってきた。母ワニは彼の体を引き裂こうとやって来た。しかし突然水面で野獣達の大声が聞こえてきた。叫び終えると、彼らは川の水を飲み干した。ワニは恐れて彼に乳を与えた。
 ドゥオム ベが水面に出ると、王の船もまたちょうど来たところだった。王は彼を見てすぐに軍兵に船をぶつけて殺すように命じた。しかしその時、二人の妻はまた獣達に命じた。獣達は一斉に声を上げたかと思うと水嵩は増し渦巻き、船は転覆した。王は慌ててドゥオム べに頼んだ。もう獣達が吼えるのをやめさせてくれと。しかし彼は聞かなかった。船は沈み、軍官も皆溺死した。王だけは、ドゥオム ベに捕まり罪を問われ両耳に鉛を死ぬまで入れられた。この後、ドゥオム ベは王になり、凶悪な王の一族全てを捕まえ奴隷にした。
 

ドアン トゥーが語る


  To Van Hoc Dan gian編 2000,"Truyen co cac dan toc Viet Nam 1" nha xuat ban Da Nang

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