猫の事務所

 軽便鉄道の停車場のちかくに、猫の第六事務所がありました。ここは主に、猫の歴史と地理をしらべるところでした。
 書記はみな、短い黒の繻子(しゆす)の服を着て、それに大へんみんなに尊敬されましたから、何かの都合で書記をやめるものがあると、そこらの若い猫は、どれもどれも、みんなそのあとへ入りたがつてばたばたしました。
 けれども、この事務所の書記の数はいつもただ四人ときまつてゐましたから、その沢山の中で一番字がうまく詩の読めるものが、一人やつとえらばれるだけでした。
 事務長は大きな黒猫で、少しもうろく[#「もうろく」に傍点]してはゐましたが、眼などは中に銅線が幾重も張つてあるかのやうに、じつに立派にできてゐました。
 さてその部下の
  一番書記は白猫でした、
  二番書記は虎猫(とらねこ)でした、
  三番書記は三毛猫でした、
  四番書記は竃猫(かまねこ)でした。

                                               
                        読みの底本;青空文庫ファイルより                            (青空文庫の作成記録) 底本:「宮沢賢治全集8」ちくま文庫、筑摩書房     1986(昭和61)年1月28日第1刷発行     1996(平成8)年5月15日第14刷発行 底本の親本:「新修宮沢賢治全集」筑摩書房 入力:細川みづ穂 校正:瀬戸さえ子 ファイル作成:野口英司 1999年3月8日公開 1999年7月23日修正                                                       朗読 ;籾山久雄 2001.7.28

猫の事務所

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