「なんでこんなことに・・・」


呆然とした表情でそう呟いた少年、碇シンジの目の前には赤い海が広がっていた。



いや目の前だけではない、見渡す限りの赤い海。

押し寄せる波も無く、ただ静寂だけが広がる赤い海。



不自然と言えば余りにも不自然な赤い海も、静寂と合わさり神秘的な雰囲気を醸し出している。



だが、その神秘的な光景はシンジに対しては絶望しか与え居ていなかった。




「これが僕の望んだ世界だって言うのか・・・」


それまで立ち竦んでいたシンジがゆっくりと前に進み始める。



しかしその歩き方は何かを目指している歩き方ではない。


シンジの目はいまだ虚ろなままであり、はっきりとした意志をもっていない。


ただ歩いているだけ。


ただ脚を動かしているだけ。





「みんないなくなってしまった・・・」




バシャバシャ!


シンジの歩き方が勢いを持ち始める。



「アスカは僕が殺した・・・」



バシャバシャ!


静かな、目的もない歩き方から自分の感情の全てを叩き付ける歩き方へ。




「綾波は人間じゃなかった・・・」



バシャバシャ!


湧き上がる激情のぶつけ場所として赤い海が選ばれているのだ。




「父さんは最後まで勝手だった・・・」



バシャッバシャッ!




「ミサトさんも、リツコさんも、トウジも、ケンスケも・・・」




バシャッバシャッバシャッ!!




「みんな!みんな!」



バシャッバシャッ!!




バシャッバシャッ!!








「僕を置いて行ってしまった!!!!!」






バシャーーンッ!!!!




激情を押さえきれなくなったシンジが赤い海へと仰向けに倒れこむ。
















地上の状態とは関係なく、空は青かった。

まるで何事もなかったかのように。


しかし、もはやそこにはかつて大空を自由に舞っていた鳥達の存在は無かった。




地球上の全ての生命は赤い海へと溶け込んでいる。



たった一人、碇シンジを除いては・・・








それでも長い間シンジは空を見続けた。


まるで赤という色から逃れるために・・・







空の青い色と時の流れがシンジの激情を収める。




「そうだよ、誰も僕を必要としなかったんだ・・・」



シンジは空を見上げながらそう呟いた。




「僕は最初からいらない子だったんだ・・・」





シンジの感情が激情から自虐へと向けられる。





「僕はエヴァに乗るただのコマだったんだ・・・」




感情が外から内へと・・・






「それを僕は必要とされているなんて勘違いしちゃったんだ・・・」




シンジの口調には明らかに自虐的なものが込められている。





「バカだよな、僕は」




自己の否定。


自分の価値を認められないこと。



それはとても悲しいこと。


とても辛い事。





しかし、それがどんなに悲しく、辛いことなのかシンジに教える者はいなかった。


ただの一人も・・・







「だからみんな僕をおいてどこかへいっちゃったんだ・・・」





自嘲に満ちたシンジの顔かた涙が零れ落ちる。






「僕一人を残して・・・みんな、みんな居なくなったんだ・・・」



それだけ呟くとシンジはただ涙を流しながらじっと横たわっていた。


まるで気力を全て喪失したかのように・・・






























長い・・・

















長い時が過ぎる・・・
















シンジが動きを止めた事で世界は再び静寂に満ちる・・・
















なにも変化を見せない世界・・・


















そん中でシンジは一つのことに思い当った・・・

















「・・・僕を一人残して・・・いなくなった?」



全ての気力を失ったと思われたシンジが跳び起きる。








「待てよ。僕一人が残ってみんながいなくなったということは・・・」



シンジはそう呟くと腕を組んで考え込み始めた。
























































「・・・もしかして世界は僕だけを必要としているの?」



シンジの顔に明るさが戻る。























「そうか!必要のない、いらない子だったのは・・・」


シンジは立ち上がると空を見上げる。


さっきまでの絶望感は既になく、表情は希望に満ちている。








そして拳を握りしめて、有らん限りの大声を上げる。



















「僕以外の人間だったんだね!!!」






チャッチャチャラリラ〜♪




シンジは能天気を覚えた。


シンジは自分勝手を覚えた。


シンジは勘違いのLVが上がった。


シンジは悲観的を忘れた。



シンジは「内向的な少年」から「お気楽少年」へとクラスチェンジした☆









「な〜んだ、僕は必要とされているんだ☆」



シンジはスキップをしそうなぐらい嬉しそうに身体を動かしている。






「いらないのはみんなのほうだったんだね♪」



やれやれと言わんばかりだ。









「そうだよな〜、あんな髭眼鏡が必要とされるわけないもんな」



今までのシンジでは考えられないような言葉だ。








「家事が出来ない三十路女とか、わがままばっかで何もしない自己中女・・・」



なんだかとても強気だ。







「マッドとか、ジャージとか、軍事オタクとか・・・」



最後のセリフ、このページでは危険である。







「なんだ。どう考えても僕が一番まともじゃないか♪」



「お気楽少年」にクラスチェンジしたシンジの思考は無敵であった。








「そうと分かったらなんか希望が出てきたな☆」



希望に満ち溢れているシンジは溢れんばかりの笑顔でそう言った。








「よ〜し!!この世界で頑張って生きるぞ〜〜!!!!」



「お気楽少年」シンジは誰に向けるでもなく、大声で宣言した。













<次回予告>

お気楽になったシンジは前向きに生きる決意をする。


しかし、世界は甘くなかった。


襲い掛かる衝撃の事実。


そしてシンジは人間の闇を知る。


お気楽シンジはそれに耐え切れるのか!



次回「シンジ君+αの戦い」


「シンジ君の新生活!」



次回もサービスサービス♪






(注)次回予告は外れる事もあります(笑)










 


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