三四郎 7


夏目漱石

あくる日は予想のごとく好天気である。今年は例年より気候がずっとゆるんでいる。ことさらきょうは暖かい。三四郎は朝のうち湯に行った。閑人ひまじんの少ない世の中だから、午前はすこぶるすいている。三四郎は板の間にかけてある三越みつこし呉服店の看板を見た。きれいな女がかいてある。その女の顔がどこか美禰子に似ている。よく見ると目つきが違っている。歯並がわからない。美禰子の顔でもっとも三四郎を驚かしたものは目つきと歯並である。与次郎の説によると、あの女はの気味だから、ああしじゅう歯が出るんだそうだが、三四郎にはけっしてそうは思えない。……


底本:「三四郎」角川文庫クラシックス、角川書店
   1951(昭和26)年10月20日初版発行
   1997(平成9)年6月10日127刷
入力:古村充
校正:かとうかおり
2000年7月1日公開
2004年2月28日修正
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朗読 籾山久雄


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三四郎7

付録 三四郎のモデル達

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