ズズズズズ・・・



静けさに包まれたとある和室。



姿勢正しく正座をした着物姿シンジが、静かに御椀を口に運ぶ。



そして、じっくりと味わうように2度、3度と口の中を巡らせる。




ちゃぶ台を挟んだ向かい側では、イロウルが真剣な面持ちでシンジの一挙一動に注目している。




ゴクッ



充分に味われた味噌汁がシンジの喉を通過する。



シンジは静かに御椀をちゃぶ台へ置くと、手を膝の上へと戻し、しっかりとイロウルを見つめる。




カッコン・・・



サワサワサワ・・・


チュチュチュチュ・・・



庭のや、風音、何処からとも無く聞こえる鳥の鳴き声が2人の間の静寂さを際立たせる。



たっぷりと間を置いたシンジがおもむろに口を開いた。




「こんなものが飲めるか〜!!」


怒鳴り声と共に、シンジは目の前のちゃぶ台を力いっぱいひっくり返す。



ちゃぶ台の上に置かれていた御椀も当然遠くへと飛ばされ、いまだ残っていた中身を畳へと染み込ませる。



「また・・・また駄目なんですか・・・」


シンジの言葉を聞いたイロウルは俯くと、袖で涙をそっと拭う。



「泣くなイロウル!」



その場に仁王立ちとなったシンジがイロウルに向かってさらに厳しい言葉を投げ掛ける。



「お前の歩む道は確かに険しい!」


バーン!



「だがお前なら、イロウルなら出来ると僕は信じている!!」



ババーン!!




「そのためには僕は鬼にもなろう!!!」





ザッパーン!





その瞬間、シンジの背後には絶壁に打ち付ける日本海の荒波が見えた。



シンジは泣いていた。


いや、男泣きをしていた!



「シンジさん!」


そんなシンジを見て、イロウルは思わずシンジに抱きつく。



「イロウル!」


シンジもそれをしっかりと受け止めると、2人は固く抱き合ったのだった。







愉快なシンジ君+αの戦い




 第5話 「イロウルの日記」







シンジとイロウルの出会いから、そしてシンジの意外な嗜好の発覚から既に半年が過ぎていた。



世界はいまだ赤い海に包まれ、極一部を除き静けさを保ち続けていた。



地球での異変に関わり無く天にあり続ける月によって引き起こされる潮の満ち引き。



微生物に至るまで、全ての生物を失った事によって枯れている木々を揺らす風の音。



人々の喧騒に紛れて今まで感じる事の出来なかった自然が、今の世界でははっきりと感じる事が出来る。




「あ〜あ、またちゃぶ台が壊れちゃったよ」


が、この男にはそんなものは何の意味も持ってはいなかった。


一連の芝居、というよりもお約束の行動を終えたシンジは実に満足気であった。




「だから何度も言ってるじゃないですか。シンジさんはやり過ぎなんですよ」


飛び散った御椀などを片付け、汚れてしまった畳の染み抜きに取り掛かっていたイロウルが苦言を呈する。


どうやら同様の出来事が何度も行なわれているらしく、その掃除姿はすっかりと板に付いている。




「でも軽くやったんじゃイメージに合わないよ」


「それはそうですけど・・・」


そこで肯定の意志を示している辺り、この半年イロウルも随分シンジに影響されているようだ。






<イロウルの日記>  ○月○日  


世界に異変が起こってから1週間。


今日久し振りに人間を見ました。


MAGIを介して私もよく知っている人物、碇シンジさん。


彼なら何か知っていると思い、MAGIから出て接触を図りました。


・・・なのにどうしてこんなことになってしまったのでしょうか?


「大和撫子への道  著 碇シンジ」を読んでいると、そんなことを思ってしまいます。





<シンジの日記>  ○月○日


凄い!凄いや!!



今日は大和撫子を見つけちゃった!



なんか使徒とか言ってたけど、そんなの関係ないよね。


今まで僕の周りにいた女の人はみんな普通じゃなかったし、綾波なんて人間じゃなかったんだもんね。


今更使徒ってことぐらい気にしないよ。



イロウルは姿を自由に変えられるらしいから、外見は完璧だよね。


後は僕が長年考えに考え抜いて完成させた「大和撫子への道 全108章」を基に色々身に付けさせるだけだよ。



僕は今燃えている!


明日から頑張るぞ〜!





<イロウルの日記>○月×日



今日は1日中ビデオを見ていました。


「大和撫子への道 第一章 〜大和撫子を知ろう〜」の一環だそうです。



私にはMAGIの情報しかないので、こういった物で人間のことを知れるのは少し嬉しいです。


ただ・・・少しジャンルが偏っているような気もしますが・・・





<シンジの日記> ○月×日


とりあえずイロウルには色んなビデオを見せる事にした。


大和撫子のことを知らなきゃ何も始まらないもんね。



ほんと、近所にレンタルビデオ屋があって助かったよ。



ついでに僕も一杯借りてきちゃった。


え?何を借りたかって?



それはもちろん秘密だよ。





<イロウルの日記>○月△日


・・・ビデオを同じような内容ばかりで、少し飽きてしまいました。


そんな中、時代劇だけは同じような内容でも何故か安心して見ていられます。



ところで、かつて「やまとなでしこ」という名前のドラマがあったことを知ったのですが、「これは違う」と言ってシンジさん
は見せてくれません。



「大和撫子」にも色々あるみたいです。





<シンジの日記> ○月△日



イロウルが「やまとなでしこ」というドラマについて聞いてきた。


一体何処で知ったのか知らないけど、あれを見られちゃ変なイメージを与えちゃうよ。


これからはしっかりと見張っておかないと。



あ、でも僕もビデオを見てるから、ちょっと大変だな。


さすがに、イロウルの近くでこのビデオは見られないよね。



え?何のビデオかだって?



だからそれは秘密だよ。





<イロウルの日記>×月○日


今日は驚くべき発見をしました。


なんと私より以前に人間の世界に使徒がいたんです。


「水戸黄門」という時代劇に出て来た陽炎お銀さん、なんと彼女は全然歳を取っていないんです。


人間は歳を取る物ですから、彼女は間違いなく使徒だと思います。


会って色々お話をお聞きしたいのですが・・・やはりセカンドインパクトで亡くなってしまったのでしょうか?





<シンジの日記> ×月○日



今日はイロウルが変な質問をされて驚いちゃったよ。


陽炎お銀は使徒か?なんて聞いてくるんだもん。



思わず頷いちゃったよ。



そう言えば、サキエルは第3使徒って呼ばれてたし、セカンドインパクトの原因も使徒だっていうし・・・


ひょっとして彼女が第一使徒?





<イロウルの日記>×月×日



一通りビデオを見終わった後、シンジさんから「第二章 〜大和撫子の恋愛〜」だと言って漫画を頂きました。



ようやく第二章です。


全108章への道のりは私の想像以上に長そうです。


ところで、この108という数は偶然なのでしょうか?


それとも・・・





<シンジの日記> ×月×日



今日から第二章に進むことにした。


今のうちに第一章と第二章の卒業試験問題を作っておかなきゃいけないよね。


頑張るぞ!



それにしても今の生活は充実してるな〜。


昔とは大違いだよ。





<イロウルの日記>×月△日



ああ・・・素敵です・・・


私も「大和撫子」になればこんな素敵な恋愛が出来るのでしょうか。


とても憧れます。





<シンジの日記> ×月△日



どうやらイロウルは漫画に書かれている恋愛に憧れ始めたみたいだ。



うんうん、だんだん大和撫子へ近付いているよね。


僕も鍛え甲斐があるってもんだよ☆





<イロウルの日記>△月○日



今日は第一章、第二章の卒業試験がありました・・・


とても疲れたので今日はもう寝ます。





<シンジの日記> △月○日



今日は初めて試験を行なってみた。


ついつい力が入り過ぎて全部で291問も作ったから、イロウルもさすがに疲れたみたいだね。


さて、僕はこれから採点をしなくっちゃ。



・・・ところでイロウルってS2機関を持っているのに疲れるんだね。











?「・・・わからない」


?「う〜ん、これは難しいね〜。さすがはシンジ君だよ」


一方その頃、謎の空間では謎の2人が一枚の紙を前に考え込んでいた。


どうやら力を使い続ける無駄さに気付き、力を蓄える事を選んだようだ。



力が溜まるまでの暇潰しとして2人が見ているのは、一体どうやって手に入れたのかわからないが、イロウルもやった
試験問題。



?「・・・これが解ければ碇君が喜ぶ・・・」


?「ふっ、この問題を解いてシンジ君の心をゲットさ」



と、思いきや暇潰しなどではなく、謎の2人は真剣そのものであった。


シンジも知らないところで大和撫子がさらに2人・・・もとい1人・・・



?「無粋だね。僕とシンジ君の愛には性別なんて関係ないのさ。シンジ君が望むなら僕は何にでもなって見せるよ」


・・・2人増えるのかもしれない。



?「あなたはならなくていいわ」


?「それはこっちのセリフさ。シンジ君には僕だけでいいのさ」


?「あなた邪魔」


?「奇遇だね。僕も前々からきみのことを邪魔だと思っていたのさ」



キラリ!


チュドーン!



問題が解けない苛々が募ったのか、二人は再び戦いを始めた。




2人が謎の空間から出る事が出来る日はまだまだ遠そうであった。










<次回予告>


着々と進むイロウル改造計画。


シンジの趣味は留まる所を知らない。


いい加減出て来い謎の二人組み!!



イロウルはこのままシンジに改造されてしまうのか?






次回!


「第六話 ○○○」




エヴァの世界に浪漫の嵐!








御免、次回どうなるか私にもわからないから予告無理(爆)













※やまとなでしこに関するテスト(一部抜粋)  作 碇シンジ




問1.「やまとなでしこ」を漢字で書きなさい




問47.次の選択肢の内、「やまとなでしこ」が嗜むに相応しいものを選びなさい。


(1)弓道


(2)合気道


(3)薙刀


(4)柔術




問92.次の選択肢の内、「やまとなでしこ」に相応しくないものを選びなさい。


(1)厳格な父


(2)優しい母


(3)優しい兄


(4)タカビーなライバル




問290.「やまとなでしこ」の素晴らしさを語りなさい。









〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜


う〜む・・・この作品は一体何なんだろう・・・


確かリクエストは「逆行物」だったよな・・・


そもそも、あのテストは一体・・・



・・・まあいいか。



それじゃあまあ、次回お会いしましょう〜。




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