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竈神



 昔三人息子を持つ人がいた。みんな平和に暮らしていた。息子たちは各々自分の家庭を持っていたにもかかわらず、年老いた父に孝養を尽くしていた。
 臨終の間際、父は三人の子供を前に述べた。  
「目を閉じる前に、お前たちの思いやりの心を知りとても嬉しい。朝から晩まで懸命に儂の面倒を見てくれた。儂もはもう年をとりすぎた。これも天の定めだ。もし儂が目を閉じたら、お前たち、儂の言うことを聞いてくれ。
儂の棺桶を担いで、その棺桶を支えている紐が切れた場所で儂を弔っておくれ。そこがたとえ石の上だろうが、渓流の中だろうと。これは心に留めておき必ずそうしてくれ。」
 三人は素直にうなずいた。父はそういうと息絶えた。
 三人は父の言葉の通りにした。入念に死体を包んで入棺すると、彼らは紐を使って慎重に棺桶を縛った。そして西を目指して担いでいった。三人が棺桶を担いではや数日たった。しかし紐は切れなかった。ある日、大きな岩の上を横切ったとき、突然紐が切れた。それは日没時だった。そこで三人はその岩の上に父の棺桶をおろした。長男が2人の弟に言った。
 「こんな岩では穴を掘ることもできない。お前達は家の様子を見に帰りなさい。もう家を空けてからだいぶ経つから。三人で父の遺体がなくなるまで順番に当番をしようではないか。」
 その日の晩、長男は薪を切り、火を起こして棺桶のそばに座って番をした。一番鶏が鳴くころ、彼は疲れて木の根本に寄りかかって居眠りをしていたが、突然、棺桶の置いてある下の方から大声がし、自分の寝ていたところが大きく揺れたので、びっくりして飛び起きた。彼はばっと起きて棺桶を見つめた。すると棺桶の置いてあった石は広い割れ目ができ、棺桶はというとその割れ目に落ちかけているではないか。そこにまた棺桶の下の割れ目から助けを求めるうめき声が聞こえてきた。
「お-い、窒息してしまう。息ができない。誰か助けてくれ。この棺桶を引っぱり上げてくれたら、金の壺をあげるから。」
それを聞いて彼はすぐに言った。
「一体どんな怪物で名はなんという? その金の壺はどこにある? もし言っていることが本当なら助けてあげるよ。」
 その助けを求める声はすぐに答えた。
「我こそこの山すそに横たわる巨竜である。誰かの棺桶が身をよじってあくびしていたときに口に入ってしまったのだ。だからどうか引っぱり上げてくれ。もししてくれたら礼を必ずしよう。儂の言った金の壺は太陽が上る方のこの山の麓のすぐそばの菩提樹の木の根元に埋まっている。」
 怪物の話を聞いた彼は、半信半疑でその山の麓に行くと、怪物の言った場所に行き本当かどうか確認した。突然、目の前に閃光が走ったかと思うと、純金の壺がその姿を半分現した。彼はそれをとりだした。その頃、太陽もまたきらめき輝きはじめた。
 翌日は次男の番だった。長男は念入りに諭した。そして金の壺を持って帰った。その日の晩、次男もまた兄の言った通りにした。薪を切り火を焚き、父の棺桶のそばに座った。そして彼もまた巨竜の助けを求める声を聞き、そして竜から教わった菩提樹の木の西側に埋められた銀の壺を手に入れた。
 三男の番になった。彼もまた火を焚き、棺桶のそばの大樹の根元によりかかった。四更の初めの頃(訳注:真夜中の1-2時の間)、うとうとしていると棺桶の下から突然うめき声が聞こえてきた。
 「おーい、この棺桶を儂の口からぬいてくれ。お礼に霊験あらたかなヒョウタンをやるから。これを使うと死んでも生き返ることができるんだ。」
 それを聞いた彼は心配になった。
 『どうして2人の兄さんのように金や銀の壺ではなく、薬の水の入ったヒョウタンだけなんだろう。』
そう考えた末の弟は声を出して聞いてみた。
 「どうして僕にはただの水の入ったヒョウタンしかくれないの? その水を使って何をする? 教えてくれれば助けてあげるよ。」
 怪物は答えた。
 「聖なるヒョウタンはとても霊験あらたかで、万物を死から蘇らせることができるのだ。死んでからすぐであろうが、死んでから時間が経ってしまっていても、この水を注ぐだけで必ず生き返る。」
 巨竜がそういうのを聞いて、彼は菩提樹のそばに行き登って見てみた。木の梢に水で一杯の小さなヒョウタンを見つけた。彼がそのヒョウタンを取るころには、太陽もまた輝きはじめた。彼は薬をかけて父を生き返らせると同時に、薬の霊験あらたかさを確かめようと棺桶の場所に戻ってきた。しかし戻ってくると、棺桶はどこにもみえなかった。そして岩の割れ目もなくなっているのだった。それで彼はヒョウタンを手にして帰路についた。
 帰り道すがら、 ヒョウタンの水の霊験のあらたかさを試そうと彼は道端によくある動物の死体を探した。ふともう死んでからだいぶ経つ犬の遺骸が目に入った。それですぐ試してみることにした。最初の一滴でその肉と皮が蘇り、二滴目で呼吸を始め、そして目を開き生き返った。彼は非常に喜んでそのヒョウタンを抱えて家に帰ると、2人の兄に起こったことを話して聞かせた。
 このヒョウタンを手に入れてからというもの、どこかで死者がでたという知らせを聞くたび、彼はそこに行った。彼餓死者を生き返らせることができるということは程なくしてそこいら中で噂になった。
  ある日、彼が留守の時、無頼漢が家を荒らした。彼らは彼の妻を拷問にかけ、金銀を手に入れた。そしてもう何もないとわかると、妻の腹を切り開き、内臓を全て引きずり出しほうり投げ、それから一目散に逃げた。
 彼が帰ると、血溜まりに横たわる妻の姿が目に飛び込んできた。彼が妻を生き返らせる方法を考えていると、以前彼が助けてやった犬が家に入ってきた。彼はその犬を呼び、言った。
 「犬よ。この間お前は死んでいた。しかし私はお前を生き返らせてやった。今度は俺の妻が死んでしまった。そしてやつらに内臓を奪われてしまったのだ。お前、儂のためにしばらくお前の内臓を貸してくれないか? 妻が助かったらもう一度お前を助けてやるから。いいかい?」
 犬は尾を振って同意した。彼は犬の内臓を腹を開いて取りだすと、妻の遺体の上に置いた。そして聖なる水を妻の体中に振りかけた。突然、彼女は身体を動かして目を開き、夢から覚めたばかりのように唖然とした様子で彼を見つめた。彼は妻を抱いて彼女に起こった出来事を全て話して聞かせた。そしてそれが終わると、妻に犬の内臓を作るから破れた布切れをとるように言った。そして彼は布きれの塊に泥を塗り、それから犬の腹部において霊水を振りかけた。犬は生き返った。
 夫が不思議な薬を持っているのを見て、妻は非常に驚き、興味を持った。
 ある日、夫の留守に、彼女はそのヒョウタンを取りだし、二本の指をヒョウタンの口に差し込み水をつけると、その水を顔に塗った。彼女が鏡を覗いてみると、自分の顔がまるで化け物の顔のようになっているではないか。驚いた彼女は、霊水を頭から足のつま先まで体中に振りかけた。
 奇妙なことに、次に鏡を見たときには、もう自分の姿ではなかった。髪はかかとに当たるほど長く、皮膚は宝石のように白く、きめ細かく赤く健康そうだった。彼女はまるで舞い降りた仙女、あるいは嫦娥のように美しかった。夫は帰って彼女を見ると、その美しさに度肝を抜かれ放心した。
 夫がまばたきもせずに自分を見つめているのを見て、彼女はにっこりしながらも、すまなさそうに自分の犯した過ちを夫に話した。そして許してくれるよう頼んだ。
 夫は妻が非常に美しくなったのでとても喜んだ。しかし霊水については惜しんで霊水のあった場所にネギ、桂の木を植えた。
 満月にならないうちに、桂の木は一尺半ほどの高さになり、ネギは二尺を越えた。
 彼の妻が絶世の美女だという知らせは王の耳にも届いた。王はすぐに自分の妻にしようと官に命じて彼女を捕まえて宮廷に連てこさせようとした。夫婦はとても愛しあっていたが、王の命には逆らわなかった。二人は別れを惜しみつつ再会を誓った。
 そしてある日、ぼうっと妻を思い出していた夫はうまい計略を思いついた。彼はネギと桂の木を引き抜き二つの大籠に入れて担ぎでかけた。そして王城の門に着くと、大声をあげた。
 「二尺のネギ、一尺半の桂の木はいらんかねえ!」
 いったりきたりしながら言い続け、その声は日増しに大きくなった。
 一方、彼の妻はというと、捕らえられ都にきてから自然としゃべれなくなってしまった。王は名医を何人も招き治療させたが、為す術はなかった。王はさまざまな遊技や見せ物をさせてみたものの、何の効果もなかった。王はついに次のように宣布した。
「病を治すことができた者誰にでも、褒美をとらす。」
と。 しかし誰もが手をこまねいた。
 ふと、奇妙な行商の声が宮中に聞こえてきた。彼女はその声に注意深く耳を傾けた。そして嬉しくなった彼女はそばの下女に買い物をするから行商をここに連れてくるよう告げた。彼女が言い終えないうちに、王は彼をすでに連れてこさせていた。王は人払いをすると行商のぼろぼろの衣服と品物を奪って自分の身に付けた。王は自分で彼女の気を晴らしてやり、そして夫婦になることを認めさせたかったのだった。
 服を脱がされた行商は、そのかわり仁王の錦の衣服と靴、帽子を身に着けると、彼に化けた好色な王が自分の妻の御機嫌取りをする前にすぐに軍にとらえさせ、直ちに火をつけ燃やしてしまうように命じた。
 階下で火が燃えているのを見て、妻は王が自分の夫を生きながら焼き殺すよう命じたんだと思い、火棚の上で夫とともに死のうと階上から飛び降りた。王の後を追って死のうとしている妻を見て、夫は妻がすでに不義をはたらいたのだと考え、絶望して火に飛び込み自殺をした。
 火がおさまると、朝廷の官吏たちは王と皇后の寺院を建てようと話しあったが、どれが王の頭がい骨かわからなかった。それでいたしかたなく二人のための寺院を建設することにし、そして民に次のようなおふれを出した。
「これより五徳を使用するときは必ず三つの石を組み合わせて使わなければならない。一緒に焼け死んだ三人の頭のように。」
これよりまた次のような歌が歌われる。
 「竃の神は正直であるというが、竈神は一人が女で二人が男であるということを知っているか?」
 そして今日に至るまで、何代にもわたり老人たちは子孫に次のように話して聞かせる。犬が人の足音を聞くと吼えるのは地を揺らし、その心臓にまで響くからであると。
PHAM XUAN THONG, THIEN SANH CANH, NONG QUOC THANG, LUC NGU編 1978,"Truyen co CHAM"
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