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月の若者



 昔々、西原高原の山森に、火龍の地域に農民の年老いてもまだ子のない夫婦がいた。
 ある晩、夫が願い事に行って帰って来た後に、妻は夢で白うさぎが自分の胸の上を行ったり来たりするのを見た。朝起き、竹筒を持って階段を下りると、胸が重くなり、息使いは荒くなり、身体は力が入らなかった。
 九ヶ月と十日経ち臨月を迎えた。妻は一人の男の子を産んだ。子供は類いまれに見る美しい子だった。眼は星よりも輝き、背中には真紅の盾の形のアザがあり、白熊の毛よりも白い肌をしていた。母はとても喜んだが、村の老人たちは不安げにうろうろした。『あの子はきっと神霊の子さ。神霊じゃなければあんな白くないさ。』七日後、妻は酋長に知られ罰せられるのを恐れ、すぐに子を抱き、天に養ってもらおうと野原に置き去りにした。子はただ母を見て笑うだけで泣かなかった。七日後、母はまた自分の子を見に行ったが、まだ元気だった。そこですぐに子を抱きかかえ水神に養ってもらおうと滝の流れのところに置いた。しかし子は沈まず、水面に浮いて一枚の葉のように漂った。
 プーットシア村の入り口まで流れて来たとき、慈悲深い寡婦のポムに拾われ養われた。その子は瞬く間に成長し、四、五歳にしてもう背は石より大きく、手足は鉄のように頑強であった。一日中、その子はいつも盾と刀で遊ぶのが好きだった。
 ある日、ポムは焼き畑に行き、その子も彼女の刀を持って山に登った。一番高い山の頂にある白い石に着くと、彼は立ち止まって、ある凶暴な王の占拠している地域を見渡した。
 この王は遠い見知らぬ地からやって来て、あらゆる人の土地を奪い、全ての村々を臣下にしていた。しばし見つめた後、彼は天を仰いで叫んだ。
 「おおい!天神よ! あの凶悪な王を私たちのために殺してくれ!」
 突然、その足元の石がうごいたかと思うと、高さ九尺の一頭の馬に変身した。そして彼の目の前で首を下げている様子はまるで命令を待っているようだった。天の真上から、絹のように金色の髪の女性が、手を振り彼に告げた。
  「さあ、湖を見てごらん。何か不思議なものが見えたらそれを持ってなさい。それからそばの馬にまたがり、行きなさい。」
 彼が湖を見ると、真っ黒なものが見えた。沸き上がる水面を漂うそれは、一本のイチジクの花のように丸く膨らんでいた。彼は急いで降りてそこまで泳いでいき、花をくわえて取り上げると、それは剣になった。
 宝剣を手に入れた彼は、すぐにあの凶悪な王の城に馬を走らせた。警備兵は見知らぬ者がやって来るのを見て城の門を閉ざした。兵は槍を構え、突こうとした。彼は「戸を開けろ!」と叫びながら剣を振り回した。
 突然、数万の灼熱の光が放たれた。兵は倒れ、城壁は崩れた。城の中では鉦が叩かれ、火が焚かれ急を告げた。一方、彼は剣を振り回し、敵の首をはねた。その首はまるでイチジクのように転げ落ちた。瞬く間に、朝廷全体が静けさを取り戻した。ただ残っているのは側室達と数名の兵だけだった。彼は兵たちに命じた。象に座席を取り付けるようにと。それは側室達を家に帰らせるためだった。敵はいなくなり、村々はまた以前のように喜びであふれた。彼は馬にまたがり山に戻ると、馬はまた白い石に戻り、剣もまた湖に帰っていった。そして彼も金髪の仙女に連れられ天に向かった。
 老人たちは彼が月の子で、凶悪なやつらを退治するために下界に降りてきたのだと告げた。
 今、毎晩、ポンゴニの滝で、月が金銀にきらめき、それはまるで金色の皿のように水面に影を落とす。村人たちはさざ波を見て次のように歌う。
 『ああ、美しい月よ。まるであのまばゆいばかりにきらめく剣のようだ。それは一人の人間の形をしているようだ。それこそかつて我々を助けてくれた勇士である。アナコドンの木1) の根元で勇士は母と一緒に立っている。勇士は我々を見て笑っている。勇士はこの滝で遊び、我々と遊んでいるのだ。太陽の若者が畑に米を蒔きに来てから眠りにつくのである』

1) 大きな広葉樹の一種。

ムノン族 ヴェトナム昔話1A 1983 社会科学出版社 

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